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2018/05/03

栗本丹洲自筆巻子本(国立国会図書館所蔵・第1軸)「魚譜」始動 / マンダイ (アカマンボウ)

 

[やぶちゃん注:栗本丹洲の自筆になる軸装「魚譜」を始動する。これは以前に本カテゴリ「栗本丹洲」で最初に電子化注した、エイ・サメ・ギンザメを主体とした巻子本の「魚譜」とは、全く異なるものである。

 底本は国立国会図書館デジタルコレクションのこちら(「魚譜」第一軸)の画像を用いた。磯野直秀先生の解題によれば、巻子本は『「鯛」の名がつく魚』の合計七十九品の図譜であるが、『本物のタイの類は少なく、コブダイ(ベラ科)やイシダイ(イシダイ科)などが大半を占める』。但し、このうちの『約半数』は実物をそのまま写したもの(真写)ではなく、先行する讃岐高松藩第五代藩主で博物学でもあった松平頼恭が作らせた「衆鱗手鑑(てかがみ)」(原本は行方不明となり、目録のみが残っていたが、その関係する一部(献上本残欠或いは転写本の一部)が現代になって発見されている)や「衆鱗圖」から『の転写である』とある。

 虫食いや汚損がかなり見られるが、上下左右のトリミングは行ったが、原サイトの写真が魚体を分離している場合の合成以外は、補正は加えていない。大きな魚体では25%で、他は概ね50%の表示画像を使用した。

 本巻子本の図のキャプションは極めて簡便であるので、総て、図の前に電子化して配し、必要な場合は直後に《 》で推定訓を添えて整序(一部に読みも推定で歴史的仮名遣で添えた)したものを示した。例えば、今回の例を見よ)。原典の表記のママとし、正字か略字かに迷ったものは正字で示した。二行割注っぽいものは【 】で同ポイントで示した。【2018年5月3日始動 藪野直史】]

 

 

万年ダイ 又 マンダイ 又云萬寳ダイト云   栗瑞見手寫㊞

《「万年ダイ」。又、「マンダイ」。又、云(い)はく、「萬寳(まんばう)ダイ」と云(い)ふ。   栗瑞見(りつずいけん)手づから寫す㊞》[やぶちゃん注:丹洲は養父を継いで江戸幕府奥医師四代目栗本瑞見を名乗った。㊞は「丹州」と読める。]

 

Manendai

 

[やぶちゃん注:やや滑稽で可愛らしく見えるものの、これは間違いなく、

条鰭綱アカマンボウ目アカマンボウ科アカマンボウ属アカマンボウ Lampris guttatus

(英名:opah(オゥパー))を写したものである。アカマンボウ(赤翻車魚)という名であり、ちょっと魚体がマンボウに似て見える(私はマンボウの形状上の最大の特異点である舵鰭、及び、背鰭・腹鰭・胸鰭の伸び様の相違に着目すれば、似ているとは決して思わない)ものの本種は、条鰭綱フグ目フグ亜目マンボウ科マンボウ属マンボウ Mola mola 及びその仲間(マンボウ属の種の問題は丹洲の「翻車考」のオリジナル翻刻注(ここから連続で全十回)以前から、さんざん述べてきたので、ここでは繰り返さない。例えば、最初にそれを注した『栗本丹洲 単品軸装「斑車魚」(マンボウ)」』の私の注を参照されたい)とは全く別種であるので注意されたい。実は、一見、似ても似つかない、長大な長さで知られる神秘的な深海魚、リュウグウノツカイ同種はまさにアカマンボウ目 Lampriformes に属す、リュウグウノツカイ科リュウグウノツカイ属リュウグウノツカイ Regalecus glesne なのである)に近い仲間なのである。以下、ウィキの「アカマンボウ」より引いておく。全長は二メートル、体重二百七十キログラムほどにも『なる大型魚である。体は円盤形で、左右から押しつぶされたように平たい。口は前に少し突き出ていて、歯がない。体はタチウオのように銀色で、白いまだら模様があり、小さくて剥げやすい鱗に覆われる。ひれと口元、目の周りは鮮やかな赤色で、胸びれ、背びれの前端部、腹びれが鎌状に長く発達する。側線は胸びれの上で背中側に大きく曲がっている』。『外見や生態は和名のとおり』、『マンボウにも似ているが、分類上はまったく別の魚である。マンボウと違って尾びれをもち、胸びれ』もマンボウのように萎縮した丸いものではなく、『水平に長く発達している。なお、ラテン語での目名、科名、属名は、「輝かしい」「明確な」という意味のギリシャ語 lampros に由来し、名のとおり』、『鮮やかな外見の魚といえる』。『世界中の熱帯・温帯の海に広く分布し、外洋域の水深』五百メートル『までの表層・中層に生息する。ただし人目に触れない環境に生息しているため、生態についてはほとんどが不明である』。『マグロなどと同様に、胸びれと尾びれを使って泳ぎながら生活していると考えられている。食性は肉食性で、クラゲ、イカ、オキアミ、小魚などを捕食する。いっぽう、敵はアオザメやホホジロザメといった外洋性の大型のサメである』。『稚魚は細長く、リュウグウノツカイの稚魚に似ているが、背びれと腹びれが長く伸びないので区別される。やがて体が円盤状になり、成魚の姿へと変わってゆく』。二〇一五年五月に、『アメリカの海洋大気庁の研究チームにより、アカマンボウには魚類で唯一、血液の温度を保つ機能があることが確認された。アカマンボウには、心臓とえらの間に特殊な血管の絶縁網があり、心臓から送られた温かい血液が、えらが取り込んだ海水によって冷やされた血液を温めなおす体の作りをしている。これにより、アカマンボウは周辺の海水よりも』五『度ほど高い体温を保つことができるようになっており、深海でも活発な活動が可能とされ』、『これは哺乳類や鳥類と』、『ほぼ同じ体温維持の方法である』。『味がよく、食用にされ、ハワイや沖縄などでは珍重されている。アカマンボウは需要が低く、またその特異な体型から運搬、調理の際に一般的な規格(発泡スチロールやまな板の大きさなど)が通用しないため、専門に漁獲されることはないが、延縄などでマグロに混じって漁獲され』、『マグロのような赤身で食味も似ている』ことから、『日本ではマグロの代用魚として利用されている』。『調理については、腹側を刺身で、背側をムニエルなどの加熱調理用とすると良い』。『マンダイ、マンボウ、ヒャクマンダイ、金魚とも呼ばれている』。『南半球には Lampris immaculatus(英名:southern opah)という種類が分布している。全長』一メートル『ほどで、アカマンボウより小型である』。『アカマンボウ目には多くの魚が分類されるが、その中のアカマンボウ科には』一属二種』『しかいない』とある。

