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2019/01/14

萩原朔太郞 靑猫(初版・正規表現版) 最も原始的な情緖

 

  最も原始的な情緖

 

この密林の奧ふかくに

おほきな護謨(ごむ)葉樹のしげれるさまは

ふしぎな象の耳のやうだ。

薄闇の濕地にかげをひいて

ぞくぞくと這へる羊齒(しだ)植物 爬蟲類

蛇 とかげ ゐもり 蛙 さんしようをの類。

 

白晝(まひる)のかなしい思慕から

なにをあだむが追憶したか

原始の情緖は雲のやうで

むげんにいとしい愛のやうで

はるかな記憶の彼岸にうかんで

とらへどころもありはしない。

 

[やぶちゃん注:大正一〇(一九二一)年十二月号『表現』初出。初出は以下。「あだむ」は傍点であるが、大きな「●」である。

   *

 

  最も原始的な情緖

 

この密林の奧ふかくに

巨大な護謨葉樹(ごむえふじゆ)のしげれるさまは

ふしぎな象の耳のやうだ。

薄やみの濕地に影をひいて

ぞくぞくと這へる羊齒(しだ)植物、爬蟲類

蛇、蜥蝪、蛙、蠑螈(ゐもり)、山椒魚(さんしようを)の類。

 

白晝(まひる)の悲しい思慕から

なにをあだむが追憶したか

原始の情緖は雲のやうで

無限にいとしい愛のやうで

はるかな記憶の彼岸にうかんで

捉へどころもありはしない。

 

   *

 「定本靑猫」は有意な異同は認めない。

 この一篇、直前の空」に続いて如何にも表現主義的な印象であるが、それ以上に、表現主義の「青騎士」第一回展に参加したこともある一人(但し、彼は「表現主義」という区分的思潮では到底、括りきれない)である、かのフランスの画家アンリ・ジュリアン・フェリックス・ルソー(Henri Julien Félix Rousseau 一八四四年~一九一〇年)の一連の優れた森林幻想の作品群、Le lion, ayant faim, se jette sur l’antilope(ライオンは、飢えていて、アンテロープに襲いかかる」一八九八年~一九〇五年)・La Charmeuse de serpents(「蛇使い」一九〇七年)・Le Rêve(「夢」一九一〇年)などが素材となっているのではないかと私は強く思う(リンク先は総て仏文のウィキの当該の絵の画像)。]

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