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2018/04/11

進化論講話 丘淺次郎 第十三章 古生物學上の事實(7) 六 貝塚の貝 /第十三章~了

 

     六 貝塚の貝

 

 我が國には處々に貝塚というて、古代の人間が食用にした貝の殼が、一箇處に夥しく堆(うづたか)くなつて居る處がある。初めて發見になつたのは、東京と橫濱との間の大森で、鐵道に沿うた處であつたが、その後處々方々で、澤山に見出され、今では東京に近い處だけでも、何十箇所と數へるに至つた。之を造つたのは、我々日本人種以前にこの島に住んで居た人間で、いつ頃之を造つたかは確には解らぬが、この人間と我々の先祖であるその頃の日本人種と、物品を交易したらしい形跡もあるから、先づ二千年位も前のものと見て置けば宜しからう。さてこの貝塚には如何なる貝があるかといへば、今日その邊の海岸に居るのと全く同種な貝類ばかりであるが、貝塚の貝と現今の貝とを比べて見ると、多少の相違を發見する。貝塚から發見せられた貝の種類は何十種もあるが、その中から最も普通にある類を三四種だけ選んで比較して見るに、「あかがひ」に似て遙に小く、殼の表面の溝の數の著しく少い「はいがい」といふ貝があるが、今日海岸で採集した標本と貝塚から掘り出したものとを比べて見ると、殼の表面にある溝の數が大分違ひ、今日のものは、溝が二十三か二十四位もあるが、貝塚のものには平均十八位よりない。また「おきしゞみ」といふて蛤を圓くしたやうな貝があるが、左右の介殼の幅と長さとの割合を測つて表に造つて見ると、今日の方が貝塚の頃よりは著しく長めになつて居る。また今日の「ばい」と貝塚の「ばい」とを竝べて、兩方の介殼の卷いた尖端の角度を測つて見ると、今日の方が遙に鋭くなつて居る。その他の貝類にも之と同樣な變化を見るが、一々之を擧げることは略する。

[やぶちゃん注:「あかがひ」斧足綱翼形亜綱フネガイ目フネガイ科アカガイ属アカガイ Anadara broughtonii四十二本或いは四十三本の放射肋を有する

「はいがい」フネガイ科 Tegillarca 属ハイガイ Tegillarca granosa放射肋は十八本内外ウィキの「ハイガイによれば、アカガイと同じくヘモグロビンを含む体液を持つ。南アフリカ東岸から東南アジア・オーストラリア・ポリネシア及び本邦の北部まで広汎に分布する。主に水深一~二メートルの潮間帯の砂泥中に埋もれた状態で棲息する。成貝は殻長五~六センチメートル、殻幅四~五センチメートルに達する。本種は『食用として経済価値が高く』、『浙江省沿岸だけで』も凡そ百平方キロメートルの『干潟が本種の養殖に利用されて』。『隣接する福建省の河口域においても同様の養殖が行われている』。『蒸す、茹でる、焼くなどの調理法にて食される。伝統的には生食されることもある』。但し、『安全に食用とできる他の多くの貝類と異なり、本種は低酸素環境に生息するため』、『懸濁物と共にA型肝炎、E型肝炎、腸チフス、赤痢等の細菌やウイルスを取り込んでいる』。『本種は中国料理に用いられる美味な食材の一つと考えられているが、上海における早茹で (quick-boiling) のような調理法では』、『多くの細菌やウイルスが残留する』とある。

「おきしゞみ」斧足綱異歯亜綱マルスダレガイ目マルスダレガイ超科マルスダレガイ科オキシジミ亜科オキシジミ属Cyclina sinensis。本州・四国・九州及び朝鮮半島・台湾・中国沿岸に分布する。通常は内湾の潮間帯或いは河川の河口付近の汽水域の泥底に棲息し、潮干狩の対象の一つとなる。殻の外形は丸みがあり、殻高・殻長ともに五センチメートルほどに達し、殻頂は前へ傾いている。殻表は褐色乃至黄色で、辺縁部は紫色を帯びる。大きな蜆のようには見える。辺縁部では放射肋及び成長脈が明瞭。内面は白色で、腹縁は細かく刻まれている。食用にはされるが、漁業対象になるほど纏まっては採れない(ここは小学館「日本大百科全書」に拠った)。

