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2018/03/08

栗本丹洲 魚譜 ガンギ 異品 (メガネカスベの背部か?)

 

Ganigibetusyu

 

[やぶちゃん注:図版は国立国会図書館デジタルコレクションの「魚譜」からトリミングした。頭部の先端が切れているのが最悪である。右下で尾の先端でも切れているように見える。巻子本に仕立てた際、継ぎ目で切れて再現していないようにも思われるが、或いは、ぎりぎりの線でカットし、これで切れていないと丹洲は判断したものかも知れない。しかし左の台盤の前部の端及び右の後部尖端がともにカットされていて、再現もされていない。それなりに、この巻子本に仕立てたかった一枚なのであろうが、如何せん、図が大き過ぎた。]

 

□翻刻1(そのままの表記で一行字数を一致させたもの)

ガンギ同物ニテ異品ナリ

奥州岩城方言 カスペイ

又 カラカイ レンテン等

言アリ 少シツヽノ見分アリ

漁夫ノ俗呼ナリ

 

□翻刻2(同ポイントにし、概ね、カタカナをひらがなに代え、句読点・濁点・記号及び一部に読みを添え、続けたもの)

「ガンギ」同物にて、異品なり。奥州岩城方言「カスペイ」、又、「カラカイ」、「レンテン」等の方言あり。少しづゝの見分(みわけ)あり。漁夫の俗呼(ぞくこ)なり。

 

[やぶちゃん注:キャプションの冒頭で『「ガンギ」同物にて、異品なり』というのは、本「魚譜」の図目の「タウボコヱ」に、逆さまに貼り付けられ付箋に「ガンキ」とあったのを受けると考えざるを得ない(濁音がないが、それ以外の文字列の一致はここだけである)。何故なら、そこ意外に本巻子本「魚譜」の前の部分には禁じする文字列が存在しないからである。そこで私は迷いつつも、「タウボコヱ」=「ガンキ」とはガンギエイ科 Rajinae 亜科コモンカスベ属モヨウカスベ Okamejei acutispina 或いは同じコモンカスベ属ツマリカスベ Okamejei schmidti の二種を比定候補とした。しかし、丹洲はそれらとは「同」じ仲間ではあるが、「異品」だという言うのであるから、これらに比定することは比定することは控えるべきかもしれない。しかし、二種の候補を出したのだから、その孰れかを本図の種と分け合えばよいとも言える。一方で、頭部の前方が有意に釣鐘状に細くなっていること、尖端は残念なことに描かれていないが、両眼の間から伸びる背部の梁が異様なまでに目立って細く明確に描かれているところからは、吻の軟骨が有意に硬いことを示しているように見える。そうすると形状的には、

ガンギエイ科Rajinae 亜科メガネカスベ属メガネカスベRaja pulchra

ガンギエイ科Arhynchobatinae 亜科ソコガンギエイ属ドブカスベ Bathyraja smirnovi

が挙げたくなり、また、腹鰭の様子からは、

ソコガンギエイ属リボンカスベ Bathyraja diplotaenia

も添えないと不十分なように感ぜられてくるのである。「ぼうずコンニャクの市場魚介図鑑」の『「カスベ」と呼ばれるもの一覧」』の画像を比較されると、私の欲求は納得されるものと思われる。個人的には、前の腹が描かれた、

メガネカスベRaja pulchra

と同一種の別個体の背面としたくなる(何度も言っているように「メガネカスベ」は「眼鏡」模様は全くない個体も多いのである)。そうすると、前の「カツベ」の図と合わせて、ここが、同一種の腹面と背面のスムースな二枚対称博物画として鑑賞出来るからでもある。

「奥州岩城」現在の福島県浜通りの南部に位置するいわき市。ここ(グーグル・マップ・データ)。

『方言「カスペイ」』「カラカイ」「レンテン」前に述べたが、再掲する。私はこの「からかい」というエイ類の鰭(実は単独の種を素材とせず、広くエイ類のそれを用いる)を干したものを甘辛く煮たものが大好物である。山形県では「からがえ」「からげ」「からかい」と呼び、私はそちらにいた古い教え子に何度もこれを送って貰ったものである(「からかい」は狭義にはエイの干物を指すから「から」は「乾(から)」で、「かい」は「かえ」「がえ」「がエイ」、「乾かしたエイ」の短縮形かも知れぬ)。「カスペイ」は広く「カスベ」の方言としてあり、青森県では「エイひれ」(生・加工品とも)のことも指す。「レンテン」は岩手県大船渡市や仙台で生きたエイのことを呼ぶ語としても存在する(語源は不詳)。

「少しづゝの見分(みわけ)あり」これは興味深い。これらの方言名は漁師たちの間、或いは当時の流通に於いて、全く同一の個体群や種を指すのではなく、それなりに少しずつ区別されて用いられているというのである。それは或いは、同一種であっても、大きさや厚さや細さや体色によって呼び分けられていたのかも知れぬし、全くの生物学的別種として既に区別されていたのかも知れぬのである。この識別内容が判っていたらなぁと私は思う。

「俗呼(ぞくこ)」俗称。]

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