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2018/02/21

進化論講話 丘淺次郎 第十一章 分類學上の事實(1) 序

 

    第十一章 分類學上の事實

 

 動植物の中には、殆ど區別の出來ぬ程に相似たものもあれば、また少しも類似の點を見出すことの出來ぬ程に全く相異なつたものもあつて、その間には相類似する程度に無數の階級がある。鰈(かれひ)と比目魚(ひらめ)とは隨分間違える人があり、楢(なら)と樫(かし)との區別の出來ぬ人も澤山あるが、また一方で橙[やぶちゃん注:「だいだい」。]と昆布とを比べ、人間と蚤とを比べなどして見ると、殆ど共通の點を見出すことが出來ぬ程に違ふ。所で、何十萬もある動植物の種類を一々識別することは出來もせず、また生活上必要もないが、動植物は日夜我々の目に觸れるもので、食物も衣服も悉く之から取ること故、普通のものだけは是非區別して名を附けて置かねばならぬ。犬・猫・牛・馬・鳥・雀等の如き、一種每に全く別の名の附いてあるのは斯かる類であるが、このやうなもののみでも相應に數が多い故、尚その中でも相似たものを合せて、總括した名を造つて置かぬと極めて不便が多い。從來毛を以て被はれ、四足を用ゐて陸上を走るものを獸と名づけ、羽毛を以て被われ、翼を用ゐて空中を飛ぶものを鳥と名づけ、鱗を以て被はれ、鰭を用ゐて水中を泳ぐものを魚と名づけたのも、斯かる必要に應じてなした分類の初步である。

[やぶちゃん注:以下の生物では比較を明確にするために各分類階層のラテン名も示した。但し、比較対象と同一の階層のそれではラテン名は省略し、区別される上位の同一階層を和名のみで示した。

「鰈(かれひ)」動物界 Animalia 脊索動物門 Chordata 脊椎動物亜門 Vertebrata 魚上綱 Pisciformes条鰭綱 Actinopterygii カレイ目 Pleuronectiformes カレイ科 Pleuronectidae 或は上位のカレイ目に属する多様な種群の通称。

「比目魚(ひらめ)」カレイ目亜目カレイ亜目 Pleuronectoideiヒラメ科 Paralichthyidaeヒラメ属 Paralichthysヒラメ Paralichthys olivaceus 或はヒラメ科に属する種群。一般に「左ヒラメに右カレイ」と言われ、実際、通称のヒラメ類の目は多くの種で成体では両眼ともに頭部の左側半分に偏ってついているから区別出来ると言われるが、実際には、カレイ類に属するもので左側眼の種や個体はいるので、これは絶対の識別法ではない。例えば、カレイ科ヌマガレイ属 Platichthys ヌマガレイ Platichthys stellatus(本邦に北部分に広く分布するが、食用価値が低いために流通しない)はカレイであるが、眼は左につく。また、和名でも流通でも「カレイ」の和名を持っているカレイ目ダルマガレイ科 Bothidaeは全種で眼は左側につく。他にも頭部の左側に目を持つカレイもおり、更に、カレイ目ボウズガレイ亜目 Psettodoidei ボウズガレイ科 Psettodidae(一科一属三種。捕獲報告はあるようであるが恐らくは本邦には産しないようである。但し、近くでは台湾に分布するから、迷走個体は南西諸島にいないとは言えない。背鰭の起き始める部分が眼の位置よりも有意に後ろにあって、カレイ目の中では最も原始的な特徴を残す)は右側眼の個体と左側眼の個体がほぼ同数で出現する。別な形状で言うと、ヒラメはカレイに比べて口が大きいこと、歯も一つ一つが大きくて鋭いという点で、対称比較的な特徴は持つ。

「楢(なら)」植物界 Plantae 被子植物門Angiosperms 双子葉植物綱 Magnoliopsida ブナ目 Fagales ブナ科 Fagaceaeコナラ属 Quercus コナラ亜属subgenesis Quercus に属する中で、落葉性の広葉樹の総称。英語名はオーク(oak)。本邦ではコナラ(小楢)Quercus serrata を指すことが多い。秋には葉が茶色くなることで知られている。

