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2018/10/31

萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 くさつた蛤

 

  くさつた蛤

 

半身は砂のなかにうもれてゐて、

それで居てべろべろ舌を出して居る。

この軟體動物のあたまの上には、

砂利や潮(しほ)みづが、ざら、ざら、ざら、ざら流れてゐる、

ながれてゐる、

ああ夢のやうにしづかにもながれてゐる。

 

ながれてゆく砂と砂との隙間から、

蛤はまた舌べろをちらちらと赤くもえいづる、

この蛤は非常に憔悴(やつ)れてゐるのである。

みればぐにやぐにやした内臟がくさりかかつて居るらしい、

それゆゑ哀しげな晚かたになると、

靑ざめた海岸に坐つてゐて、

ちら、ちら、ちら、ちらとくさつた息をするのですよ。

 

[やぶちゃん注:底本は面白い。四行目の四つの読点が例のような奇妙な間の抜けた字空けがなく、寧ろ、タイトに詰めに詰めて、それぞれの下の「ざら」の濁点に、それこそくっかんばかりなっているのである。ところが、最終行の「ちら」の下の読点は、いつも通り、阿呆みたような空隙を三箇所総てが持っているのである。この奇体な組版は、結局、四行目の位置が九十三ページ最終行(左ページ)に当たり、例の調子で読点をやらかすと、四行目が二行に渡らざるを得なくなり、そのはみ出た分が、見返しの次の九十四ページの頭に送られて詩篇としてのリズムが著しく阻害される(と朔太郎が考えた)からであろうと推理出来る。本篇は本詩集が初出でもあり、朔太郎はかなり気を使った、ということであろう。]

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