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2019/02/12

和漢三才圖會卷第三十七 畜類 鮓荅(へいさらばさら・へいたらばさら) (獣類の体内の結石)

 

Heisa

 

へいさらばさら

へいたらばさら

       【二名共蠻語也】

鮓荅

 

 タ

 

本綱鮓荅生走獸及牛馬諸畜肝膽之間有肉囊裹之多

至升許大者如雞子小者如栗如榛其狀白色似石非石

似骨非骨打破層疉可以祈雨輟耕録所載鮓荅卽此物

也曰蒙古人禱雨惟以浄水一盆浸石子數枚淘漉玩弄

密持咒語良久輙雨石子名鮓荅乃走獸腹中所産獨牛

馬者最妙蓋牛黃狗寶之類也鮓荅【甘鹹平】治驚癇毒瘡

△按自阿蘭陀來有平佐羅婆佐留其形如鳥卵長寸許

 淺褐色潤澤似石非石重可五六錢目研磨之有層層

 理如卷成者主治痘疹危症解諸毒俗傳云猨爲獵人

 被傷其疵痕成贅肉塊也蓋此惑也乃爲鮓荅也明

 矣

 

 

へいさらばさら

へいたらばさる 【二名共に蠻語なり。】

鮓荅

 

 タ

 

「本綱」、鮓荅〔(さたふ)〕[やぶちゃん注:今までのやり方では標題の読み「へいさらばさら」或いは「へいたらばさる」で読むことになるが、それは如何にも面倒であるので、通常のこちらの読みで統一する。]は走獸及び牛馬諸畜の肝膽の間に生ず。肉嚢有りて、之れを裹〔(つつ)〕む。多きは升〔(しやう)〕許りに至る。大なる者は雞子〔(にはとりのたまご)〕のごとく、小なる者は栗のごとく、榛(はしばみ)のごとし。其の狀〔(かた)〕ち、白色〔にして〕、石に似て、石に非ず。骨に似て、骨に非ず。打ち破れば、層疉〔(さうでふ)〕す。以つて、雨を祈るべし。「輟耕録」に載する所の「鮓荅」は、卽ち、此の物なり。曰く、蒙古(むくり)の人、雨を禱〔(いの)〕るに、惟だ淨水一盆を以つて、石子〔(せきし)〕[やぶちゃん注:小石。]數枚を浸し、淘-漉〔(すすぎこ)〕し、玩弄し[やぶちゃん注:水で何度も洗い濯(すす)いでは、水の中で転がし、という意。]、密〔(こまや)か〕に咒語〔(じゆご)〕[やぶちゃん注:呪(まじな)いの呪文。]を持〔(じ)〕すれば[やぶちゃん注:呪文を用いて唱えれば。]、良〔(やや)〕久しくして、輙〔(すなは)〕ち、雨(〔あめ〕ふ)る。〔この〕石子を鮓荅と名づく。乃〔(すなは)〕ち、走獸の腹中に産する所〔のものなり〕。獨り、牛馬の者〔は〕、最も妙なり』〔と〕。蓋し、「牛黃〔(うしのたま)〕」・「狗寶〔(いぬのたま)〕」[やぶちゃん注:。]の類ひなり。鮓荅【甘鹹、平。】は驚癇[やぶちゃん注:漢方で言う癲癇症状のこと。]・毒瘡を治す。

△按ずるに、阿蘭陀〔(オランダ)〕より來たる「平佐羅婆佐留〔(へいさらばさら)〕」有り。其の形、鳥-卵(たまご)のごとく、長さ、寸許り、淺〔き〕褐(きぐろ)色、潤澤〔たり〕[やぶちゃん注:ある程度の水気を帯び、光沢があることを言う。]。石に似て、石に非ず。重さ、五、六錢目可(ばか)り[やぶちゃん注:日本の単位ではないので、明代のそれとすれば、一銭は三・七三グラムであるから、十八・六五から二十二・三八グラムで、二十グラム前後となる。]。之れを研磨すれば、層層たる理(すぢ)有りて、卷き成す者のごとし。痘疹の危症[やぶちゃん注:天然痘の重篤化したもの。]を治すを主〔(つかさど)〕る。諸毒を解すと〔いふ〕。俗傳に云はく、『猨〔(さる)〕、獵人の爲に傷せられ、其の疵-痕(きづ)、贅(こぶ)と成りて〔→たる〕肉-塊(かたまり)なり』と。蓋し、此れ、惑なり。乃ち、鮓荅たること、明らけし。