「蛤」異歯亜綱マルスダレガイ科ハマグリ亜科ハマグリ属ハマグリ Meretrix lusoria

「ばい」腹足綱吸腔目バイ科バイ属バイ Babylonia japonica。]

 

 斯くの如く僅に二干年前に住んで居た貝類の殼と、今日のものと比較して見ても、既にその間に多少の相違を認める。單にその相違ばかりを見れば、素より些細な相違には違ひないが、時の短さに比較して考へて見れば、隨分著しい變化というても宜しからう。前にも述べた通り、地球の歷史に比べると、二干年位は殆ど勘定にも入らぬ程で、水成岩の出來始から計算しても、今日までの時の長さは二千年の何萬倍も何億倍もあつたらしいから、若し僅に二干年の間に既に尺度を以て容易に測れる程の變化が起るものならば、全體に於

ては如何なる變化でも決して出來ぬことはない。近來はこの種の測定が精密になり、多數の材料に就いて研究した結果、今日では僅に十年間に起つた變化までを數字で現すことが出來る例もある。イギリスの或る處で築港をした結果、そこに住む蟹の甲から生えた刺毛の數が、僅二年許の間に平均が減じたことなども、測定と統計とによつて明瞭となつた。かやうに丁寧に測つて見ると、生物種屬の形狀が漸々變ずることは目前の事實で、たゞ變化が遲いために特別に精密な方法によつて測定し、その結果を統計して見るだけの勞を取らねば、之を知ることが、むづかしいといふに過ぎぬ。

 本章に掲げたのは、皆或る動物が同一の場所に於て、漸々變化した例であるが、この外にて一地方から他の地方に移したために、動物の漸々變化した例は頗る多い。ヨーロッパからポルトサントーの島に移した兎が、既に別種と見倣すべき程に變化したこと、ブラジルからヨーロッパに移した「モルモット」は、今は互に交尾せぬまでに相違するに至つたことなどは、既に前に述べたが、これらも無論動物の變化した實際の例として擧ぐべきものである。先年、玉黍貝(たまきびがひ)といふ一種の貝をヨーロッパから北アメリカに移殖したことがあるが、今日ヨーロッパ産のものとアメリカ産のものとを比較して見ると、その貝の幅と長さとの割合が著しく相違するに至つた。之も同樣の例に屬する。また人間の飼養する動物が今日までに著しく變化し來つたことも、素より生物進化の實際の例であるが、これらは既に述べたことであるから、再び説くには及ばぬ。斯くの如く生物の形狀が實際に變化し來つたことの、確に解つてある場合は、地質學上の時代に於ても、また歷史以後に於ても、數多の例のあること故、今日に於ては生物種屬は總べて萬世不變のものであるといふやうな説は、最早殆ど眞面目になつて駁する程の價値もないものである。

[やぶちゃん注:「ヨーロッパからポルトサントーの島に移した兎が、既に別種と見倣すべき程に變化したこと、ブラジルからヨーロッパに移した「モルモット」は、今は互に交尾せぬまでに相違するに至つたことなどは、既に前に述べた」第三章 人の飼養する動植物の變異(4) 三 他の動物の變種を参照。

「玉黍貝(たまきびがひ)」腹足綱前鰓亜綱盤足目タマキビガイ科タマキビ属 Littorina の一種であろう。本邦で全国的に普通に見られる例のタマキビ Littorina brevicula(他には朝鮮と中国南部のみに分布。本邦では食用としないが、ダシは採れる)とは異なる種であるので注意。わざわざ移入したのだから、食用にするために移植したものであろう。試みに調べてみたところ、フランス沿岸で食用とされるタマキビ属の種として Littorina fabalisLittorina sitkanaLittorina obtusata をフランス語のサイトから見出せた)。]

 

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