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2018/01/30

芥川龍之介 手帳10 《10-6~10-17》及び旧全集一条 / 手帳10~了

《10-6》

O彼は彼女を戀してゐる 彼女も彼を戀してゐることを信じてゐる 少くとも彼を信用してゐることを信じてゐる for 彼は遊蕩しない 每日家へかへる 酒やビイルをとる時も一々帳場に斷る etc.

[やぶちゃん注:「帳場」とあるからにはロケーションは旅館か。]

 

Oプラクテイカルな男の戀愛觀 女は何を話してもやりこめられる程利巧だと云ふ

○その女は生活費の來る道わからず 下宿屋から一週間に一度電話をかける 「わたしだわ」と言ふ しかも僞名を用ふ 相手は茨城縣選出の代議士の弟の銀行重役 女は山口縣 兩方より戸籍謄本をとる 男のは郡がちがふと言ふ 女のは何々太郎兵衞の娘にはあれども何々太郎と言ふものなしと云ふ

○女男に金を借せと言ふ 又來りて蒲團をつくる故かせと言ふ(30) 盛裝して出行きかへらず 前例なし 翌日車屋手紙持ち來り 金を落せし故持つて來てくれと云ふ 上野の宿屋なり 行く きたなき宿にあり きけば

《10-7》

伯父の所へ行きしも伯父居らず 下宿料も拂へぬ故(勘定日)かへらなかつた。私立探偵を使ひてしらべるに一人で來たりしに相違なし 始大きい宿屋へ行きしもやすい宿屋斷られ そこより小宿屋へ送らる 女の母は向ひ合ひの下宿にあり 高商を數年前出でし男 その男の生活を保證す 女その男をきらひ別に下宿す 下宿は本郷 母女の lover に娘のことばかりきくなと云ふ あの娘は本統[やぶちゃん注:ママ。]の子にあらず 大阪の砲兵工廠に出てゐる人が或女と出來しものを夫のやしなひしなりと言ふ 又自分の情夫――高商の男と逃げし事ありと言ふ 娘になじる 娘泣いてお母さんとの關係を知らなかつたと云ふ 又 愛せぬ男と關係せぬ故後悔なしと言ふ 女の下宿に大學生來り 枕もとに立つ 女何用と云ふ 大學生用ありと言ふ 女用ならば晝來いと云ふ 大學生出て行く 女よびとめ 一しよに出て行つて上げると

《10-8》

云ふ 出て行き便所に行き またかへる 枕の上に置手紙あり 女又獨り大學生の部屋へ行き手紙をおく どちらも「只今は失禮 人に言ふな」

[やぶちゃん注:底本では見開き見出しを出さず、《10-6》から《10-8》までの総てを続けて示した上で、最後に注記で見開き位置を示すという変則表記をしているが、注記内容に従って以上のように表記した。「30」は横転ではなく、横書で正立。]

 

《10-9》

○學校にて忘れものせし人を立たせ スケツチの model とす 「オ前ナド忘レモノバカリシテ皆ガマタアノモデルカ アキタト云フダラウ」

《10-10》

○黃色く cold 光る 小ぢんまり 一人ゐ「獨房」と稱す 獨房にかざるもの欲し 壁に釘をうつ事をゆるさず 布もかけたけれどもゆるされず 畫をかかんとすき かけんとすれどもゆるさず

○壁をぬりかへた爲に結婚を申しこむ話をつける

○父の頭惡し(購買狂)

○悴(弟) 愛嬌ガアル 小學校出る 頭惡し 慶應夜學 活動好き 「ヱヲ畫イテクレ」 「スゴイナア」震災記念 喪章の代りにボエミアンネクタイを買ふ 父は日本畫にさせんとす 子は油畫 兄サンの方は墨畫ダネ

○姉 母の代理に働ク 非常に黑く ポツチヤリ 顏に光澤あり 妙に色白し 束髮を自分でゆふにも不關髮結よりもうまし 碧童に相談に來る 「兄サン」碧曰犧牲ニナレ シカシ思ヒコンダモノガアレバ云へ ソハセル

[やぶちゃん注:これは次の《10-11》に続いている。底本では続けて表記し、注でそれを示してある。

「不關」拘わらず。

「碧童」小澤碧童。後の『「兄サン」碧』は芥川龍之介が最年長(十一年上)の友であった彼を敬して呼ぶ際の「入谷の兄貴」の「兄サン」の謂いととっておく。]

 

《10-11》

 最近碧のところへ來る 碧の見によれば選擇をあやまたず 男はまた別にかけこむ

[やぶちゃん注:《10-10》からの続き。]

 

