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2018/03/17

栗本丹洲 魚譜 ウミヅル (卵生サメ・エイ類の卵鞘の付属器と同定)

 

Umizuru

 

[やぶちゃん注:図版は国立国会図書館デジタルコレクションの「魚譜」からトリミングし、合成した。右上の物体は、前の前に公開したチョウザメの鱗の一部分で、本図とは全く関係がない。]

 

□翻刻

ウミヅル漢名不詳

 

[やぶちゃん注:まず、この巻子本「魚譜」には魚でない生物を載せていない(先のチョウザメの鱗だって魚の鱗として違和感がない)。魚でないものを栗本丹洲たる者が、この旧画を編集した巻子本の中に誤まって紛れ込ませることは、あり得ない(膨大な「栗氏魚譜」には貝類・頭足類・甲殻類・刺胞動物が含まれるが、本巻子本「魚譜」とは自ずとコンセプトが異なる)。とすれば、これは藻(藻類)や水草(水生顕花植物)ではあり得ない。この色と形状では、私自身、海藻ではピンとくるものがない。私はかなりの海藻フリークを自認している。現在、最も信頼出来る所持する複数の海藻図鑑を、今一度、念のために検証して見たが、この図にあるような種は、少なくとも本邦産の海藻・海草・淡水産藻類及び淡水産顕花植物類には存在しないと私は思う。そこでつくづく見つめてみた。その結果閃いた。これは、英名“Mermaid Purse”(「人魚の財布」)で知られる、

サメ類(軟骨魚綱板鰓亜綱 Elasmobranchiiに属する魚類の中で鰓裂が体の側面に開く種群の総称)及びエイ類(鰓亜綱に属する魚類の中で鰓裂が体の下面に開く種群の総称)の中で、卵生性のサメのかなりの卵に見られる、硬い皮革様の鞘になった竪琴状(ネコザメ類などでは円錐形のドリル状・スクリュー状を呈するものもある。この場合は、その卵鞘自体の形が海藻類に絡みつかせる目的を持っているが、やはりそれでもその端の部分からここにあるのと同じような発条状付属器が伸びる卵鞘個体画像が海外サイトで幾らも確認出来る。邦語版では「カラパイア」のエイリアンがらみにしかみえねぇ! 海岸に落ちていた螺旋状の黒い物体の正体は?がよかろう。また、本邦産ではないが、ウィキの「オデコネコザメ(オーストラリア東部の沿岸のみで見られる稀種オデコネコザメ Heterodontus galeatus画像も参照されたい。やはり発条状付属器がはっきりと判る)の卵鞘の、その上下から卵鞘そのものを海藻や岩場に固定させるために発条(バネ)上に伸びた巻き髭のような付属器を切り離したもの、或いは、流れついたそれだけを描いたものではないだろうか?

トラザメ(本邦産タイプ種は軟骨魚綱板鰓亜綱メジロザメ目トラザメ科トラザメ属トラザメ Scyliorhinus torazame)類・ナヌカザメ(本邦産タイプ種はトラザメ科ナヌカザメ属ナヌカザメ Cephaloscyllium umbratile)が竪琴状、本邦産の板鰓亜綱ネコザメ目ネコザメ科ネコザメ属ネコザメ Heterodontus japonicus のそれは螺旋状の襞を持った円錐ドリル状を成す。卵鞘本体の大きさはサメの種類によって異なるが、トラザメ類で五センチメートル前後、ナヌカザメ類で十センチメートル前後、ネコザメ類で約十~十五センチメートルほど。孰れも卵鞘の中の卵黄を使いながら、概ね一年をかけて子鮫になり、後に鞘を突き破って孵化する。画像は「カラパイア」の「人魚の財布」と呼ばれる巾着のようなサメの卵が最もよい。リンク先を見て貰うと判るが、海中の生体卵鞘の場合は昆布のような海藻によく似た褐色(擬態であろう)、或いはくすんだ白色・灰白色(岩礁帯ではこの方が擬態し易いであろう)を呈しているものの、乾燥品は暗褐色から黒色系へと偏差していしまい、特に発条上の部分は、乾いた海藻の茎、この図のような感じの色になってしまうのが、リンク先の最後の、人が掌に八個体を載せている画像(写真)でよく判る。また、浪人710氏のブログ「茨城県化石工房」のサメ&エイの卵殻には『トラザメの卵殻(現生標本)』として『茨城県』『北茨城市の海岸で採取』したもの写真があり、そこではこの発条上付属器が半端なくモシャモシャに絡み合っている様態が見てとれる。また、ここまで問題にしなかったエイ類の『千葉県』『銚子市の海岸で採取』された『ガンギエイ』(軟骨魚綱板鰓亜綱ガンギエイ目 Rajiformes の広義のガンギエイ類としておく。私自身は卵鞘から種を同定する能力はないからである)『の卵殻(現生標本)』が載り(但し、付属器は見えない)、その卵鞘はサメ類と殆んど同形状であるから、同じような付属器があると考えるのが自然であると言えると思う。「ウミヅル」は高い確率で「海蔓」であろう。