「樫(かし)」植物界被子植物門双子葉植物門ブナ目ブナ科コナラ属 Quercusの中の、常緑性の種を「カシ」と呼ぶが、本邦では、また、同じブナ科のマテバシイ(馬刀葉椎)属 Lithocarpusのシリブカガシ(尻深樫)Lithocarpus glaber も「カシ」と呼んでいる。また、身近なシイ属 Castanopsis も別名でクリガシ(栗樫)属と呼び、これらを「カシ」と呼んでいる人も実際に多いのが事実である(私はかつてアリスの散歩の途中で出逢った、地方出身の私より年若の婦人が落ちている「椎の実」を頻りに「樫の実!」と言っていたのを思い出す)。また、全く異なる種であるクスノキ類(被子植物綱クスノキ目 Laurales クスノキ科 Lauraceae)の一部にも葉の様子などが似ていることから、「カシ」と呼ぶものがある(以上はウィキの「カシ」に拠る)から、丘先生の「區別の出來ぬ人も澤山ある」というのは、民俗社会では少し厳し過ぎる謂いと言える。植物学的な詳細な相違は、「広島大学」公式サイト内の「地球資源論研究室」の「ブナとナラとカシ」がよい。必見!

「橙」植物界 Plantae被子植物門 Magnoliophyta双子葉植物綱 Magnoliopsidaムクロジ目 Sapindalesミカン科 Rutaceaeミカン属 Citrusダイダイ Citrus aurantium。正月飾りに用いられる、お馴染みの柑橘類である。

「昆布」植物界ストラメノパイル群Stramenopiles 不等毛植物門 Heterokontophyta 褐藻綱 Phaeophyceae コンブ目 Laminariales コンブ科 Laminariaceae のコンブ類。生物学的分類以前からの呼称であり厳密な定義は不能であるが、葉の長細い食用のものが「昆布」と呼ばれる傾向はある。

「人間」動物界 Animalia 真正後生動物亜界 Eumetazoa 新口動物上門 Deuterostomia 脊索動物門 Chordata 脊椎動物亜門 Vertebrata 四肢動物上綱 Tetrapoda 哺乳綱 Mammalia 真獣下綱 Eutheria 真主齧上目 Euarchontoglires 真主獣大目 Euarchonta 霊長目 Primate 直鼻猿亜目 Haplorrhini(真猿亜目 Simiiformes)狭鼻下目 Catarrhini ヒト上科 Hominoidea ヒト科 Hominidae ヒト亜科 Homininae ヒト族 Hominini ヒト亜族 Hominina ヒト属 Homo ヒトHomo sapiens

「蚤」動物界節足動物門 Arthropoda 昆虫綱 Insecta 隠翅(ノミ)目 Siphonaptera のノミ類。ここは隠翅目ヒトノミ科 Pulicidae Pulicinae亜科ヒトノミ属 Pulexヒトノミ Pulex irritans としてよかろう。但し、本種はヒトだけに寄生するわけではなく、哺乳類や鳥類等を広く寄生主としている。]

 動植物學に於ても、初めは之と同じ位な分類法を用ゐ、植物を分ちて喬木[やぶちゃん注:「けうぼく(きょうぼく)。高木(こうぼく)。]・灌木[やぶちゃん注:「くわんぼく(かんぼく)。低木。]・草の三部とし、動物を分ちて、水中に住むもの、地上に住むもの、空中を飛ぶものと僅に三部にした位に過ぎなかつたが、漸々知識の進むのに隨つて、分類の標準も追々に改まり、單に外部の形狀のみによらず、内部の構造をも斟酌するやうになつて、今日に於ては比較解剖學上・比較發生學上の事實を標準として分類の大體を定めるに至つた。この間の分類方法の變遷を調べて見ると、知らず識らず一步づゝ生物進化論に近づいて來た形跡が歷然と現れて、頗る興昧のあることであるが、之を詳しく述べるには、高等から下等まで動物・植物の主なる部類を殘らず記載せなければならず、到底本章の範圍内に於ては出來ぬ故、省略するが、初め魚類の中に編入してあつた鯨を後には哺乳類に移し、初め貝類の中に混じてあつた「ふぢつぼ」を後には甲殼類に組み入れたこと、初め人間だけを別物としてあつたのを後には哺乳類中の特別な一目と見倣し、更に降つては猿類と合して同一中に入れるやうになつたことなどは、たゞその中の一斑に過ぎぬ。