○母 眼片目スガメ 娘による事多し 一家に娘派 弟派あり 店員に百圓位拂ふもの二三人あり 不折の書をかける

[やぶちゃん注:「不折」中村不折(慶応二(一八六六)年~昭和一八(一九四三)年)は洋画家で書家。太平洋美術学校校長で、裸体画や歴史画を得意とした。書家及び書の収集家としても著名で、六朝風を得意とし、書道博物館(現在の台東区立書道博物館)の創設者でもある。また、島崎藤村「若菜集」、夏目漱石の「吾輩は猫である」、伊藤左千夫の「野菊の墓」の挿絵なども描いている。]

 

○叔父醉ひてかへる 途中女の影二あり 見れば歸りを危み 女中の見送りしなり 金をやる かへりてねこむ 家へはひるなり 金をこぼし 拾ひて寐しと言はる

○ハワイ 兄の後妻の身 來年3月女學校 日本 兄の子(父ナシ) 高等二年迄 驛夫(テンテツ夫) 日當一圓四十四踐

[やぶちゃん注:「テンテツ夫」「転轍夫」。転轍機(鉄道のレールの切り替え装置。ポイント)を操作する係。]

 

○村ノモノ等貰へト云フ 手紙を二三度出す 返事なし 岩國へ出る自動車運轉手 妻を世話せんとす それは女學校を出 女教員になる資格あり 貰はんとす 叔父に問ふ 叔父曰ハワイをたしかめよ 一切

[やぶちゃん注:以下、《10-12》に続く。底本では続けて表記し、注でそれを示してある。これは前条と繋がったメモであろう。]

 

《10-12》

をつげ 來るなら來よと云へ 甥曰來ると云つたらどうするか? 叔父曰東京を步いてゐて熊や狼が出たらどうするか 甥25

[やぶちゃん注:《10-11》からの続き。「25」は縦書正立。]

 

○將軍 賴朝 尊氏 家康

《10-13》

○父と女子と母と

 女子)

○  )→父 Strindbergian tragedy

 母 )

○父→子

[やぶちゃん注:三つの「)」は底本では大きな丸括弧一つ。旧全集では二番目の「○」のような式構造は示されておらず、「女子」「母」「→」も丸括弧もなく、ただ、『父と女子と母と。Strindbergian tragedy.』とあるだけで、後の「○父→子」も旧全集には存在しない

Strindbergian tragedy」「作家ストリンドベリ風の悲劇」。ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(Johan August Strindberg 一八四九年~一九一二年)は言わずと知れた「令嬢ジュリー」(Fröken Julie 一八八八年)などで知られるスウェーデンの劇作家・小説家。]

 

○決死隊(天津の) 強弱の差アラハレ 強者弱者を輕蔑す 戰後強者弱者和す

[やぶちゃん注:既注の清朝末期の一八九九年から一九〇〇年に起こった義和団の乱(北清事変)の際の、最初の連合軍の正念場であった大沽砲台・天津攻略戦での日本軍のエピソードであろう。この時、日本を含む八ヶ国連合軍は、租界を攻撃していた清朝の正規軍聶士成(じょうしせい)の武衛前軍や馬玉崑(ばぎょくこん)率いる武衛左軍と衝突したが、戦闘は連合軍が清朝側を圧倒し、結果、聶士成は戦死、数日後の一九〇〇年(明治三十三年)七月十四日に連合軍は天津を占領、直隷総督裕禄(ゆうろく)は敗戦の責を取って自殺し、天津城南門上には凡そ四千名もの義和団・清朝兵の遺体があったという(ここはウィキの「義和団の乱」に拠った)。]

 

○或男の哲學――虎は虎 猫は猫 どちらもよろし

《10-14》

○革命の成功は文明の破壞となる時如何するや

○アレキサンドリアの圖書館

[やぶちゃん注:紀元前三百年頃、プトレマイオス朝のファラオであったプトレマイオスⅠ世ソテル(在位:紀元前三二三年~前二八五年)によってエジプトのアレクサンドリアに建てられた図書館。ソテルは学問・文化を奨励、地中海世界の著名な学者や詩人を招いて「学園(ムセイオン)」を設立したが、その際に附属研究施設として創立された。蔵書数は 十万巻とも七十万巻ともいわれ、館長には当代の言語学・文献学の大家が就任した。紀元前四八~前四七年のアレクサンドリア戦争の際に焼け落ちたが、後、ローマの政治家マルクス・アントニウス(Marcus Antonius 紀元前八二年頃~前三〇年)がペルガモンの蔵書 二十万巻をクレオパトラに贈り、復旧された。しかし、三世紀後半頃から、次第に破壊され、ローマ皇帝テオドシウス一世治下の 三九一年、キリスト教徒の手によって破壊されてしまった。アラビア人が六四一年にこの地を占領した際には既になく、現在では、かつてあった正確な位置も不明である(以上は「ブリタニカ国際大百科事典」に拠った)。]

 

