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2018/03/29

栗本丹洲 単品軸装「ウチハ魚」(ウチワフグ)

 

Utiwahugu_2

 

[やぶちゃん注:図版は国立国会図書館デジタルコレクションの栗本自筆軸装画「鳥獣魚写生図 ウチハ魚の画像をトリミングしたものである。]

 

□翻刻1(原画のママ。但し、「ハラハラ」の後半の踊り字「〱」は正字化した)

寛政六寅冬志州浪切浦

漂水之處て獲之脊圓ク平ク

目ノ上高し鬣小ナリ腹一杯ニテ

廣ク團扇之如シ因テウチハ魚と云

又袋ブかと云口鳥ノ喙似タリ

遍身沙アリ鮫皮ノ如シ腹ハ竪

ハラハラトアリ手ニテ点撫レハ

小刀ノ刄ノ如クナルモノアリ甚異物

ナリ色形ハ図ノ如シ肉白ク味中品

脂アリテ軽ク温ナリ無毒ナルモノ也

 

 

□翻刻2(句読点を打ち、概ね、カタカナをひらがなに直し(「袋ブか」の「か」は特異的にカタカナにした)、記号等を加えて一連の記載として訓読(「如し」は漢文では助動詞であるので平仮名とした)整序して、全体を連結した。読み易さを考え、一部に送り仮名や読みを推定で附し、更に〔 〕で助詞を補助した)

寛政六寅〔の〕冬、志州、浪切浦に漂水の處にて、之れを獲る。脊、圓(まる)く、平く、目の上、高し。鬣(たてがみ)、小なり。腹一杯にて廣く、團扇(うちは)のごとし。因りて、「ウチハ魚(うを)」と云ふ。又、「袋(ふくろ)ブカ」と云ふ。口、鳥の喙(くちばし)に似たり。遍身(へんしん)、沙(すな)あり、鮫皮のごとし。腹は竪(たて)に、点、パラパラとあり。手にて点の上を撫(な)づれば、小刀の刄(は)のごとくなるもの、あり。甚だ異物なり。色・形は図のごとし。肉、白く、味、中品(ちゆうひん)。脂(あぶら)ありて、軽く、温(おん)なり。無毒なるものなり。

 

[やぶちゃん注:条鰭綱新鰭亜綱棘鰭上目フグ目フグ亜目ウチワフグ科ウチワフグ属ウチワフグ(団扇河豚)Triodon macropterus である。一科一属一種。インド洋と太平洋の熱帯域(アフリカ東岸からオーストラリア・フィリピン・日本近海まで)に広く分布する深海性(百メートル以深)の種。体が側扁し、腹部が団扇のように下方に拡張している。両顎の歯は癒合して嘴状になっており、上顎に二枚、下顎に一枚ある(属名(-odon は、ギリシア語(イオニア方言)で「歯」)や英名の Three-toothed puffer はそれに由来する。“puffer”は「プッ!」と吹く人や物の意から「フグ」をも指す語)。体色は黄色で、腹部に黒色の眼状斑(周囲は淡色)を有し、尾鰭は二又に分かれる。全長は三十センチメートルにも達する。本種はフグ目 Tetraodontiformes の中でも、その下のフグ亜目 Tetraodontoideiとモンガラカワハギ亜目 Balistoidei のタクソンを結ぶ中間的特徴を備えている。支持骨格である腰骨のみが存在するのはフグ目の主な共通点であるが、腹鰭を持たない(これはフグ科Tetraodontidae以降の特色)。しかし腰骨が左右の対構造を持っていて、これは、完全に単一構造を呈するモンガラカワハギ上科 Balistoidea よりも原始的な特徴であることから、目内での分類学上の位置づけに問題を残しているグループと言える(一部でウィキの「フグを参照した)。一本釣りで漁獲され、九州や沖繩などの島嶼では食用にする。無毒(後注参照)。

「寛政六寅」一七九四年。

「志州」志摩国。

「浪切浦」現在の三重県志摩市大王町波切附近。(グーグル・マップ・データ)。志摩半島の南の西端である大王崎の直近。

「漂水の處にて」水面を漂って流れていたことを言っているものと思われる。深海性の種であるから、内臓疾患か何かで弱って浮き上がってきたものであろう。

「鬣(たてがみ)」背鰭。

「袋(ふくろ)ブカ」「袋」は下垂した腹部の弛(たる)み由来で、「ブカ」は「鱶」、「鮫」のこと。後で丹洲が述べている通り、皮革表面に強いザラザラした棘状突起(本文の「沙(すな)」「小刀の刄(は)のごとくなるもの」はその形容・比喩)が偏在するのが、鮫肌(鮫皮)と同じだからであろう。

「温(おん)」漢方で言う人体を暖める性質を指す。

「無毒なるものなり」テトロドトキシンを持つ種が多いフグ科 Tetraodontidae(二亜科十九属百三十種)とは科レベルで異なる(ウチワフグ科 Triodontidae)本種は無毒である。ある意味、見間違えることもなく、安心して食べられる「フグ」でない「フグ」ということにもなろうか。私は残念なことに食したことがないが、食した記載では、蛋白質に富んでいて白身で味がよい、とある。]

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