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2019/01/05

和漢三才圖會卷第四十四 山禽類 鸞(らん) (幻想の神霊鳥/ギンケイ)

 

Ran

 

らん

鸞【音鑾】

 

三才圖會云鸞神靈之精也赤色五采鷄形鳴中五音其

雌曰和雄曰鸞其血作膠可續弓弩琴瑟之弦或曰鸞鳳

之亞也鳳久則五采變易人君進退有度則至

△按青鸞近世自外國來畜之樊中以弄其麗色狀小於

 孔雀大於雉形類雉而采毛似孔雀頭灰色帶紫頂後

 有毛角眉頰淺赤似雉頸臆紫黃似虎彪腹灰黑帶赤

 有白紋背黃有紫斑翮上亦黃有灰黑斑羽紫黑有翠

 白圓紋或二三重或有青紅畫紋尾長者一二莖七八

 尺許灰青色兩端有紫毛上有翠白小星文如鋪砂短

 尾五六莖三四尺許而灰青色帶紫上有翠白小星文

 如砂子也觜如雉而黃色脛掌亦如雉而紅色其雌者

 黃冠黃頭黃腹皆色淡有黑斑頸紫有黑斑翅紫黑有

 黃白文尾如番蕉葉一尺許黃白有黑紋黃觜紅脛孕

 於樊中而伏卵者少矣故其類不蕃【近頃載于本朝食鑑甚詳】

 

 

らん

鸞【音、「鑾〔(ラン)〕」。】

 

「三才圖會」に云はく、『鸞、神靈の精なり。赤色、五采の鷄〔(にはとり)〕の形。鳴くこと、五音〔(ごいん)〕に中〔(あた)〕る。其の雌を「和」と曰〔(い)〕ひ、雄を「鸞」と曰ふ。其の血、膠〔(にかは)〕に作り、弓弩〔(きうど)〕・琴瑟〔(きんしつ)〕の弦を續くべし。或いは曰はく、「鸞は鳳の亞(つぎ)なり。鳳、久しくするときは、則ち、五采、變-易〔(かは)〕る。人君〔(じんくん)〕の進退、度〔(ど)〕、有れば、則ち、至る」〔と〕』〔と〕。

△按ずるに、青鸞、近世、外國より來たり、之れを樊〔(かご)〕の中に畜〔(か)〕ふて、以つて其の麗色を弄〔(もてあそ)〕ぶ。狀〔(かたち)〕、孔雀より小さく、雉より大なり。形、雉の類〔(たぐひ)〕にして、采毛、孔雀に似たり。頭、灰色にして紫を帶ぶ。頂、後ろに、毛の角、有り。眉・頰、淺赤〔にして〕雉に似たり。頸・臆〔(むね)〕、紫黃〔にして〕虎彪(とらふ)に似て、腹、灰黑、赤を帶び、白紋有り。背、黃に紫斑有り。翮〔(はがひ)〕の上も亦、黃に灰黑の斑、有り。羽、紫黑〔にして〕翠白〔の〕圓紋有り。或いは、〔その〕二、三重〔か〕、或いは青紅〔の〕畫〔(か)き〕紋、有り。尾の長き者、一、二莖〔ありて〕、〔おのおの〕七、八尺許り。灰青色。兩の端、紫〔の〕毛有り、〔その〕上に翠白の小さい星の文〔(もん)〕、有り、砂を鋪(し)くがごとし。短き尾、五、六莖〔ありて〕、三、四尺許りにして灰青色、紫を帶ぶ。〔これも〕上に翠白の小さき星の文、有りて砂子のごとし。觜、雉のごとくにして、黃色。脛・掌も亦、雉のごとくにして紅色。其の雌は黃なる冠〔(さか)〕、黃なる頭、黃なる腹、皆、色、淡(うす)く、黑斑有り。頸、紫〔にして〕黑斑有り。翅、紫黑〔にして〕黃白の文、有り。尾、番蕉(そてつ)〔の〕葉〔(は)〕のごとく、一尺許り、黃白〔にして〕黑紋有り。黃なる觜、紅〔き〕脛。樊中に孕みて卵を伏(かへ)すは少しなり。故に、其の類、蕃(をほ[やぶちゃん注:ママ。])からず【近頃、「本朝食鑑」に載せ、甚だ詳らかなり。】

