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2018/02/24

進化論講話 丘淺次郎 第十二章 分布學上の事實(4) 三 ガラパゴス島とアソレス島

 

     三 ガラパゴス島とアソレス

 

 大陸から全く離れて遠く太洋の中央にある島に就いて、その動物を調べて見ると、また生物進化の證據を澤山に見出すことが出來る。その一例としてガラパゴス島とアソレス島とに産する動物の比較を述べて見るに、アソレスといふ群島はポルトガルから西へ五百里餘りも隔たつた所の大西洋の眞中にあるが、こゝには蛇・蜥蜴・蛙の類は一種もなく、獸類も兎・鼠等の如き人間の輸入したものの外には、たゞ蝙蝠があるだけで、主として産するものは、先づ鳥類と昆蟲とである。鳥類は總計五十種以上もあるが、その中三十種許は海鳥故、何處へも飛んで行く類で、この島ばかりに住居を定めて居るものではない。殘る二十種ばかりが常にこの島に留まつて居る鳥である。所が之を調べて見ると、總べて對岸のヨーロッパ・北アフリカ等にも産するものばかりで、この島以外には産せぬといふ固有の鳥は僅に一種よりない。而して之もたゞ種が違ふといふだけで、同屬の鳥は大陸の方に幾らも居る。元來この島は皆火山島ばかりで、何時か遠い昔に噴出して出來たものに違ひない故、その初めには動物は全く居なかつたと見倣さなければならぬが、斯くの如く鳥類は總べて南ヨーロッパ・北アフリカ邊と同樣なものであり、その他の動物も悉く風によつて吹き送られたか、或は浪によつて打ち寄せられたかと思はれる種類のみである所から推せば、今日この島に産する動物は、皆實際かやうにして對岸の陸地から移り來つたものと考へなければならぬ。

[やぶちゃん注:「アソレス島」大西洋の中央部(マカロネシア)に位置するポルトガル領の群島アゾレス(ポルトガル語:Açores)諸島。島名はポルトガル語では「アソーレス」。ポルトガルの沖約一千キロメートルの大西洋上に浮かぶ。一四二七年に発見された。リスボンからは約一千五百キロメートル、北アメリカ東端からは実に三千九百キロメートルもある。火山起源の九つから成る群島で。ピコ島の火山ピコ山は標高二千三百五十一メートルもあり、これは同アゾレス諸島のみならず、ポルトガルの最高地点である(以上はウィキの「アゾレス諸島に拠った)。(グーグル・マップ・データ)。]

 ガラパゴス島は南アメリカエクアドル國の海岸から西へ凡そ三百里も離れて、赤道直下の太平洋の眞中にある群島で、單に地圖の上から見ると、ガラパゴスの南アメリカに對する關係は、全くアソレスヨーロッパアフリカに對する關係と同じやうであるから、この島の動物は定めて南アメリカ産と同種なものが多いであらうと誰も推察するが、實際を調べて見ると、大體はやはり南アメリカ産の動物に似て居るには相違ないが、この島ばかりに居て、決して他國では見ることの出來ぬ固有の種類が甚だ多い。先づ鳥類に就いていふに、鳥類はこの島には殆ど六十種ばかりも産するが、その中四十種程は全くこゝに固有なものである。海鳥を除いて勘定すると、殆ど悉く固有なものばかりで、この島に産する陸鳥で、他にも産するものは僅に一種より無い。之をアソレスに固有な陸鳥が一種よりないのに比べると、實に雲泥の相違といはねばならぬが、更に詳細に調べて見ると、かやうな相違の起るべき原因を容易に發見することが出來る。

 アソレス島のある邊は、常から餘り海の穩な處ではないが、每年春と秋とには、極まつて何度も大暴風が吹く。その方角は東からである故、丁度ヨーロッパ大陸で、住處を換へるために大群をなして飛ぶ陸鳥が、非常に澤山大西洋の方へ吹き飛ばされ、途中で落ちて死ぬるものが勿論大部分であるが、尚若干はこの島まで達する。その頃この島と大陸との間を航海した船長の日記の中に、疲れた陸鳥が無數に飛ばされて來て、船の中へも落ちた。その種類は何々である。六十疋許は籠へ入れて置いたが、餌を與へても半分は死んでしまつたなどと書いてあるのが幾通りもある。またこの島の住民に尋ねても、每年暴風の後には、必ず見慣れぬ鳥を何種も見出すというて居るから、年々確に大陸の方から幾らかの鳥が飛ばされて來るものと見える。それ故、この鳥は大陸から四五百里を離れて居るに拘らず、大陸からの交通が絶えぬから、何時までたつても種類は大陸のと同樣で相違が起らぬのであらう。而してたゞ一種だけは如何なる理由によるかは知れぬが最早長い間一度も大陸の方から來ぬ故、この島に居たものだけで獨立に進化して、終にこの島固有の種となつたのであらう。

 ガラパゴス島の方は如何と見るに、こゝは赤道直下の有名な無風の處で、海の表面は常に鏡の如くで、微な漣(さゞなみ)もない。風の吹くことは甚だ稀で、暴風といふては何百年か何千年に一度よりないやうである。この島もアソレス同樣に火山質のもの故、いつか遠い昔に噴出して出來たものには相違なく、今日産する動物は總ベて他から移つて來たものと見倣さなければならぬが、斯くの如く靜な處故、大陸から鳥の飛ばされて來るやうなことは極めて稀で、一度この島に移つた鳥は、大陸の種類とは全く交通遮斷の有樣となり、他には關係なく、この島のものだけで獨立に進化する故、長い年月の後には全く種類の異なつたものになつてしまふのであろう。特に面白いことは、この群島は大小合せて二十ばかりの島から成り立つて居るが、その陸鳥を調べて見ると、全體は略々相似ながら、島々により皆幾らかづゝ違つて居る。之も動物は漸々進化して形狀が變化するものとすれば、容易に理解することが出來るが、若し生物が萬世不變のものとしたならば、アソレス群島の方では何の島にも全く同種が産し、こゝでは島每に少しづゝ種屬が違ふといふやうなことは、如何なる理窟によるものか、全く解することが出來ぬ。ダーウィンはビーグル號世界一週の際にこの群島にも立ち寄り、この奇態な現象を見て、生物は是非とも進化するものに違ひないといふ考が胸に浮んだといふて居るが、之は然もあるべき筈である。

[やぶちゃん注:鳥綱スズメ目フウキンチョウ(風琴鳥)科 Thraupidae に属するダーウィンフィンチ族(Darwin’s Finches)類。ビーグル号の航海の途中、ガラパゴス諸島に立ち寄ったチャールズ・ダーウィンは、この種の多様な変異から進化論の着想を得たとされ、この名称がつけられている。詳しくはウィキの「ダーウィンフィンチ類を参照されたい。]

 尚この外に大西洋のセントヘレナ、太平洋のハワイ群島などの産物を調査して見れば、どこでも生物の進化を認めなければ到底説明の出來ぬ事實を澤山に發見する。これらは略するが、單にここに述べた二群島の鳥類だけに就いて考へても、生物の種屬は漸々進化するものとすれば、總べての現象が天然普通の手段によつて生じた有樣を推察し理解することが出來るが、進化論を認めなければ悉く不思議といふだけで少しも理窟は解らぬ。且實際に調査した結果は何時も進化論を基として推察し、豫期した所と全く符合することなどを見れば、如何してもこの論を正確なものと認めざるを得ない。

 

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