――私は正直、この対象同定にはかなりの自信を持っている

【2018年4月27日:追記】たまたま国立博物館の丹洲の「千蟲譜」(原本からの別人による写本。丹洲自筆本は、最早、どこにも存在しない)の画像を見ていたところ、こちらの画像(上の画像をクリックすると大画面のこちらになる。但し、画像はやや粗い)の中に、本図と、一見、非常によく似た図を見つけた。所持する丹洲の「千蟲譜」(国立国会図書館蔵の曲直瀬愛旧蔵写本「栗氏千蟲譜」を底本とした、昭和五七(一九八二)年恒和出版刊『江戸科学古典叢書』題四十一巻)と並べて見ても(第七巻。同じものを国立国会図書館デジタルコレクションの画像のここで視認出来る。以下に参考画像として掲げてもおく)、その相似性はかなり際立っているようには見える


Jpegoutput

ところが、この上図の黒い螺旋形個体はキャプションで「水蠱虫」(「すいこちゅう」と読んでおく)とし、二種いる「足纏」(下の別図では「
アシマトヒ」とキャプションする)の、黒色型と赭色(しゃしょく/そほいろ:赤褐色。赤土色)型のうちの〈黒いアシマトイ〉であると読める(ここから、「博物館図譜」も国立国会図書館蔵本も孰れも下図の螺旋を巻かない個体は白くしか見えないが、実は赭色が本来の原色なのである)。さらに上部の「水蠱虫」の解説には、俗に「ハリガネムシ」と呼ぶ「線虫」であるとし、左上の続きには「カマキリ」または「キリギリス」の腹の中より、この虫が出てくることがあり、これはそれらの体内に寄生する(人にもいる)蛔虫の類なのであろうか、として、大抵は筧(かけい:水を送る樋(とい))の中の水中にいる、としている。さらに下図のキャプション(こちらは漢文白文)には、この奇虫は水中にありながら、声を発するとし、ミミズ状で、近くで見た人が「これは人体寄生虫でヒトの胃腸を食い破る」と説明した風なことが書いてある(この知ったぶりの人物の話ははヒト寄生性の回虫とハリガネムシ(後述)の誤認である。ハリガネムシはヒトには寄生出来ない)。

 これらを総合的に見れば、この「千蟲譜」の上下に描かれた生物が、脱皮動物上門 Ecdysozoa  類線形動物門 Nematomorpha 線形虫(リガネムシ)綱 Gordioidea に属するハリガネムシ類であることは素人でも判然とする。リガネムシ類(針金虫・鉄線虫等と漢字表記する)の体色は白・黄・黒褐色などさまざまであるから、色も問題ない。彼らの体長は通常は十~四十センチメートルで、細長い針金状を成す(伸びた状態で観察されることも多いが、寄生主の体内から出る際には強く螺旋状に巻き込んで、ゴチャゴチャになることがある。昆虫嫌いの私でさえ、それを見たことがあるくらいだ)。湿地や小川などの水中に棲むが、幼生はカマキリやバッタなどの昆虫類の体腔に寄生し、成長すると、寄生主の体外に出る(なお、その際、寄生主は概ね、衰弱して死亡する。しない場合でも、ハリガネムシに寄生されると、その寄生主は生殖能力を喪失するから、まっとうな生涯は送れない)。
 
 しかし、翻って考えると、やはり、上の丹洲の巻子本「魚譜」には海産生物(及びその関連附属物)しか載せていないことキャプションは「ウミヅル」でどう考えても形状から「海蔓」しか浮かばないこと、そして何よりも、両図を拡大してよく見てみて頂きたいのであるが、「千蟲譜」版のそれは上下二個体ともに表面が滑らかで突起物が一切描かれていないのに対し、「魚譜」の「ウミヅル」は細かい小突起が夥しく描かれている点で実は有意に異なるのである。されば、私は先に「
卵生サメ・エイ類の卵鞘の付属器」と同定したことを変える気は一切ない、ということをここに明言してするものである

 

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