[やぶちゃん注:ネット上の記載は、ひどく不全なものが多いのに甚だ呆れる。何が不全かと言えば、大上段に振りかぶって、「和漢三才図会」では実在の鳥としている、と始めにやらかしているものばかりだからである。読めば分かる通り、寺島良安はここで、明の王圻(おうき)の類書(百科事典)「三才図会」著をまず引くが、それは中国の本草書の内容を掲示しただけであって、それを良安はその通りだなどとは一言も言っていない良安が実在するとする「鸞」を良安自身が神霊の精が鳥となったものであると信じてなどいないし、その血から、弓や弩(おおゆみ:(音「ド」)和弓と異なり、立てずに、横倒しにした弓(「翼」と言う)に弦を張り、木製の台座(「臂」或いは「身」と言う)の上に矢を置き、引き金(「懸刀」と言う)を引く事によって矢や石などが発射されるクロスボウ(crossbow)風の大型のもの。この引き金の機構全体を「機」と言い、初期は剥き出しのまま「臂」に埋め込まれてあったが、後には「郭」という部位に格納され、それが「臂」に埋め込まれるようになった)或いは琴(キン:中国の古形のもの(但し、それが現在の琴(筝)に進化した)。初期は十弦ほどあったようだが、中国の戦国時代末期には七弦となった。和琴(わごん)の初期は六弦であるが、現行の本邦の通常の琴(こと)は七弦である)や瑟(シツ:中国古代の弦楽器の一。箏に似ているが、遙かに弦が多く「大琴」等とも表記される。通常の瑟は二十五弦)の弦と本体部の接着剤となることを実際に実在する「鸞」の血液を採取してやって立証したわけでもなんでもないのに、そういう謂いはないだろう、と言いたいのである(因みに、実在するある鳥の血液から膠が出来るとも私は思わない。鳥皮や腱や骨を煮詰めたゼラチンなら可能であろうとは推測するけれども)。則ち、「三才図会」の引用部は実在しない〈幻想の神霊鳥〉であり、良安の評言部は「鸞」を漢名・和名に当てた幻想でも何でもない、実在する鳥を記述しているのであって、良安は「幻想の神霊鳥である鸞は実在する!」などと鬼の首捕って語ってなどいないのだ。「和漢三才図会」の書式方法も良安の中国本草書へのアプローチの仕方(かなり杜撰な部分はある)も知らずに、原文さえも見もしないで、『「和漢三才図会」は「鸞」を実在の鳥としている』と〈まことしやかに大嘘をつく〉表現が活字本も含めて、致命的に蔓延しているのである。おかしいだろ?! 諸君!

 ともかくも腹を鎮める。では、良安は「鸞」を現在のどの種に同定比定しているのか? まず、

南蛮貿易で「近頃」(和漢三才図会」の自序は正徳二(一七一二)年。第六代将軍徳川家宣はこの年に死去。正徳の次は享保)齎されたものであることから、生息地は中国か東南アジアである可能性高いこと。

「鸞」は「鳳凰」等の〈幻想神霊鳥〉と混同されて語られることが甚だ多いことから、その「鳳」やら「凰」やら「鸞」やら「鸑鷟(がくさく)」やら「鵷鶵(えんすう)」やら「青鸞」やら「鴻鵠(こうこく)」やらのモデルとされる実在する鳥の一つであること。

・但し、それらトンデモ〈幻想神霊鳥〉のモデルの有力な一つである「孔雀」が前項で良安によって語られているしまっているから、これは「クジャク」(キジ目キジ小目キジ上科キジ科キジ亜科クジャク属インドクジャク Pavo cristatus 或いはマクジャク Pavo muticus)ではないこと。

何より、ここで良安自身が「籠」の中の実際の「鸞」を現認しつつ、微に入り、細に入り、観察記録を残しているように見えること(しかし、この各部観察叙述、本書の他の項に比べて異様に精密である。それもそのはずで、実はこれ殆んど「本朝食鑑」の丸写しなのだ。後のリンク先を参照されたいが、これによって良安の実地観察説は無効とせざるを得ない)。

それにも増して実在し、人の食用に供される動植物のみを対象としている、医師で本草学者であった人見必大「本朝食鑑」(人見必大(寛永一九(一六四二)年頃?~元禄一四(一七〇一)年:本姓は小野、名は正竹、字(あざな)は千里、通称を伝左衛門といい、平野必大・野必大とも称した。父は四代将軍徳川家綱の幼少期の侍医を務めた人見元徳(玄徳)、兄友元も著名な儒学者であった)が元禄一〇(一六九七)年に刊行した本邦最初の本格的食物本草書)に実在する食える「鸞」について非常に詳しく記載されていること。