 なお、丹洲の「栗氏魚譜」にも本種の図が載る。優れた写本は旧澁澤敬三(渋沢栄一の嫡孫で日本銀行総裁を務めた)蔵品で、現在、国文学研究資料館蔵の「祭魚洞文庫旧蔵水産史料」のそれで、人間文化研究機構国文学研究資料館」「電子資料館」の「収蔵歴史アーカイブズデータベース」にある「栗氏魚譜 九」の「50・51・52」画像で閲覧でき、その人間文化研究機構国文学研究資料館データベース利用規程(PDF)に従えば、「オープンデータのタイトル」(上記太字部分)及び「人間文化研究機構国文学研究資料館」(上記太字リンク部分)と、「クリエイティブ・コモンズ表示 4.0 ライセンスCC BY-SA」(https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/deed.jaをクレジットすることで、非営利での画像の使用が可能であることから、以下に示すこととする。本図は巨大魚であり、それを示すために已む無く(以下のキャプション翻刻を参照)特殊なレイアウトとなっており、三組の見開き図からなっている。さらに、その余白箇所にはモノクロームで小型の全体図が示されているという、驚きの優れものである。まず、画像を示す。

 

0319_353

 

0319_354

 

0319_355

 

本図には、実は「52」の後、「53・54・55」で本「マンダイ」についての詳細にして厖大な解説が載るが、これは将来的に「栗氏魚譜」の電子化で翻刻することとして省略し、その最初のページのキャプションのみを以下に翻刻しておく。

 

□翻刻1(「栗氏魚譜 九」の「マンダイ」の冒頭にあるキャプション。原典そのまま。【 】は赤字で、写した人物が附したものと思われる。翻刻は本巻子本「魚譜」に準じた)

マンダイ 又名錦ダイ 又萬寳ダイト呼フ

又名萬年鯛ト云【三卷ニモ圖アリ】

 

脊ヒレ立テ上ニ向ヒ腹下ノ両鰭モ下ヲ指テ

彎曲セス此巻紙ナキユヘニ彎曲シテ図セ

リ全体ニモ丸ミアリ其状方ナルヤウニモ見

 

 

□翻刻2(概ね、カタカナをひらがなにし、句読点や記号・濁点、及び、推定で送り仮名や語句を添えて整序した)

「マンダイ」。又、「錦ダイ」と名づく。又、「萬寳ダイ」と呼ぶ。又、名づけて「萬年鯛」と云ふ【三卷にも圖あり。】。

脊びれ、立ちて、上に向かひ、腹下の両鰭も下を指して彎曲せず。此の巻、紙なきゆへに、彎曲して図せり。全体にも丸みあり。其の状、方(はう)なるやうにも見ゆ。

 

キャプション割注の「三卷にも圖あり」というのは、同じく、国文学研究資料館蔵の「祭魚洞文庫旧蔵水産史料」の人間文化研究機構「国文学研究資料館」の「電子資料館」の「収蔵歴史アーカイブズデータベース」にある「栗氏魚譜 三」先の私の記載で利用条件はクリアーされていると判断する)に載る「ベニダイ」と冒頭標題するもので、以下の画像である。左の別な魚の尾鰭と腹鰭の一部が出るが、トリミングをすると、加工要件を示す必要が発生するので、そのまま示した。

 

0319_138

 

このキャプションも電子化しておく。

 

□翻刻1(前に同じ。但し、「トモ」の約物は正字化した。【 】は同前でやはり原典は赤字)

ベニダイ【九卷ニモ図アリ】

 萬(マン)ダイトモ云極大ナ

 ルモノ長サ四尺許

 アリ百万ダイト云

 人誤テ百万歳ト呼

 瑞物トシテ珍賞ス

 ルモノ也

 

 

□翻刻2(前に同じ。〔 〕は私の添え字で、「也」は平仮名化した)

「ベニダイ」【九卷にも図あり。】。

「萬(マン)ダイ」とも云ふ。極大なるもの、長さ、四尺許りあり。「百万ダイ」と〔も〕云ふ。人、誤りて、「百万歳」と呼び、瑞物として珍賞するものなり。

 

なお、本図は荒俣宏氏の「世界大博物図鑑2 魚類」(一九八九年平凡社刊)の二一二~二一三ページに見開きで美しく載るので、機会があれば是非、ご覧戴きたい。そこで荒俣氏は『この人工的図像は西洋バロックの奇想をはるかに超越して』おり、『永遠の傑作といえよう』と絶賛されておられる。全く以って同感である。]
 

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