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« 反古のうらがき 卷之一 飛物 | トップページ | 大和本草卷之十三 魚之上 鱖魚 (サケ) »

2018/08/22

大和本草卷之十三 魚之上 鯽 (フナ)

 

鯽 一名鮒本草曰鮒魚泥食雜物不食冬月肉厚

 子多尤美呂氏春秋云魚之美者有洞庭之鮒日

 本ニテ近江鮒ヲ賞スルカ如シ近江鮒ハ肩廣ク味尤

 美シ他邦ニ異ナリ凡鮒ハ鯉ニツギテ上品ナリ性亦

 温補シ下血ヲ治ス燒テ食ヒ煮テ食ス脾胃ヲ峻

 補ス有宿食及滯氣人不可食氣ヲ塞ク大ナルヲ丸

 ナカラ煮タルハ尤氣ヲ塞ク薑椒ヲ加フヘシ丹溪曰

 鯽属土有調胃實腸之功〇本草曰脾胃虚冷不

 食ニ鯽魚ノ肉ヲ切テ豉汁ノ沸タルニ投シ胡椒茴香薑

 橘ノ末ヲ入テ食フコレヲ鶻突羹ト云今案味曾汁

 尤ヨシ又本草ニ酒ニテ煮テ食ヘハ酒積下血ヲ治ス

 又痔血下ルニ鯽ノ羹ヨシトイヘリ小兒ノシラクボ頭ニ

 アルニフナノ黑燒ヲ醬油ニテツクル〇魚 タナゴト

 云京都ノ方言也鯽ノ赤キ所アルモノ也筑紫ニテ◦シ

 ノナと云淀川ニ多シ關東ニテ苦鮒ト云海魚ニモタ

 ナゴアリソレトハ別也同名異物也○膳夫錄曰膾莫

 先于鯽魚膾ノ魚ノ第一トストナリ

○やぶちゃんの書き下し文[やぶちゃん注:一部に改行を施した。]

鯽〔(フナ)〕 一名「鮒」。「本草」に曰はく、『鮒魚、泥食〔(でいしよく)〕して雜物を食さず。冬月、肉、厚く、子、多し。尤も美〔(うま)し〕。「呂氏春秋」に云はく、「魚の美なる者は、洞庭の鮒〔に〕有り」〔と〕』〔と〕。日本にて近江鮒を賞するがごとし。近江鮒は、肩、廣く、味、尤も美し。他邦に異なり。凡そ鮒は鯉につぎて上品なり。性、亦、温補し、下血を治す。燒きて食ひ、煮て食す。脾胃を峻補す。宿食及び滯氣有る人、食ふべからず。氣を塞ぐ。大なるを、丸ながら煮たるは、尤も氣を塞ぐ。薑椒(はじかみ)を加ふべし。丹溪曰はく、『鯽は土に属す。胃を調へ、腸を實〔(みの)〕るの功、有り』〔と〕。

〇「本草」に曰はく、『脾胃虚冷〔にして〕不食〔なる〕に〔は〕、鯽魚の肉を切りて豉汁〔(みそしる)〕の沸〔(わき)〕たるに投じ、胡椒・茴香(ういきやう)・薑〔(はじかみ)〕・橘〔(たちばな)〕の末を入れて食ふ。これを「鶻突羹〔(こつとつこう)〕」と云ふ。今、案ずるに、味曾汁、尤もよし。又、「本草」に、『酒にて煮て食へば、酒積〔(しゆしやく)〕・下血を治す。又、痔血、下るに、鯽の羹〔(あつもの)〕よし』といへり。小兒の「シラクボ」、頭にあるに、「フナ」の黑燒を醬油にて、つくる。

魚 「タナゴ」と云ふ。京都の方言なり。鯽の赤き所あるものなり。筑紫にて「シノナ」と云ふ。淀川に多し。關東にて苦鮒〔(ニガブナ)〕と云ふ。海魚にも「タナゴ」あり、〔然れども〕それとは別なり。同名異物なり。○「膳夫錄」に曰く、『膾は、鯽-魚〔(フナ)〕より先なる〔は〕莫〔(な)〕し。膾の魚の第一とすとなり。

