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2018/08/24

大和本草卷之十三 魚之上 鰧魚 (ビワマス)

 

鰧魚 本草綱目鱖魚ノ附錄ニノセタリ鱖ノ類也トイ

 ヘリサケニ似テ味ヨシ琵琶湖ニ多シ鯇ヲアメノウヲト

 訓ス未是

○やぶちゃんの書き下し文

鰧魚(アメノウヲ) 「本草綱目」、「鱖魚」の「附錄」にのせたり。鱖の類なりといへり。「サケ」に似て、味よし。琵琶湖に多し。鯇を「アメノウヲ」と訓ず。未だ是(ぜ)とせず。

[やぶちゃん注:何か、杜撰な書き方である。益軒の言う「鮭」「に似て」「味」がよく、「琵琶湖に多」くて、『「アメノウ」オ』と呼ばれていると言う部分なら、これはもう、文句なしに、琵琶湖にのみ棲息する本邦固有種である、条鰭綱サケ目サケ科サケ亜科タイヘイヨウサケ属サクラマス(ヤマメ)亜種ビワマス Oncorhynchus masou rhodurus ということになる。ウィキの「ビワマスによれば、『産卵期には大雨の日に群れをなして河川を遡上することから、アメノウオ(雨の魚、鯇、鰀)ともよばれる』。『体側の朱点(パーマーク)は、体長』二十センチメートル『程度で消失し』、『成魚には見られない。成魚の全長は』四十~五十センチメートルほどであるが、大きい個体では全長七十センチメートルを『超えることもある。サクラマス』(Oncorhynchus masou masou の内で、降海型の個体群)『と同じくヤマメ』(Oncorhynchus masou masou の内で、降海せずに一生を河川で過ごす河川残留型(陸封型)個体群)『の亜種であり、DNAの特徴も外観もサクラマスに近いが、サクラマスよりも眼が大きいことと、側線上横列鱗数が』二十一~二十七で、『やや少ない事で見分けられる。琵琶湖固有種だが、現在では栃木県中禅寺湖、神奈川県芦ノ湖、長野県木崎湖などに移殖されている。また、人工孵化も行われている』。『他のサケ科魚類と同様』、『母川回帰本能を持つため、成魚は』十月中旬から十一月下旬に『琵琶湖北部を中心とする生まれた川に遡上し、産卵を行う。餌は、主にイサザ、スジエビ、アユを捕食している』。『産卵の翌春』に『孵化(浮上)した稚魚は』、『サケ類稚魚によく見られる小判型のパーマークと、アマゴに似た赤い小さな朱点がある。約』八センチメートル『に成長すると』、『スモルト化』(Smolt:サケ・マス類に於いてパーマークなどの特有の体色が薄くなるとともに全体に銀色になった個体を指す。「銀毛(ぎんけ)」「シラメ」とも呼ばれる。ヒポキサンチンやグアニンなどの色素量の増加が外観上の変化を起こしたもので、これは同時に海水への適応が完了した稚魚の特徴でもある)し、『体高が減少すると』とも『に体側と腹部が銀白色となる。但し、ビワマスの特徴として』アマゴ(サツキマス Oncorhynchus masou ishikawae の内の陸封型個体群)より四センチメートル『程度小さくスモルト化し』、『パーマークは完全に消失せず』、『朱点も残る個体が多い』。『スモルト化した個体は』五月から七月に『川を下って琵琶湖深場の低水温域へ移動し、コアユやイサザ等の小魚、エビ、水生昆虫等を捕食しながら』二年から五年『かけて成長する。小数の雄はスモルト化せずに川に残留する』。『生育至適水温は』摂氏十五度『以下とされ、中層から深層を回遊する。孵化後』、一年で十二~十七センチメートルとなり、四年経つと四十~五十センチメートルに『成長する。産卵期が近づくと、オス・メスともに婚姻色である赤や緑の雲状紋が発現し、餌を取らなくなる。オスは特に婚姻色が強く現れ、上下の両顎が口の内側へ曲がる「鼻曲がり」を起こす。メスは体色がやや黒ずむ。川への遡上は』九月から十一月で、『産卵が終わると』、『親魚は寿命を終える。なお、琵琶湖にも近縁亜種のアマゴが生息』『しており』、『本種と誤認されている場合もある』。『琵琶湖産稚アユと混獲され』、『各地の河川に放流されていると考えられるが、下降特性が強い事と海水耐性が発達しないことから、放流先での定着は確認されていない』という。『生態は湖沼陸封期間が』十『万年と長かったことから、サツキマス(アマゴ)と比較すると』、『海水耐性が失われ』ており、『スモルト化した個体でも海水耐性は発達せず』、純『海水では死滅』してしまう。『遺伝子解析の結果ではサクラマスよりはサツキマスに近く、サクラマスとサツキマスの分化以降に』、『ビワマスとサツキマス(アマゴ)は分化している。つまりサツキマス(アマゴ)との共通祖先のうち』、『淀川水系を利用していた個体群が陸封され、ビワマスとなった』ものである、とある。