から、これはほぼ同定が可能と思われるのである。だのに、殆んど誰もそれをちゃんとしていないから腹が立つのである。

 さてもそこでまず、本巻冒頭の「和漢三才圖會卷第四十四 山禽類 鳳凰(ほうわう)(架空の神霊鳥)」の私の注を見て戴こう。

 そもそもが中国の諸本草書の「鳳凰」を始めとするトンデモ〈幻想神霊鳥〉は記載がどれも具体性を欠いていたり、よく意味が判らなかったり、記載が本によって入れ替わっていたりしていて、拠るべき正本や定説が皆無で、従ってトンデモ〈幻想神霊鳥〉分類や各絵図の比較などはほぼ全く無効なのである。そこでそれらをひっくるめて、これかあれかの議論が過去に交わされてあり、そのまあ穏当(但し、分布的に、中国や本邦にあり得ない鳥を持ち出している奴もいるから要注意だ。以下からはそれは外した)なものが、、ウィキの「鳳凰」に掲げられた以下である。

マクジャク(真孔雀:キジ目キジ科クジャク属マクジャク Pavo muticu)・キンケイ(金鶏:キジ科 Chrysolophus 属キンケイ Chrysolophus pictus・ギンケイ(銀鶏:キジ科Chrysolophus 属ギンケイ Chrysolophus amherstiae)或いはオナガキジ(キジ科ヤマドリ属オナガキジ Syrmaticus reevesiiやジュケイ類(綬鶏類。キジ目キジ科ジュケイ属 Tragopan。ジュケイ Tragopan cabot 等)といった中国に棲息するキジ類とする説

マレー半島に棲息する キジ科 Phasianidae の大型鳥セイラン(青鸞:キジ科セイラン属セイラン Argusianus argus)とする説(吉井信照ら)

マレー半島に棲息するカンムリセイラン(キジ科カンムリセイラン属カンムリセイランRheinardia ocellata)とする説(鳥類学者蜂須賀正氏はケンブリッジ大学に提出した卒業論文「鳳凰とは何か」に於いて、鳳凰のモデルをカンムリセイランとし、頭が鶏に似、頸が蛇のようで、背中に亀甲状紋様があり、尾が縦に平たくて魚に似ている、といったカンムリセイランの特徴を挙げている)

ツバメ(スズメ目ツバメ科ツバメ属ツバメHirundo rustica)説(中華人民共和国の神話学者袁珂(一九一六年~二〇〇一年)の説。「爾雅」の記載の「鳳凰」の別名音「エン」を「燕」と解釈したもの)

この内、単純な「隅の老人」の訓詁学的な「鳳凰」に限った解釈説であるは「燕」を既に独立項で出しているのであるから問題外であり、先に述べたことから、のマクジャクも外れる。更に、先行独立項「きんけい 錦雞」があり、そこで私はそれをキンケイに同定しているから、これも外れ、同様に先行独立項「とじゆけい 吐綬雞」を私はキジ目キジ科ジュケイ属に同定しているので、これも外れる。

 次に逆を行くと、のフリーキーな鳥類学者蜂須賀正のそれは、まさに論文名が「鳳凰とは何か」であり、彼はいい加減なグラーデションではなく、ずばり「鳳凰」をマレー半島産カンムリセイラン(クランタン州南部及びパハン州北部に棲息。但し、現在、これはマレーカンムリセイランRheinardia ocellata nigrescens とされ、亜種Rheinardia ocellata ocellata がベトナム中部及びラオスに棲息することが判明している)としているからこれも外し得る。但し、そう限定をかけると、その和名のないカンムリセイランの亜種Rheinardia ocellata ocellata の方が「鸞」の候補として逆に挙がってくるとも言える。そうしておく。

 以上、残った候補は以下となる。

 キジ科Chrysolophus 属ギンケイ Chrysolophus amherstiae(画像)

 キジ科ヤマドリ属オナガキジ Syrmaticus reevesii(画像)

 キジ科セイラン属セイラン Argusianus argus(画像)

 キジ科カンムリセイラン属カンムリセイラン亜種レイナルディア・オケラータ・オケラータ Rheinardia ocellata ocellata(画像)

四種となる。まずは、それぞれの(画像)を比較しよう(それぞれの後ろ。学名でグーグル画像検索したもの。但し、最後のレイナルディア・オケラータ・オケラータのそれは、Rheinardia ocellata nigrescens も含まれている。確かな Rheinardia ocellata ocellata は例えばこれ(英文サイト画像)である)。