 [やぶちゃん注:私は既に十年前の二〇〇九年に、「和漢三才圖會 卷第四十 寓類 恠類」の「猨」で本項の電子化注を行っているが、今回はそれを加工データとしつつ、リニュアルしたものを示す。この「鮓荅」は各種の記載を総合してみると、良安の記すように、日本語ではなく、ポルトガル語の「pedra」(「石」の意。ネイティヴの発音をカタカナ音写すると「ペェードラ」)+「bezoar」(「結石」ブラジルの方の発音では「ベッゾア」)の転であるとする。また、古い時代から、一種の解毒剤として用いられており、ペルシア語で「pādzahr」、「pad (expelling) + zahr (poison) 」(「毒を駆逐する」の意)を語源とする、という記載も見られる。本文にある通り、牛馬類から出る赤黒色を呈した塊状の結石で、古くは解毒剤として用いたとある。別名を当該の獣類の名に繋げて「~のたま」と呼び、「鮓答(さとう)」とも書いた。但し、例えば大修館書店「廣漢和辭典」の「鮓」を引いても、この物質に関わる意味も熟語示されていない。現代中国音では「鮓荅」は「zhǎ dā」(ヂァー・ダァー)で、やや「ペェードラ」に近い発音のように思われるから、それを漢音写したものかも知れない(但し、以下の引用ではモンゴル語説が示されてある)。良安が前の「狗寳(いぬのたま)」で「本草綱目」を引いている通り、『牛の黃(たま)・狗の寶・馬の墨(たま)・鹿の玉・犀の通-天(たま)、獸の鮓-荅(たま)、皆、物の病ひにして、人、以つて寳と爲す』であって、各種獣類の胎内結石或いは悪性・良性の腫瘍や免疫システムが形成した異物等を称するものと思われ、漢方では現在でも高価な薬用とされているらしい。そこの注でも引いた、「中国の怪情報」というサイトのこちら(記者は編集長妙佛大爺氏)によれば、『古くから珍重されて来た希少な漢方薬の中に三宝と呼ばれるものがある。三宝とは馬宝、牛黄、狗宝の』三『種の漢方薬の総称』であるとされ、『いずれも動物の体内にごく稀に存在する』病変『物質である』。「狗宝」は既に前項で示したが、他の二つについてリンク先では以下のように説明されてある。『馬宝の正体は馬の腸内にできる結石であると言われている。結石の形成は偶然に左右されるので、ひとつひとつの形状や品質は全て異なる。それに応じて価格も変動する』。『オークションでの落札価格を見ると、高いものは日本円で数千万円の値段がついている』。『牛黄』niú huáng『は日本語で「ごおう」と読まれる』。『牛黄は現在の中国では比較的使用頻度が高い漢方薬だ。ただし』、『本物の牛黄ではなく』、『牛の胆汁で代用しているのだ。本物の牛黄はあまりにも高価なので通常は薬として使われることはない』。『牛黄の正体は牛の胆結石である。天然の牛黄は非常に高価である。特に大きなものは珍し』く、三百『グラムを超える牛黄に日本円で』一『億円以上の値段がついたこともある。やはりオークションでの価格だ』。一方、『馬宝』mǎ bǎo『は馬の体内に形成される石のような物体である。馬糞石、黄薬、鮓答(さとう)などの別名で呼ばれることもある』とある。因みに、リンク先には鶏のそれも記されてあり、『動物の体内から得られる希少な漢方薬は三宝だけではない。実はニワトリの体内にも石のような物体が生成されることがあるのだ』。『それを鶏宝』jī bǎo『という』。『鶏宝の正体については諸説ある。ひとつは馬宝や狗宝と同じように結石であるという説だ』。『もうひとつの説は卵胞の異常発育説である』。『本来なら卵巣内で育つはずの卵胞が腹腔内に侵入し、そこで大きく発育したものが鶏宝だというのだ。卵の黄身の部分に相当するものが腹腔内に形成され、それが硬化すると鶏宝になるということだ』。『このような現象は結石ができるよりもさらに発生頻度が少ないだろう。それだけ珍しいということになる』。『鶏宝には卵の黄身とそっくりな色と形のものがある一方で、石のようなものもあると言われている』。『恐らく鶏宝には卵胞から形成されるものと、結石と同じメカニズムで形成される』二『つのタイプがあるのだろう』。『福建省に恵安県(けいあんけん)という土地がある。世界史でも習う港町・泉州(せんしゅう)に属する街だ。花崗岩の産地であり、日本に墓石などを輸出している』。『その恵安県で鶏宝が発見されたというニュースが報道されたことがある。鶏宝の発見はそれほど大きなできごとなのだ。その概略を紹介しよう』。『恵安県の螺陽鎮(らようちん)という小さな村でのことだ』。『ある女性がニワトリを絞めて解体したところ、腹の中から』、『卵の形をした不思議な物体が現れた』。『それは内臓のようにも見えるが、普段からニワトリを解体している女性は、これはただの内臓ではないと気が付いた』。『その女性は以前新聞で鶏宝の記事を読んだことがあった。それはニワトリの腹の中にある非常に珍しく高価な薬であり、城ひとつと同じ価値があるとすら言われるほどの宝だというのだ』。『女性はさっそく上海のオークション業者』四『社に写真を送って鑑定を依頼した。その結果、女性が発見した不思議な物体が鶏宝である可能性はおよそ』九十『%であるとの結論を得たのだ』。『もしこれが本物の鶏宝であれば、最高』千七百五十『万元(日本円換算でおよそ』二億八千万円『)の価格がつく可能性があるという』。『高価な漢方薬の発見は中国ならではのチャイニーズ・ドリームだ。中国の田舎には家畜を捌くたびに一攫千金の夢がある』とある。

