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2018/06/11

栗本丹洲自筆巻子本「魚譜」 方頭魚 (イラ)

 

Hanaoredai

 

方頭魚 異品

   ハナオレダイ

   外ハナオレ

   ト呼フモノアリ

   同名異物

《「方頭魚」 異品。

  「ハナオレダイ」。外に「ハナオレ」と呼ぶものあり。同名異物。》

[やぶちゃん注:国立国会図書館デジタルコレクションのこちら(「魚譜」第一軸)の画像の上下左右をトリミングして用いた。

 まず、キャプションの「方頭魚」であるが、これは既に名前として本魚譜には既出で、「【和名オキツダイ アマタイ】」と出て、そこで私は、その図の魚を、所謂、「グジ」、条鰭綱スズキ目スズキ亜目アマダイ科アマダイ属アカアマダイ Branchiostegus japonicus に同定したのであった。しかし、丹洲が添えているように、この体色はトンデモない「異品」である。私はこんな体色の「方頭魚」=アマダイ類はいないのではないかと思うのである(しかし、「方頭魚」という漢名が丹洲にとって、まずはまず、「グジ」=アマダイであったことは、実は次の図(実際にはこの図の真上にあり、尾は本図の魚より、前の方に突き出ているから、電子化している私の順序から言うと、それを先にするところなのであるが、以下の考証上、どうしてもこれを先にしなくてはならぬと私は考えたのであった)が「方頭魚」で、そちらの方は間違いなく、「グジ」=「アマダイ」属にしか見えないことから明白なのである)。

 次に「ハナオレダイ」であるが、この異名は実は現在も使われており、通常のそれは、やはりこれも、やはり「コダイ(キダイ 初めての「鯛」)」で同定した、スズキ目スズキ亜目タイ科キダイ属キダイ Dentex hypselosomus の異名なのであるが、リンク先のその図を見て貰うと判る通り、キダイは泰然とした、基、「鯛」然とした真正のタイの仲間で、凡そこの図にあるような、多色刷り見たような派手な色はしていないし、体型も明後日どころか、千日前ぐらい違うから、絶対にキダイではないことは、幼稚園生でも判る。そもそもが、ここで丹洲がわざわざ『外に「ハナオレ」と呼ぶものあり。同名異物』としたのは、これは世間で、一般に「ハナオレダイ」、及び、それとは異種の「ハナオレ」と呼ばれている魚とは「違う!」とはっきり思っているから、わざわざ、こんなことを書き添えたのだと私は思う。

 則ち、言ってしまうと、ここまでで、キャプションの「方頭魚」も「ハナオレダイ」も「ハナオレ」も総て、同定比定には殆んど役立たないものであると考えた方がよいということを意味しているということである。

 但し、「異品」は大事な表現だと私はハッと思ったのだ!

 何故か?

 この前回に出した魚の図を思い出して貰いたいのだ。

 前回の「アマタイ(アカアマダイ? イラ?)魚の図は、まさに本魚の前(尾鰭の後ろ位置)に、同じ高さ・同じ大きさで描かれているのである(但し、貼り込みであって、連続した紙に描かれたものではない。国立国会図書館デジタルコレクションの画像のコマ10コマを見て戴きたい)が、そこでそれぞれの魚の画像を、並べて画面に示して貰いたいのである。と、本記事の画像のこれだ(★両方を別ウィンドウで開いて並べてみて!)。

 どうです? 色を問題にしないなら、頭の形とか極似だし、全体の体つきもよく似ているのである。

 さて、そこで、です。私は前回の「アマタイ」とキャプションのある魚を「アカアマダイ」か? 或いは「イラ」か? として、投げ出していたのを思い出して欲しいのである。アマダイは既に出たからいいとして、「イラ」は魚フリークか魚釣りをする人でないと判らないだろう。この子は、

スズキ目ベラ亜目ベラ科タキベラ亜科イラ属イラ Choerodon azurio

でアマダイとは科のレベル(タクソン)で異なる魚で、「伊良・苛魚」などと漢字表記する、本州中部地方以南・台湾・朝鮮半島・東及び南シナ海に棲息する魚である。ウィキの「イラによれば、全長は約四十~五十センチメートルで、『体は楕円形でやや長く、側扁』する。『また、イラ属はベラ科魚類の中では体高が高』く、『額から上顎までの傾斜が急で、アマダイを寸詰まりにしたようである』(これと以下が本図と完全に合致する点に注意で、しかもこの筆者は種としては縁のすこぶる遠い「アマダイ」を引き合いに出していることにも注意して貰いたいのである)。『老成魚の雄は前額部が隆起・肥大し』、『吻部の外郭は垂直に近くなる』。『アマダイより鱗が大きい』(またまた縁も所縁もないアマダイが出てきた! ということは、ですよ、イラはアマダイとは無縁な魚なのに見た目はアマダイに似ているということなのですよ!)。『側線は一続きで、緩やかにカーブする』『前鰓蓋骨の後縁は細かい鋸歯状となる』(これは本図の方ではっきりと見られる!)。『前部に最低』一『対の大きな犬歯状の歯(後犬歯』『)がある』(本図の口元見てみて!!)。『側線は一続』『尾鰭後縁はやや丸い』(これも本図と一致する)。『体色は紅褐色』『から暗紅色で腹側は色が薄く』(本図と一致!)、『尾鰭は濃い』。『口唇は青色』(本図と一致!)『で、鰭の端は青い。背鰭と腹鰭、臀鰭は黄色。背鰭棘部の中央から胸鰭基部にかけ、不明瞭で幅広い黒褐色の斜走帯が走る』。『その帯の後ろを沿うように白色斜走帯(淡色域』『)がある』(本図とモロ一致!!!)。『幼魚にはこの斜走帯はない』。『雌雄の体色や斑紋の差が大きい』とある。そうして、最後の「名前」(異名)の項を見ると、『名前からテンスやアマダイ、ブダイ、カンダイと混同されていることがわかる』として(注記号を消去した)、『アマ(和歌山県太地町)、アマダイ(甘鯛)』、『イソアマダイ(和歌山県)(磯甘鯛)』、『オキノアマダイ(沖甘鯛)』『(東京)』、『クジ』『(静岡県沼津)』が挙げられてあるのだ。則ち、現在でも「イラ」は「アマダイ」「グジ」と呼ばれている地方が有意にあるのである。

 最後にWEB魚図鑑の「イラ」写真を見なはれ! 本図の魚は間違いなく、「イラ」でんがな! この子ら、なんや、えらい、可愛いなあ!

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