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2017/12/09

ジョナサン・スイフト原作 原民喜譯 「ガリヴァー旅行記」(やぶちゃん自筆原稿復元版) フウイヌム たのしい家 (3) / たのしい家~了

 

 私は、主人の家から六ヤードばかり離れたところに、自分の室を一つ作らせてもらいました。

[やぶちゃん注:「六ヤード」五メートル半弱。]

 壁は自分で粘土を塗り、床には〔自〕分で工夫して〔つくつた〕莚を敷きました。この邊には麻が多いので、それを打つて、蒲團のおほひを作り、中には〔そのなかに〕鳥の羽毛をつめました。骨の折れる仕事は仔馬に手傳つてもらひ、小刀で椅子を二つこしらへました。

 服が擦り切れると、これは兎の皮で代りをつくりました。この皮からは、立派な靴下もできました。私はよく木のうろから蜜をとつて來て、水に混ぜて飮んだり、パンにつけて食べました。

[やぶちゃん注:以下の一行空けは現行版にはない。]

 

 私は〔、〕主人のところへ訪ねて來る〔、〕フウイヌムのお客たちとも〔、〕知りあひになりました。主人の部屋に〔、〕私の方から〔、〕〔彼等の話をききに〕出かけて行くこともあり〔、〕時には〔、〕主人やお客が〔、〕私の部屋に訪ねてくることもあります。それから、また時には〔、〕主人のお供をして、お客の家に訪ねて行くこともありました。

 私は訪ねられる〔質問に答へ〕るほかは、こちらから口を出して喋つたりするやうなことはしません〔なかつ〕たのです。ただ、そばで彼等の話を聞いてゐれば、それだけで〔私は〕氣持よかつたのです。彼等の話はちよつとも無駄なところがなく、簡單で、はつきりしていました。〔ちやんと禮儀は守られてゐて、〕堅苦しいところ〔が〕ないのです。喋ることは、話す方も樂しければ、聞く方も氣持よくなるやうなことばかり〔なの〕です。邪魔も入らねば、退屈もなく、のぼせたり、爭つたりするやうなこともないのです。

 彼等はたいてい、友情とか、慈善〔とか〕、秩序だとか〔とか〕、秩序〔とか〕經濟だとかいふ〔などの〕ことを話しあひました→す。〕それから〔、〕詩の話もよく出ます。私は〔かりに〕ヨーロツパで一番えい人たちの集りに出るより、ここで、フウイヌムの話をきいてゐる方が、ずつと誇らしく思へました。

 私はこの國の住民たちの力と美と速さを感心しました。そして、このやうな穩やかな〔立派な〕人格に、深い尊敬すつかり尊敬するさゆになりました。〔〔私は〕だんだん尊敬するやうになりました。〔なつたのです。〕〕

 〔そして〕私は、自分の家族や友人、同胞、人■〔などを〕考へてみると、〔とてもひどく〕ヤーフ恥かしくなりました。ヤーフと私たちが違うのは、ただ〔人間の方は〕言葉が話せるといふことだけで、理性はかへつて惡いことに〔〕使はれてゐます。よく〔、〕泉や湖に映る自分の姿を見たときなど、思はず〔私は〕顏をそむけたくなりました。

[やぶちゃん注:この恐らくは「ヤーフと私たちが違うのは、……」以下、最後までは上罫外に大きな丸括弧が被せられてあってその上にはっきりと「略」と書かれてある。しかし、幸いなことに現行版でここはしっかりと以下のように生きている。

   *

 そして私は、自分の家族や友人、同胞などを考えてみると、とてもひどく恥かしくなりました。ヤーフと私たちが違うのは、たゞ人間の方は言葉が話せるということだけで、理性はかえって悪いことに使われています。よく、泉や湖にうつる自分の姿を見たときなど、私は思わず顔をそむけたくなりました。

   *

但し、現行版はこれで「三、楽しい家庭」は終了している。ところが、原稿には実は、以下の通り、半原稿分二段落がある。この原稿分は全体に大きな「×」が振られて、抹消指示と見えるのであるが、実は上罫欄外には「どうでもいい」と書かれてあるのである。私はこの際、この「どうでもいい」を削除とせずに、残そうと思う。されば、全体に「×」が附されてあるが、特異的に以下は抹消線を引かずに示すこととする。

 私はフウイヌムと話をして、その姿を見るのが一番たのしかつたのです。とうとう私は彼等の步き方や身振りを眞似るやうになり、今ではすつかりそれが癖になりました。だからよく人達から、

 「何だその步き方は、ますで馬ぢやないか」と云はれるますが、却つて私にはそれがうれしいのです。よく人と話をしてゐるとき、私は急にフウイヌムのやうに、いななくこともあります。

 

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