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2018/03/20

栗本丹洲 魚譜 銀ザメ (ギンザメ♀)

 

Ginzame

 

[やぶちゃん注:図版は国立国会図書館デジタルコレクションの「魚譜」からトリミングし、合成した。左上辺で尾の一部が切れているのと、キャプションの「銀」の字の頭の一部が切れてしまっているのも、原巻子本のママ。国立国会図書館デジタルコレクションの原画像は頭頂部と本体が切断されて撮られており、しかも二枚の画像の角度が微妙に異なっているために、頭頂部画像を僅かに回転させて接合した。そのようにして出来上がったものをトリミングしたため、左右が狭まってしまい、しかも若干のキャンバスの白さが左右に出てしまったのはお許し戴きたい(私のショボい画像処理ソフトでは、たったこれだけのことをするのにさえ三十分以上かかるのである)。頭の「尾鯊」の上の字などは、完全に切り捨てられてある。後で述べるが、この標題魚名は「劔尾魚」とあったものと推定する。]

 

□翻刻1(原典のママ。■は巻子本化するに際して、カットされてしまったと推定する字。【 】は二行割注)

■尾鯊【九州方言ツノジ】

銀ザメ

  寒月ヨリ春初ヘ

  掛テ出ル味軽ク

  邵陽魚ノ如シ骨

  軟カナリ但カグサキ

  臭氣アリ凡鯊ノ

  類肉ヲキリヨク

  湯煮ヲナシ骨ニ付

  テ竹ノ筋ニテ

  アイノ如キ処ヲ通

  シ新汲水ニテ

  洗浄シテ煮啖

  ヘハ臭氣去リ毒

  ナシト云

  此物總身銀箔ヲ

  ハリタルガ如ク光アリ

  因テ勢州ニテハク

  ザメト云

 

□翻刻2(今まで通り、読み易く整序変更した。切除された「■」は「劔」と推定してそれを〔 〕で補った。推定根拠は後注を参照されたい)

「〔劔〕尾鯊(けんびざめ)」【九州方言、「ツノジ」。】

「銀ザメ」

寒月より春初めへ掛けて出る。味、軽く、邵--魚(えい)の如し。骨、軟かなり。但し、かぐさき臭氣あり。凡そ、鯊(さめ)の類ひ、肉をきり、よく湯-煮(ゆに)をなし、骨に付けて、竹の筋(すぢ)にて、「ちあい」の如き処を通し、新たな汲み水にて能く洗浄して、煮て啖(く)へば、臭氣去り、毒なしと云ふ。此の物、總身(さうしん)、銀箔(ぎんぱく)をはりたるが如く、光りあり。因りて勢州にて、「ハクザメ」と云ふ。

 

[やぶちゃん注:今回は、尾鰭と区別可能な尻鰭がないという点と、棘の後ろが鋸状になっており、尾鰭の後端が糸状に著しく伸びるという点で

ギンザメ科アカギンザメ属アカギンザメ Hydrolagus mitsukurii 

としたい。

「「〔劔〕尾鯊(けんびざめ)」切除されてしまった部分は痕跡もないのであるが、後半でギンザメ上科 Chimaeroidea のテングギンザメ科 Rhinochimaeridae・ギンザメ科 Chimaeridae ギンザメ類に丹洲は「閩書南産志」から「劔尾魚」として名を与えており、何より、本図と酷似した後に出る図(国立国会図書館デジタルコレクションの)に「劍尾魚」と標題しているからである(或いは同一個体を別に描いたものかも知れない。その可能性はそこで再度、考証する)。

『九州方言、「ツノジ」』この異名は確認は出来なかったが、感覚的には「キンザン」とも親和性を感じる。この「ツノ」は背鰭前縁にある危険な棘を「角」と言ったものと私には思われる博物学古記録翻刻訳注 ■17 「蒹葭堂雑録」に表われたるギンザメの記載で既に述べたが、ギンザメ類の♂の頭額部には交尾の際に♀を押さえつけるのに用いられる鉤状突起があるから、それを「ツノ」と言った可能性もあるかも知れぬが、本図には、そもそも、それがない。当時の漁民は♂と♀を区別して同一種とするよりも、違った魚としてそれを捉えた可能性の方が私は高いと思うのである。【2018年3月27日追記:後の剣尾魚 (ギンザメの♀或いはニジギンザメの♀)で丹洲が『此物半身以下漸〻細長ナリ然レトモ直ナラスシテ下ノ方ヘ曲ルコトつノ字ノ如シ故ニツノジノ名アリ』と述べていた。これは目から鱗!】

「寒月」特に旧暦月の特定呼称にはないが、寒さが木々しくなる旧暦十一月十二月と採ってよかろう。

「邵--魚(えい)」ネットを始めた当初からお世話になっているMitsuru Nakajima 氏の魚類サイト内の「真名真魚字典」のに、「邵陽魚(しょうようぎょ)」で『邦名:(1)エイ(「水産俗字集」「水産名彙」)。(2)コメ・オオトビウオ(「水産名彙」)』とあり、そこにあるリンク先の記載を見ても、これは肉の味であるからして、同じ軟骨魚類の「エイ」と採り、かく読んだ。

「かぐさき」この「か」は「香」ではなく(それでは如何にもな畳語表現である)、形容詞について語調を調える接頭語と採る。

「臭氣」不快な臭い、特に生臭い場合に、「かざ」(「氣」だけでも)などと読む場合もあるが、ここはルビがないのでそのまま「しうき(しゅうき)」と読んでおく。

「湯-煮(ゆに)」湯で煮ること。臭み抜きとして正しい第一段階である。正確には湯引きを何度かするのが、効果的である。御存じのように特にサメ・エイの類は浸透圧調整のために体内に多量の尿素を溜め込んでおり、死後はそれが分解してアンモニアとなるからである。

「骨に付けて」骨につけたままで、の謂いであろう。血合い部分を見易くするためと、肉を骨から剝す際に細胞を壊して、肉に血やアンモニア臭が沁み移ってしまうのを防ぐためであろう。

「竹の筋(すぢ)」竹の細い串。

「ちあい」血合い。

「新たな汲み水にて能く洗浄して」非常によろしい適切な第二段階の処理である。

「煮て啖(く)へば」最終処理として完璧。但し、油はすっかり落ちてしまって、淡白過ぎてしまうように思える。少し臭いぐらいが、私は美味いと思うけどなぁ。

「毒なし」ギンザメの肉には毒性はない。

「總身(さうしん)」「さうみ(そうみ)」と読んでも構わぬ。

「勢州」伊勢。

「ハクザメ」箔鯊。箔鮫。]

 

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