 それにしても、この「ヘイサラバサラ」「ヘイタラバサル」という発音は、かの「ケサランパサラン」と何だか雰囲気が似ていないだろうか? 私はふわふわ系の未確認生物のイメージしかなかったから、偶然かと思ったら、どっこい、これを同一物とする説があった。サイト「ん」の中の『けさらんぱさらん』の正体に関する諸説の『「家畜動物の腸内結石」説』に詳しい(リンクも再現した。一部に記号を挿入させて貰い、改行も施した)。

   《引用開始》

腸内結石に関しては岩手大学農学部獣医学科のHPの説明では、

腸結石 Intestinal Concretion:糞便内の小石、釘、針金、釦などの異物に無機物が沈着して出来たもので主として馬の大腸、特に結腸内に見られる。

とある。

同じく岩手大学農学部獣医学科のHPの説明では、毛球と呼ばれる牛・羊・山羊などの動物の消化器内で発生する物質について書かれている。

毛球 Hair Ball:牛、羊、山羊などの反芻類が嚥下した被毛あるいは植物繊維より成るもので第一胃及び第二胃に、稀に豚や犬の胃腸に見られることもある。表面に被毛の見えるものを粗毛球、表面が無機塩類で蔽われ硬く滑かで外部から毛髪の見えないものを平滑毛球 というとの事。

(毛球と腸結石の写真が同HPに載っています。)

また、毛球に関しては犬からも発生する場合もあるとの事。

この説によると、「動物タイプ」はこのうち粗毛球を指し、「鉱物タイプ」は平滑毛球や腸内結石を指す事になるわけです。

「馬ん玉」や「へいさらぱさら」はまさしく「ケサランパサラン 鉱物タイプ」の別名であり、「ケサランパサラン 動物タイプ」の別名として「きつねの落とし物」があるのもうなずけます。

おそらく、きつねが糞といっしょに粗毛球を排泄したのを見た方がつけたのでしょう。

また、[やぶちゃん注:中略。]「鉱物タイプ」を雨乞いに用いた事に関して、[やぶちゃん注:中略、]日本の雨乞いの方法の一つに,牛馬の首を水の神様に供える、或いは水神が棲む滝壷などにそれらを放り込む、という方法があります。これは、不浄なものを嫌う水の 神を怒らせることによって、水神=龍が暴れて雨が降るという信仰から来ているようです。以下は(この説を教えてくれた方の)私見ですが、「へいさらばさら」は、その不浄な牛馬の尻[やぶちゃん注:体内と読み換えたい。]から出てくるものですから、神様が怒るのも当然という理屈で用いられたのではないでしょうか。ただし、これは日本における解釈であり、馬と共に暮らす遊牧民族であるモンゴル人が、同じ考えでそれを行ったかどうかは不明です。[やぶちゃん注:中略。]

「その後の調査で、「輟耕録」に記載されている雨乞いの方法(盥に水を入れ呪を唱えながら水中で石を転がす)が『ケサランパサラン日記』のそれと酷似しており[やぶちゃん注:西君枝と言う方が草風社から一九八〇年に刊行した著作であるらしいが、未見であり、指示する当該記載が判らないので、この部分、何と酷似しているのかは不明である。]、また、このように水の中で転がして原形をとどめていられるのは硬い球形の馬玉タイプであることや、モンゴル語で雨を意味する「jada」という語に漢字を当てたものが「鮓荅」であると考えられることなどから、「へいさらばさら」の雨乞いのルーツは、中国の薬物書である「本草綱目」によって伝えられたモンゴル人の祈雨方法にあり、それに用いられたのは白い球状の鮓荅であると考えた方がよいようです。ついでに言えば「毛球」については、反芻をする動物(ウシやシカなど)に特に多いようですが、毛づくろいの際に飲み込んだ毛でできるため,犬以外のペット小動物、例えばウサギ、猫などでもメジャーな病気のようです。ペットに多いのは、野生の場合、毛が溜らないようにするための草を動物が知っていて、これを時々食べることによって防いでいるためで、ペット用に売られている「猫草」も、毛球症予防に効果があるようです。」[やぶちゃん注:中略。]

