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2019/01/17

萩原朔太郞 靑猫(初版・正規表現版) 白い牡鷄

 

  

 

わたしは田舍の鷄(にはとり)です

まづしい農家の庭に羽ばたきし

垣根をこえて

わたしは乾(ひ)からびた小蟲をついばむ。

ああ この冬の日の陽ざしのかげに

さびしく乾地の草をついばむ

わたしは白つぽい病氣の牡鷄(をんどり)

あはれな かなしい 羽ばたきをする生物(いきもの)です。

 

私はかなしい田舍の鷄(にはとり)

家根をこえ

垣根をこえ

墓場をこえて

はるかの野末にふるへさけぶ

ああ私はこはれた日時計 田舍の白つぽい牡鷄(をんどり)です。

 

[やぶちゃん注:大正一一(一九二二)年五月号『婦人公論』。初出は標題が「白い雄鳥」で、第一連が有意に長い。以下に示す。但し、総ルビであるが、必要と思われる部分のみのパラルビとした。

   *

 

  白

 

わたしは田舍の鷄(にはとり)です

まづしい農家の庭に羽ばたきをし

垣根をこえて

私はひからびた小蟲(こむし)をついばむ

ああ この冬の日の陽ざしの影に

さびしく乾地(かんち)の草をついばむ

私は白つぽい病氣の雄鳥(をんどり)

あはれな かなしい 羽ばたきをする生物(いきもの)です。

ああ だれかこの嘆きをしるか

庭にの野菊のしほれて[やぶちゃん注:「しほれて」はママ。]

日(ひ)は遠く海の向(むかふ)へかたむきさり[やぶちゃん注:ルビ「むかふ」はママ。朔太郎のよくやる癖ではある。]

ひとり戀人は島(しま)の上にさすらひたまふ

夕風にゆられ ゆられて

はや暮れる日ざしのかげにこの幻(まぼろし)もかげりゆく。

 

私はかなしい田舍の鷄(にはとり)

家根をこえ

垣根をこえ

墓場をこえ

はるかの野末(のずゑ)にふるえさけぶ[やぶちゃん注:ルビの「のずゑ」、本文「ふるえ」はママ。]

ああ私はこわれた日時計 田舍の白つぽい雄鳥(をんどり)です。[やぶちゃん注:「こわれた」はママ。

 

   *

「定本靑猫」では標題から本文まで三箇所の「牡鷄」を「雄鷄」とする以外は有意な異同を認めない。

 なお、不思議なことに、筑摩版全集校異はこの初版を「さびしく乾地(かんち)の草をついはむ」として濁点を打って訂したことになっている。私のも初版なのだ。或いは印刷途中に、「は」が清音であることに気がついた印刷工が「ば」に差し替えたものか?

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