 ここで「本朝食鑑」を見る。「禽部之四」「青鸞」で、国立国会図書館デジタルコレクションのこちらから次のページの画像で読めるが、またしても、良安先生、殆んどこれの丸写しであることが判明してしまう。しかし人見必大が確かに現認して観察筆記していることは確実であるから、「和漢三才図会」の「」以下の本文自体は有効性を持つと見てよい。一つ、注目すべきは、人見の最後の部分(国立国会図書館デジタルコレクションの次のページ)で、「近世來自外國……」読むと、「青鸞」の尾羽はとても美しく、それを人々が見せ合って競い合うことを記している(但し、好事家がその羽尾で矢羽や矢場や遊びの楊弓の羽に作るものの、鷹や鵠(くぐい:白鳥)の羽よりも重いために矢が十分に飛ばずに堕ち易いともある)ことである。これに着目してしまうと、「青鸞」だから「セイラン」だろうとはいかないのである。則ち、の「キジ科セイラン属セイラン」との「キジ科カンムリセイラン属カンムリセイラン亜種レイナルディア・オケラータ・オケラータ」は所謂、尾羽が長大にして盛大ではあるものの、決して雅びに華麗ではないからなのである。「黃白〔にして〕黑紋有り」という記載は、この二種には全く適合しないのである。

 そうなると、の「ギンケイ」か、の「オナガキジ」か、ということになる。尾の描写は「オナガキジ」のそれが色といい、矢羽にするという点でもピンとくるのだが、ピンくるのは実はそこだけで、外の部分が如何にもな雉や山鳥ののような地味系なのだ。さてもそうして、

他の体部形状や色の描写は、実は、悉くが「ギンケイ」に一致する

のである。私は、良安の言っている=人見必大の言っている、

「鸞」はキジ目キジ科 Chrysolophus 属ギンケイ Chrysolophus amherstiae

としたい。ウィキの「ギンケイ」によれば、『全長はオスで』一・二~一・五メートル『と大型だが、その半分以上が長い尾羽で占められる。メスは』五十~七十センチメートル『ほど。オスは緑と白を基調とした派手な色彩をしている。赤い冠羽と、襟首の日本兜のしころ状を呈する白と黒の飾り羽が特徴。メスは他種のキジ類同様、比較的』。『地味である』。『主に中国南西部からチベット、ミャンマー北部にかけて分布しており、標高の高い山岳地帯の』藪『や竹林に生息している』とし、同種は同属種の、より金ぴかのキンケイ Chrysolophus pictus先行独立項「きんけい 錦雞」)『との雑種が多い』とあるから、或いは人見が観察したそれは、キンケイとの交雑種で、尾の白紋部が黄色がかっていた個体なのかも知れない。

 

「鑾〔(ラン)〕」この字は「天子の馬車などに添え附ける鈴(すず)」の意で、転じて「天子の馬車」「天子」の意に汎用された。そもそもが幻想の神聖鳥である「鸞」の声を、この天子の鈴の音は真似たものであるとされるのである。

『「三才圖會」に云はく……』「鳥獸一卷」の「鸞」。この左頁が図で、この右頁が解説(孰れも国立国会図書館デジタルコレクションの当該画像)。

 

「赤色、五采の鷄〔(にはとり)〕の形」全体に赤いが、そこに「五采」、五色(ごしき:靑・黄・赤・白・黒)の色が混じっている、全体形状は鶏の形と同じであるというのである。全体に赤いというのは如何にもキンケイらしく見えるが、実はギンケイでも腹部の下方が鮮やかに赤い部分を持つ個体もおり、後の多色であるのは寧ろ、ギンケイに一致する。交雑種が古くから見られた可能性が高いから、ここでそれを以ってこれはキンケイでギンケイではないとすることは出来ない。

「五音〔(ごいん)〕」既出既注であるが、再掲しておく。中国音楽で使われる五つの音程(五声(ごせい)とも称する)。「宮(きゅう)」・「商(しょう)」・「角(かく)」・「徴(ち)」・「羽(う)」の五つで、音の高低によって並べると、五音音階が出来る。西洋音楽の階名で「宮」を「ド」とした場合は、「商」は「レ」、「角」は「ミ」、「徴」は「ソ」、「羽」は「ラ」に相当する。後に「変宮」(「宮」の低半音)と「変徴」(「徴」の低半音)が加えられ、七声(七音)となり、「変宮」は「シ」、「変徴」は「ファ#」に相当する。なお、これは西洋の教会旋法の「リディア旋法」の音階に等しく、「宮」を「ファ」とおいた場合は、宮・商・角・変徴・徴・羽・変宮」は「ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ」に相当する(以上はウィキの「五声」に拠った)。

「中〔(あた)〕る」相当する正確な音程の声を出す。

『其の雌を「和」と曰〔(い)〕ひ、雄を「鸞」と曰ふ』だったら、「鸞和」と言いそうなもんだと思って調べたら、中文サイトに「鸞和」として、『都是天子座車上的鈴』とあった。ハイ、ハイ。