 また、水神=龍から、龍の持つ玉のイメージが想起されることから、雨乞いに用いられた「へいさらばさら」は、主に白い球状のタイプだったのではないかと推測されます。」[やぶちゃん注:この最後の部分は最後に鍵括弧があるので、これもその情報提供者の追伸かとも思われる。]

   《引用終了》

 

「肉囊」肉状の軟質に包まれていることを指す。胆嚢結石とすれば、これは胆嚢自体を指すとも考えられるが、実は馬や鹿等の大型草食類には胆嚢が存在しない種も多い。その場合は胆管結石と理解出来るが、ある種の潰瘍や体内生成された異物及び体外からの侵入物の場合、内臓の損傷リスクから、防御のための抗原抗体反応の一種として、それを何等かの組織によって覆ってしまう現象は必ずしも特異な現象ではないものとも思われる。

「榛」ブナ目カバノキ科ハシバミ Corylus heterophylla var. thunbergii の実。ドングリ様の大きな実のようなものを想定すればよいか。へーゼルナッツはこのハシバミの同属異種である。

「層疉」立体同心円(球状)の層状結晶を言うか。

「輟耕録」明代初期の学者陶宗儀(一三二九年~一四一〇年)撰になる随筆集。先行する元代の歴史・法制から書画骨董・民間風俗といった極めて広範な内容を持ち、人肉食の事実記載等、正史では見られない興味深い稗史として見逃せない作品である。記載は「巻四」の「禱雨」。

   *

往往見蒙古人之禱雨者、非若方士然、至於印令旗劍符圖氣訣之類、一無所用。惟取淨水一盆、浸石子數枚而已。其大喪者若雞卵、小者不等。然後獸默持密咒、將石子淘漉玩弄、如此良久。輒有雨、豈其靜定之功已成、持假此以愚人耳。抑果異物耶。石子名曰鮓答、乃走獸腹中所、獨牛馬者最妙。恐亦是牛黃・狗寶之屬耳。

   *

「蒙古(むくり)」蒙古(もうこ)はモンゴルの中国語による音写で、古く鎌倉時代に「もうこ」のほかに「むくり」「むこ」などと呼称した、その名残りである(因みに、鬼や恐ろしいものの喩えとして泣く子を黙らせるのに使われる「むくりこくり」とは「蒙古高句麗」で蒙古来襲の前後に「蒙古(むくり)高句麗(こくり)の鬼が来る」と言ったことに由来する)。遊牧民であるから、牛馬の結石は、我々に比べたら、稀ではあるが、遙かに入手可能なものであったものかも知れない

「牛黃」牛の胆嚢や胆管に生ずる胆石で、日本薬局方でも認められている生薬である。解熱・鎮痙・強心効果を持つ。この後、「牛」の項の後に「牛黄」の項があるが、ここで十二分に注をし終えていると判断する。

「毒瘡」瘡毒と同じか。ならば梅毒のことである。もっと広範な重症の糜爛性皮膚炎を言うのかも知れない。

「俗傳に云はく、『猨〔(さる)〕、獵人の爲に傷せられ、其の疵-痕(きづ)、贅(こぶ)と成りて〔たる〕肉-塊(かたまり)なり』と。蓋し、此れ、惑なり。乃ち、鮓荅なること、明らけし」ここの部分、東洋文庫版では、『世間一般では猿の身体にある鮓荅をさして、これは猿が猟人のために傷つけられ、その傷の痕(あと)が贅肉(こぶ)となったものであるという。しかしこれは間違いで、鮓荅であることは明らかである』と訳しているが、これはおかしな訳と言わざるを得ない。ここは、『俗説に言うには、「猿が猟師に傷つけられ、その傷の痕が瘤となった、その肉の塊が鮓荅である」とする。しかし、これはとんでもない妄説である。以上、見てきたように、鮓荅というものはそのような人が猿に及ぼした傷由来の瘤なんぞではなく、人及び獣類の体内に生ずるところの結石であることは、最早、明白である』と言っているのである。]

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