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2017/11/01

トゥルゲニエフ作 上田敏譯 「散文詩」(抄) 戰はむ哉

 

       戰はむ哉

 

 いともいともはかなき事の、時としては心機を轉ずるものかな。

 悲觀にくれて、ひと日、大路を辿(たど)る。

 憂愁の思に胸苦し。 心、沈欝に亂れぬ。 ふと仰げば………高楊二列のひま、途は、矢の如く遠きに馳す。そをこえて、その途こえて、十步のあなた、眩ゆき盛夏の金光裡、ひとむれ雀、つれだちて、躍りゆく、勢猛に、をかしげに、心だのみ強く。

 殊に其群の一羽、必死の勢に橫走りし、胸つきいでゝ誇りかに囀るさま、恐ろしもの無しといふやうなり。 げに勇しき小戰士かな。

 時に、見よ、みそら高く鶻(はやぶさ)かけりて、おとし來らむず姿なるを。

 これを觀じて、われほゝゑむ。 躰をふるひて、憂愁消えたり。勇氣、豪毅、人生の愛、とみに、われ再び覺ゆ。

 かれもわが上に飛べや、わが鶻(はやぶさ)。

 われら戰はむ哉。 かれなにものぞ。

 

[やぶちゃん注:「哉」は「かな」と訓じておく。

「金光裡」「こんくわうり」と読んでおく。黄昏の夕日の光りの中。

「ひとむれ雀」「むれ雀」で「群雀」のソリッドとして採る。

「勢猛に」「いきほひ(いきおい)、まう(もう)に」と訓じておく。

「鶻(はやぶさ)」鳥綱ハヤブサ目ハヤブサ科ハヤブサ亜科ハヤブサ属ハヤブサ Falco peregrinus。但し、原詩は“ястреб”で、これはタカ目タカ科 Accipitridae の鷹類或いはハイタカ属 Accipiter のハイタカ類を指すので、隼、ハヤブサはおかしい。元にしたガーネット夫人の英訳が誤っているのかも知れない。

 

 なお、ここまでが上田敏の単行本訳詩集「みをつくし」に載るものであるが、この詩の最終行に下インデントで、

   *

(トルゲニエフ)

   *

とあって、次の行から、二字下げポイント落ちで、

   *

露西亞の作家、數はあれど、妙趣最も饒かなるはトルゲニエフ Ivan Turgenev を秀でたりとす。「散文詩」は千八百八十二年の著にして、思想の奇拔なるを以て名あり。「遊獵日記」「大野のリア王」「親子」等の傑作、今に十九世紀の珍品と稱せられて、作家の模範たり。

   *

と記してある。]

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