○白髮をかくすので髮の形などにかまつてゐられない 三十は皺 四十は白髮

《10-15》

○母娘に聟をとり 聟に娘はすぎものと言ふ 娘死す 聟に後妻をとる 今度は聟にすぎものと言ふ

[やぶちゃん注:これは同様の話を読んだことがあるのだが、思い出せぬ。思い出し次第、追記する。]

 

○手に黑子あり 天才か 盜癖か

○睫毛ぬき 眶赤し

[やぶちゃん注:「眶」は「まぶち」などとも読み、「瞼(まぶた)」に同じい。或いはより広く目の周囲を指す語ではある。]

 

○自轉車二臺 一臺は税關まで引いて來し故泥つき 税助かる 甘栗 紅茶 絹物 税かかる 珈琲 羅紗 かからず

○盲人姿勢を正し 點字本をよむ にやりと笑ふ

《10-16》

○鳥屋の人殺し 西川の話

[やぶちゃん注:「西川」芥川の晩年の義兄、実姉ヒサの再婚相手で弁護士であった西川豊(明治一八(一八八五)年~昭和二(一九二七)年)であろう。滋賀県生まれで、明治大学大法科卒。ヒサとの間に一男一女をもうけた(瑠璃子と晃。瑠璃子は後に龍之介の長男比呂志の妻となった)。大正一二(一九二三)年年初に偽証教唆の罪で市ケ谷刑務所に収監され(芥川龍之介はこの時の面会をシチュエーションとした小説冬と手紙と(昭和二(一九二七)年七月発行の『中央公論』)を書いている(正確にはその「一 冬」。現行では「冬」と「手紙」の二篇に分割されてしまっており、並べて読まれることがなくなってしまった。リンク先は旧全集をもとにした本来の形である)、弁護士を失権、更に昭和二(一九二七)年一月四日、西川の家が焼けたが、直前に多額の火災保険がかけられていたことから、彼の金目当ての放火とする嫌疑がかかって、取調べられたが否認、その直後に失踪して、身の潔白をたてるために死を選ぶという遺書を残して、二日後の一月六日、千葉県山武郡土気(とけ)トンネル附近で鉄道自殺を遂げた。彼の死後、彼には高利の借金があることが判明し、火災保険・生命保険などの処理のごたごたや、残された姉一家の生活などのため、芥川龍之介は東奔西走することとなって、肉体的にも精神的にも彼を消耗させた。この騒動は彼の自死に繋がる一つの副次的素因であったとも考えられている。]

 

○古い人形 老先生 兄 妹 弟大學生 子(女) 妹と兄 妹と兄と弟 妹と兄と弟と父、妹と兄と弟と父と子と

《10-17》

O「宣教師」

利根川口 アアネスト・グレン 西洋婦人 日本日曜學校の先生など三四人を別棟に住まはしむ その女の一人 或朝 井戸端に罎を洗ふ 罎亦昇天せんとす 川に近し 川中の船 漁(鰹)ある度に太鼓を打つ 或時 各國の女三人 集まり 讃美歌をうたふ オルガン マシマロに café 造酒屋の主人 朝鮮併合前 朝鮮にあり(事業さがし) 曰グレンは好いが アアネストはいけない

[やぶちゃん注:「アアネスト」不詳。日本でホーリネス教会(キリスト教プロテスタントの教派の一つホーリネス教団の教会)を立ち上げた宣教師にアーネスト・アルバート・キルボルン(Ernest Albert Kilbourne 一八六五年~一九二八年:明治三五(一九〇二)年来日)がいるが、アーネストは普通にある名であり、軽々に比定は出来ない。

「グレン」不詳。]

 

○ここは何と言ふんです 小石川アツパアトメントと言ふんです アツパアトメントと言ふのは何ですか? さあ 西洋のデパアトメントとは違ふんですか? 何でもデパアトメントと言ふのはものを賣る所ださうです

○君 お八重は處女ぢやないんだぜ (平然と)若樣 私も處男ぢやありませんよ 處男? 處男とは何だい? 女が處女なら男は處男ぢやありませんか?

[やぶちゃん注:以上の「君 お八重は處女ぢやないんだぜ」は旧全集でこの位置にあるものの、現存する原資料に見出せないものである。また、以下に、旧全集では、

   *

○僕はこれから噓をつくまいと思つたんだけれども人と話してゐると何時か噓をついちまふんだね。――私は滅多に本當の事はしやべるまいと思つたんです、けれども人と話してゐると何時かほんとの事を云つちまふんですね。

Contemporary authority ニ服スルハ危險ナリ。co. au. の高さ未定なればなり。山陽と木米。

   *

があるが、これは新全集の再検証によって、現状では次の「手帳11」の《11-1》及び《11-17》にあることが判っている。そちらで再掲し、必要な注は附す。

 以上を以って底本の「手帳11」は終わっている。]

 

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