[やぶちゃん注:条鰭綱骨鰾上目コイ目コイ科コイ亜科フナ属 Carassius のフナ類。本邦産種は概ね以下。但し、ウィキの「フナ」によれば、『フナは生物学的な分類が難しいとされている魚のひとつである。姿・形・色だけで種を判別することはできないため、初心者が種類を見分けることは困難である。例えば、日本社会においては、「フナ」と呼ばれる魚は慣例的に細かい種類に呼び分けられている。しかし、その「種類」がそれぞれ生物学的に別種か、亜種か、同じ種なのかはいまだに確定されていない。なお、俗に言う「マブナ」はゲンゴロウブナと他のフナ類を区別するための総称で、マブナという』種は存在しないとある。

・ギンブナ Carassius auratus langsdorfi

全長三十センチメートルほど。日本・朝鮮半島・中国にかけて分布する。ほぼ全てがで、無性生殖の一種である雌性発生によってクローン増殖することが知られている。

・キンブナ Carassius auratus ssp.2 (「ssp.」は「subsp.」とも書き、「subspecies」の略。「亜種」の意)

本邦の関東地方・東北地方に分布する。全長は十五センチメートルほどで、日本のフナの中では最も小型である。名の通り、体が黄色っぽく、ギンブナよりも体高が低い。

・オオキンブナ Carassius auratus buergeri

日本西部と朝鮮半島に分布する。全長四十センチメートルほど。名の通り、キンブナに似るが、大型になる。近年では人為放流されたものか、関東方面でも見られるようになっている。

・ゲンゴロウブナ Carassius cuvieri

琵琶湖固有種。全長四十センチメートルほど。体高が高く、円盤型の体型を成す。植物プランクトンを食べるため、鰓耙(さいは:硬骨魚類の鰓弁の反対側にある櫛状の器官。吸い込んだ水の中から餌である小さなプランクトンを濾し採る役割を果たす)が長く発達し、数も多い。釣りの対象として人気があり、現在では日本各地に放流されている。本条の「近江鮒」は本種を指していると思われる。なお、一般に知られるヘラブナ(箆鮒)とはこのゲンゴロウブナを品種改良したもの。

・ニゴロブナ Carassius auratus grandoculi

琵琶湖固有種。全長三十センチメートルほど。頭が大きく、下腮(したあご)が角ばっているのが特徴である。滋賀県の郷土料理で、私の大好物である鮒寿司に使われることで知られるが、現在、絶滅危惧IB類に指定されてしまった。漢字表記は「煮頃鮒」「似五郎鮒」。本条の「近江鮒」には本種も含まれていると考えた方が自然である。

・ナガブナ Carassius auratus ssp. 1

諏訪湖周辺に分布。全長二十五センチメートルほど。名の通り、体高が低くて幅が厚く、円筒形に近い体型を成す。また、体に対し、頭と目が大きいのも特徴で、体色がやや赤っぽいことから、「アカブナ」とも呼ばれる。

「呂氏春秋」(りょししゅんじゅう)は秦の百科全書的史論書。「呂覧」とも呼ぶ。秦の呂不韋編。全二十六巻。成立年未詳であるが、その大部分は戦国末の史料と想定されている。孔子が編したとされる五経の一つ「春秋」に倣い、呂が当時の学者を集めて作成させたとされる。そのため、全体的な統一を欠き、儒家・道家・法家・兵家・陰陽家などの諸説が混在している。しかし、中国古代史の研究上貴重な文献であることは言を俟たない(以上は「ブリタニカ国際大百科事典」に拠った)。