「膠〔(にかは)〕に作り」冒頭注の私の言い添えを参照されたい。

「弓弩〔(きうど)〕・琴瑟〔(きんしつ)〕」同前。

「鸞は鳳の亞(つぎ)なり」鸞は鳳凰に次ぐ二番目に神聖な鳥であるの意。

「鳳、久しくするときは」鳳凰が老成すると。

「五采、變-易〔(かは)〕る」体色に変化が起こる。「鳳凰(ほうわう)」には同じように「羽(はね)に五采を備へ」とはあるものの、その後で『赤多き者、「」なり。青多き者は「鸞」なり』(但し、そちらは「本草綱目」の引用)と言っているから、もう、この時点で「三才図会」の方は――「鸞」は年寄った「鳳(凰)」だ――と言ってしまってことになるので、中国本草の分類学のヒッチャカメッチャカ振りがよく判るのである。以下にムチャクチャかというと、「淮南子」では麒麟は諸獣を生み、鳳凰は鸞を生み、その鸞が諸鳥を生んだとされていて、そこでは「鳳凰は鸞のおっかさん」ということになる。

「人君〔(じんくん)〕」ここは君主の政道。

「度〔(ど)〕」節度。儒家風に言えばそこである程度に肝心な「仁」が行われていること。

「至る」飛来する。「礼記」に王が仁に則った政治を行った時、麒麟が現れるの類い。

「番蕉(そてつ)」」裸子植物門ソテツ綱ソテツ目ソテツ科ソテツ属ソテツCycas revoluta。なお、ソテツは南西諸島で「蘇鉄地獄」と呼ばれた、可食(種子)ながら、処理を誤ると、死に至る有毒植物であるウィキの「ソテツ」によれば、『日本の南西諸島の島嶼域では、中世から近代まで食用にされてきた。ソテツは、有毒で発癌性物質のアゾキシメタンを含む配糖体であるサイカシン(Cycasin)を、種子を含めて全草に有』する。『サイカシンは、摂取後に人体内でホルムアルデヒドに変化して急性中毒症状を起こす。しかし』、『一方でソテツには澱粉も多く含まれ、幹の皮を剥ぎ、時間をかけて充分に水に晒し、発酵させ、乾燥するなどの処理を経てサイカシンを除去すれば』、『食用が可能になる』。『鹿児島県奄美群島や沖縄県においては、サゴヤシ』(単子葉植物綱ヤシ目ヤシ科サゴヤシ属サゴヤシ(ホンサゴ)Metroxylon sagu)『のようにソテツの幹から澱粉を取り出して食用する伝統がある』。『また、種子から取った澱粉を加工して蘇鉄餅が作られたり、奄美大島や粟国島では、毒抜き処理と微生物による解毒作用を利用して無毒化された蘇鉄味噌が生産されたりしており、蘇鉄味噌を用いたアンダンスーが作られることもある』。『奄美・沖縄地域では、郷土食以外にも飢饉の際にソテツを救荒食として飢えを凌いだ歴史があったが、正しい加工処理をせずに食べたことで食中毒により死亡する者もいた。大正末期から昭和初期にかけて、干魃や経済不況により』、『重度の貧困と食糧不足に見舞われた沖縄地域は、ソテツ食中毒で死者を出すほどの悲惨な状況にまで陥り、これを指して「ソテツ地獄」と呼ばれるようになった』。『与論島でも、戦後から本土復帰』(昭和二八(一九五三)年)『後の数年間は島民の生活は大変貧しく、ソテツの種子で飢えを凌いでおり、その有り様も「ソテツ地獄」と称された』。『ソテツ澱粉を水に晒す時間が不十分で毒物が残留していたり、長期間にわたる食用で体内に毒素が蓄積されるケースが多く報告されており、例えばグアム島など、ソテツ澱粉を常食している住民がいる地域ではALS/PDC(筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合、いわゆる牟婁病)と呼ばれる神経難病が見られることがある』。『ソテツは、あくまで他の食料が乏しい時の救飢食として利用されているものであって、素人が安易に試すのは避けるべきとされる。また、同じソテツ属でも revoluta 以外のものは可食性は未確認である』とある。

「樊中に孕みて卵を伏(かへ)すは少しなり。故に、其の類、蕃(をほ)からず」籠の中で孕むが、産んだ卵を上手く孵化させて、雛を育てる番いは少ない。そのため、その「鸞」の同類は本邦では多くない。]

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