[やぶちゃん注:既に私の注に述べたが、現代の分類学は、分子生物学の急速な発展によって、アイソザイム(Isozyme:酵素活性がほぼ同じでありながら、タンパク質分子としては別種(アミノ酸配列が異なる)酵素)分析(アイソザイムは遺伝子型を反映していることから、間接的な「遺伝子マーカー」として利用出来る)や直接のDNA解析が進み、その新知見に基づく最新の科学的系統学の知見を反映させた新体系に組み替える動きが盛んである。]

 今日我々が動植物を分類するには、先づ全部を若干の門に大別し、更に各門を若干の綱に分つことは、一度述べたが、尚その以下の分類をいへば、各綱を更に若干の目に分ち、目を科に分ち、科中に若干の屬を置き、屬の中に種を收め、斯くして、世界中にある總べての動植物の種類を一大分類系統の中に悉く編入してしまふ。而して斯く分類するに當つては、何を標準とするかといふに、解剖上・發生上の事項を比較して、異同の多少を鑑定し、異なるものは之を離し遠ざけ、似たものは之を近づけ合せるものである。例へば犬と狐とは無論二種であるが、頗る相似たもの故、之を犬屬といふ中に一所に入れ、猫と虎とは素より種は違うが、甚だ相似た點が多い故、之を猫屬といふ中に一所に入れる。世界中を搜すと、犬屬とも違ふが他の動物屬によりも遙に犬屬の方に近いといふやうな動物が幾らもあるが、これらと犬屬とを合せて更に犬科とし、猫屬の外にも猫に稍々似た類が種々あるが、これらと猫屬とを合せて更に猫科とする。犬科の動物と猫科の動物とは素より著しく相異なる點はあるが、之を牛・馬等に比べて見ると、遙に相似たもの故、犬科・猫科等を合せて食肉類と名づけ、之を哺乳類といふ綱の中の一目とする。されば分類の單位とする所のものは犬・猫・虎・狐といふやうな種であつて、その以上の屬・科・目・綱の如きものは、たゞ若干の種を倂せ稱する名目のみである。

[やぶちゃん注:「綱」英語で“class”、ラテン語で“classis”

「目」英語で“order”、ラテン語で“ordo”

「科」英語で“family”、ラテン語で“familia”

「屬」英語・ラテン語ともに“genus”

「種」英語・ラテン語ともに“species”

「犬」動物界 Animalia 真正後生動物亜界Eumetazoa 新口動物上門 Deuterostomia 脊索動物門 Chordata 脊椎動物亜門 Vertebrata 顎口上綱 Gnathostomata 哺乳綱 Mammalia 獣亜綱 Theria 真獣下綱 Eutheria ローラシア獣上目 Laurasiatheria 食肉(ネコ)目 Carnivora イヌ亜目 Fissipedia イヌ下目 Cynoidea イヌ科 Canidae イヌ亜科 Caninae イヌ族 Canini イヌ属 Canis タイリクオオカミ Canis lupus 亜種イエイヌ Canis lupus familiaris。以下では共通する最後の上位階層を除いて、省略する。

「狐」明確な生物学的定義は実はないが、イヌ亜科 に属するキツネ類で、現行現生種ではキツネ属 Vulpes・オオミミギツネ属 Otocyon・カニクイキツネ属 Cerdocyon・クルペオギツネ属 Pseudalopex・ハイイロギツネ属 Urocyon に含むキツネ類である。但し、狭義には、この中のキツネ属 Vulpes を指すことが多く、我々の馴染みの「狐」はそのキツネ属のアカギツネ Vulpes vulpes の亜種ホンドギツネ Vulpes vulpes japonica である。

「猫」食肉目Carnivoraネコ型亜目 Feliformia ネコ科 Felidae ネコ属 Felis ヨーロッパヤマネコ Felis silvestris 亜種イエネコ Felis silvestris catus

「虎」ネコ科 Felidaeヒョウ属 Pantheraトラ Panthera tigris

「牛」哺乳綱 Mammalia 鯨偶蹄目Cetartiodactyla 反芻(ウシ)亜目 Ruminantia ウシ科 Bovidae ウシ亜科 Bovinae ウシ族 Bovini ウシ属 Bos オーロックス Bos primigenius 亜種 ウシ Bos primigenius Taurus

「馬」哺乳綱 Mammalia 奇蹄(ウマ)目 Perissodactylaウマ科 Equidae ウマ属 Equus ウマ Equus caballus。]

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