「峻補」(しゅうほ)は補益効果が非常に強いことを意味する。

「宿食」(しゅくしょく)は飲食物が胃腸に停滞してしまう病証を指す。「食積」「傷食」「宿滞」などとも称し、食べ過ぎ或いは脾虚を原因とし、上腹部の脹痛・酸臭のあるゲップ・悪心・食欲不振・便秘或いは下痢を主症状とし、悪寒・発熱・頭痛などを伴うこともある。

「滯氣」気の流れが停滞したために起こる病的状態。自律神経・精神・呼吸などに変調を来たす。

「薑椒(はじかみ)」生姜。

「丹溪」元代の医師朱震亨(しゅしんこう 一二八一年~一三五八年)の号。初め、儒学を学んだが、後に医学に転じ、李杲(りこう:号は東垣)の系統の医学を学んだ。後に李杲と併称されて「李朱医学」と呼ばれた。著書に「局方発揮」「格致餘論」「丹溪心方」などがある。但し、以下の「鯽は土に属す。胃を調へ、腸を實〔(みの)〕るの功、有り」という引用は、思うに、明の楊慎撰の「異魚圖贊箋卷一」の「鯽魚」の『李時珍云、「鯽喜猥泥不食雜物。故能補胃。冬月肉厚、子多其味尤美」。丹溪云、「諸魚屬火、獨、鯽魚屬土。有調胃實腸之功。但多食亦能動火』からの孫引きではないかと私はちょっと疑っている

「腸を實〔(みの)〕るの功」どうもピンとこないが、これ例外の読みが打てない。要は腸の状態を充実させるの意ではあろう。

「茴香(ういきやう)」かのスパイスやハーブとして知られるセリ目セリ科ウイキョウ属ウイキョウ Foeniculum vulgare

「鶻突羹〔(こつとつこう)〕」益軒は「養生訓」でも、『鶻突羹は鮒-魚(ふな)をうすく切(きり)て、山椒など、くはへ、味噌にて久しく煮たるを云(いふ)。脾胃を補ふ。脾虛の人・下血(げけつ)する病人などに宣(よろ)し。大(おほき)に切(きり)たるは氣をふさぐ。あしゝ』と述べている。

「酒積〔(しゆしやく)〕」酒による肝臓疾患。

「シラクボ」「白癬(はくせん)」のこと。「禿瘡」等とも漢字表記する。多く幼小児の頭皮に出来る糸状菌感染による皮膚病。硬貨大の円形斑が次第に拡大し、灰白色に変色して乾燥し、頭髪が抜ける。

「つくる」「傅(つ)くる」。貼り付ける。

魚」「タナゴ」コイ科亜科タナゴ亜科 Acheilognathinae のタナゴ類。模式種はタナゴ属タナゴ Acheilognathus melanogaster。模式種でウィキの「タナゴから引用しておくと、『日本固有種で、本州の関東地方以北の太平洋側だけに分布する。分布南限は神奈川県鶴見川水系、北限は青森県鷹架沼とされ、生息地はこの間に散在する。各地で個体数が激減しており、絶滅が危惧される状況となっている』。体長は六~十センチメートル。『タナゴ類としては前後に細長く、日本産タナゴ類』十八『種のうちで最も体高が低いとされる。体色は銀色で、肩部には不鮮明な青緑色の斑紋、体側面に緑色の縦帯、背鰭に』二『対の白い斑紋が入る。口角に』一『対の口髭がある』。『繁殖期になると』、は鰓蓋から胸鰭にかけて、薄いピンク色を呈する一方、『腹面は黒くなり、尻鰭の縁に白い斑点が現れる。種小名 melanogaster は「黒い腹」の意で』の婚姻色に由来する。には明らかな婚姻色は発現せず、基部が褐色を呈しており、先端には『灰色の産卵管が現れる』。『湖、池沼、川の下流域などの、水流がないか』、『緩やかで、水草が繁茂する所に生息する。食性は雑食で、小型の水生昆虫や甲殻類、藻類等を食べる』。『繁殖形態は卵生で、繁殖期は』三~六月で、『産卵床となる二枚貝には大型の貝種を選択する傾向がみられ、カラスガイやドブガイに卵を産みつける。卵は水温』摂氏十五度前後では五十時間ほどで『孵化し、仔魚は母貝内で卵黄を吸収して成長する。母貝から稚魚が浮出するまでには』一『ヶ月ほどかかる。しかしそのような貝もまた減少傾向にあることから』、『個体数の減少に拍車をかけている』。『河川改修や圃場整備といった開発にともない、産卵床となる二枚貝類とともに多くの生息地が破壊された。また、ブラックバス・ブルーギルによる食害やタイリクバラタナゴとの競合といった外来魚の圧迫を受けており、各地で生息数が激減している。観賞魚として商業流通するため、業者による乱獲も脅威である』。『関東地方の生息地は近年特に減少している。分布南限の神奈川県ではすでに絶滅し、東京都でも同様とみられ、現在のまとまった生息地は霞ヶ浦水系と栃木県内の一部水域のみである。霞ヶ浦では環境改変や外来魚の食害で減少が続いており、生息密度がかなり希薄になっている』。現在、本種も絶滅危惧IB類となってしまった。「」は恐らく体型の曲線が櫛を連想させることに由るものと推定される。

