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2018/03/27

柳田國男「一目小僧その他」 附やぶちゃん注 物言ふ魚 一

 

   物言ふ魚

 

     一

 

 兒童文庫本の日本昔話集(上)に、私の採錄した泥鼈[やぶちゃん注:後に出る通り、二字で「すつぽん(すっぽん)」と読む。]の親方といふ一話は、今から百年餘り前に、美濃國のある淨土宗の僧の著はした、山海里[やぶちゃん注:「さんかいり」。]といふ書物に出て居るものであつた。大垣の城下から一里東の中津村で、古池を替へ乾して大きな泥鼈(すつぽん)を捕り、それを籠に入れ肩に負うて、町の魚屋へ賣りに行く途中、他の一つの池の塘[やぶちゃん注:「つつみ」。]を通ると、其池の中から大きな聲で

   いずこへ行くぞ

という者がある。そうすると背中の籠の中から、

   けふは大垣へ行くわい

と又大きな聲で答へる。

   何時歸るぞ

と池の中から問へば、

   何時迄居るものぞ、あしたはぢきに歸るわい

と背中の泥鼈は答へた。籠を負うた男は肝を消して、是は池の主だつたと見える。しかしひけ目を見せてはならぬと、殊更に籠の葢[やぶちゃん注:「ふた」。]に氣をつけ繩を強くかけて、明日は還るといふからには殺されるのでは無からう。金を取つて寺へ施物とし、我も魚屋も罪滅しをして、是を限りに殺生を止めようと思案して、だまつて其泥鼈を魚屋に持つて行つて賣つた。其次に[やぶちゃん注:「日本昔話集」では『其翌日』とある。]町へ出た時に魚屋に行って見ると、魚屋の亭主の曰く、あれは誠に怖ろしい泥鼈であつた。刄物が無くては人にも切り破れないやうな生洲[やぶちゃん注:「いけす」。生簀。]に入れて置いたのに、いつの聞にか見えなくなつて居たと談つた(以上)。斯ういふ風に實際あつた事として記して居る。説教の種本には古くから、斯ういふ話し方が普通であつたのである。

[やぶちゃん注:太字は底本では傍点「ヽ」。

「兒童文庫本の日本昔話集(上)」昭和五(一九三〇)年アルス刊の「日本日本昔話集 上」の「泥鼈(すつぽん)の親方」。国立国会図書館デジタルコレクションの画像ので視認出来る。後に「日本の昔話」と改題されて、全集に所収されている。

「泥鼈」爬虫綱カメ目潜頸亜目スッポン上科スッポン科スッポン亜科キョクトウスッポン属ニホンスッポン Pelodiscus sinensis

「美濃國のある淨土宗の僧の著はした、山海里といふ書物」浄土宗ではなく、浄土真宗の学僧で勅許上人位権少僧都正定閣の称号を得た佛光寺教団学頭であった信暁(安永三(一七七四)年~安政五(一八五八)年)の著した全三十六巻から成る仏教説話集。

「中津村」不詳。]

 

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