 ところが、問題は益軒がしょっぱなから「本草綱目」の「鱖魚」の「附錄」のそれを持ち出したのが、どうもギクシャクする(感じが私にはする)こととなる。既に「鱖魚」で引いているが、再掲すると、

   *

附錄鰧魚 時珍曰、按「山海經」云、洛水多鰧魚。狀如鱖、居于逵、蒼文赤尾、食之不癰、可以治瘻。郭注云、鰧音滕。逵乃水中穴道交通者。愚按、鰧之形狀居止功用俱與鱖、同亦鱖之類也。日華子謂、鱖爲水豚者、豈此鰧與。

   *

である。何故、ギクシャクすると私が言うか? 「鱖魚」の注で述べた通り、益軒の考える「鱖魚」は条鰭綱原棘鰭上目サケ目サケ科サケ属サケ(又はシロザケ)Oncorhynchus keta であるにしても、「本草綱目」の「鱖魚」というのが、現代中国語では全く別種の、鰭上目スズキ目スズキ亜目 Percichthyidae 科ケツギョ属ケツギョ Siniperca chuatsi を指し、「本草綱目」のそれは、サケではない可能性さえ孕んでしまっているからである。

 さらにややこしやなことに、「鰧」は本邦では海産のゴッツう怖い(が美味い)条鰭綱新鰭亜綱棘鰭上目カサゴ目カサゴ亜目フサカサゴ科(或いはオニオコゼ科)オニオコゼ亜科オニオコゼ属オニオコゼ Inimicus japonicus を筆頭としたオコゼ類を指すのである。といより、正直、益軒がどうして「鰧魚」に「アメノウヲ」のルビを当てたのかも実はさっぱり判らんのである。

 しかもそれに加えて益軒は、言わんでもええのに、最後に『鯇を「アメノウヲ」と訓ず。未だ是(ぜ)とせず』などと言い添えて、話を宙ぶらりんにして終わってしまっているのである。何故、言わんでもいいと私が言うか? それは、「鯇」が琵琶湖固有種である「アメノウオ」=「ビワマス」であろうはずは百%ないことに加えて、「鯇」が、これまた、現代中国語では、全くの別種で、しかも中国では「四大家魚」(他にコイ科 Oxygastrinae 亜科アオウオ(青魚)属アオウオ Mylopharyngodon piceus・コイ科ハクレン(白鰱)属ハクレン Hypophthalmichthys molitrix・コイ科ハクレン属コクレン(黒鰱)Hypophthalmichthys nobilis)の一種として古くから好んで食べられる著名な、条鰭綱骨鰾上目コイ目コイ科 Oxygastrinae 亜科ソウギョ(草魚)属ソウギョ Ctenopharyngodon idellus を指すからなのである。正直、益軒先生には、ごくすっきりと、

   *

雨ノ魚 サケニ似テ味ヨシ琵琶湖ニ多シ鯇ヲアメノウヲト訓スハ未ダ是トセズ

   *

でやめて欲しかったのである。]

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