「鯽の赤き所あるものなり」前注の下線太字部を参照。

『筑紫にて「シノナ」と云ふ』思うに、これは「シブナ」の彫り損ないではないか。実際、調べてみると、大分県日田市(ひたし)サイト日田の自然の「日田の自然(小さな魚 カゼトゲタナゴ)に(「郷土日田の自然調査会」の文責表示がある)、『こどものころ、近くの小川で魚とりをすると、紅や緑の色鮮やかな小さい魚が網の中で、跳び跳ねていたのを想い出す人も多いと思います』。『この小型の魚は日田地方の方言で、シビンタとかシブナと呼ばれるコイ科のタナゴ属で、三隈川や花月川流域に五種類が分布しています。このタナゴの仲間で最も小型のカゼトゲタナゴは、九州北西部の河川にしか分布していない九州特産魚です』とあるからである。コイ科バラタナゴ属カゼトゲタナゴ Rhodeus smithii smithii は日本固有亜種で、九州の北部から中部(佐賀県・福岡県・熊本県)及び壱岐島(長崎県)にのみ分布している(但し、中国浙江省にもよく類似するものが生息しているので、分類学的な再検討が必要とされる)。分布南限は熊本県八代市の球磨川で、模式産地(原記載標本の産地)は筑後川であるとウィキの「カゼトゲタナゴにある。而して、この「シビンタ」「シブナ」という名を見つめていると、確信が湧いてくるのを覚えた。ウィキの「タナゴ亜科によれば、『タナゴ類はフナ・モツゴ・モロコなどとともに一般的にみられる淡水魚で、地域ごとにさまざまの種類や地方名(方言)がある。地方名には、ニガブナ(日本各地)、ボテ(琵琶湖周辺)、ベンチョコ(福岡県)、シュブタ(筑後川流域)、センパラ(濃尾平野)などがある。「ニガブナ(苦鮒)」という呼称は、食べると苦味があることに由来する。これはタナゴの英名"Bitterling"(苦い小魚)にも共通する』とあり(鮒も苦味がある)、「シブナ」とは「渋い鮒」「渋鮒(シブブナ)」の転訛ではないかと思い至ったのである。

『海魚にも「タナゴ」あり、〔然れども〕それとは別なり。同名異物なり』棘鰭上目スズキ目ウミタナゴ科ウミタナゴ属ウミタナゴ亜種ウミタナゴ Ditrema temmincki temmincki。体型がタナゴ類に似ていることからの和名であるが、全く類縁関係はない海産魚である。特に胎生で知られる。

「膳夫錄」唐の鄭望之の撰になる食譜。元末明初の学者陶宗儀の編した「説郛(せっぷ)」(早稲田大学図書館古典総合データベースの)に載るそれで原文を確認出来た。]

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