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2019/02/11

和漢三才圖會卷第三十七 畜類 狗寳(いぬのたま) (犬の体内の結石)

 

Inunotama

 

いぬのたま

狗寳

 

ウハ

 

本綱狗寶生癩狗腹中狀如白石帶青色其理層疊亦難

得之物也昔任丘縣民家一犬甚惡後病衰爲衆犬所噬

而死剖之其心已化似石非石其重如石而包膜絡之如

寒灰觀其脈理猶是心不知何緣到此

甞聞人患石淋有石塊刀斧不能破又甞見龍脛骨中髓

皆是白石虎目光落地亦成白石星之光氣落地則成石

松亦化石蛇蠏蠶皆能成石萬物變化如此不可一槩斷

時珍静思之牛之黃狗之寶馬之墨鹿之玉犀之通天獸

之鮓荅皆物之病而人以爲寳人靈於物而猶不免此病

况物乎人之病淋有沙石者非獸之鮓答乎人之病癖有

心似金石者非狗之寳乎此皆囿於物而不能化者故禽

鳥有生卵如石者焉

程氏遺書載云有波斯人發古塚棺内俱盡惟心堅如石

鋸開觀之有山水青碧如畫傍有一女靚粧凭欄葢此女

有愛山癖朝夕注意故融結如此又浮屠法循行般舟三

昧法示寂後火焚惟心不化出五色光有佛像高三寸非

骨非石百體具足此皆志𡱈於物用志不分精靈氣液因

感而凝形正如孕女感異像而成鬼胎之類非祥也病也

有情之無情也

 

 

いぬのたま

狗寳

 

ウハ

 

「本綱」、狗寶、癩狗の腹中に生ず。狀、白石のごとくにして、青色を帶ぶ。其の理〔(きめ)〕、層疊して、亦、得難き物なり。昔、任丘縣[やぶちゃん注:現在の河北省滄州市任丘市(グーグル・マップ・データ)。]の民家に一犬あり。甚だ惡〔(あしき)〕なり[やぶちゃん注:身体が悪かった。]。後、病衰して衆犬の爲めに噬(か)まれて死す。之れを剖〔(さ)〕くに、其の心〔(しん)〕[やぶちゃん注:漢方で名指す心臓。]、已に化して石に似て、石に非ず。其の重さ、石のごとくにして、包膜、之に絡〔(まと)〕ひ、寒灰〔(かんくわい)〕[やぶちゃん注:火が燃え尽きた後に残る灰。冷たい灰。]のごとし。其の脈-理〔(すぢ)〕[やぶちゃん注:肌理(きめ)。]を觀るに、猶ほ、是れ、心のごとし。何に緣〔(よ)り〕て此れを〔に〕到〔れる〕ことを、知らず。

甞つて聞く、人、石淋を患ひて、石の塊(かたまり)有り、刀・斧〔を以つてしても〕破ること、能はず〔と〕。又、甞つて龍〔の〕脛骨の中の髓を見〔しが〕、皆、是れ、白石なり。虎の目の光、地に落ちて、亦、白石と成り、星の光氣、地に落つるときは、則ち、石と成り、松も亦、石に化し、蛇・蠏〔(かに)〕[やぶちゃん注:蟹。]・蠶〔(かひこ)〕、皆、能く石と成る。萬物の變化、此くのごとし。一槩[やぶちゃん注:「槪」の異体字。]に斷ずるべからず。

時珍、静かに之れを思ふに、牛の黃(たま)・狗の寶・馬の墨(たま)・鹿の玉・犀の通-天(たま)、獸の鮓-荅(たま)、皆、物の病ひにして、人、以つて寳と爲す。人は物の靈[やぶちゃん注:万物の霊長の類。]にして、猶ほ此の病ひを免れず。况んや、物をや。人の、淋を病むに、沙石[やぶちゃん注:小石状の結石。]有るは、獸の鮓答(たま)に非ざるか[やぶちゃん注:反語。同じであると言っているのである。以下も同じ。]。人の癖〔(へき)〕を病み[やぶちゃん注:性癖が極端に偏頗し、精神上、病的な状態となり。]、心、有りて、金石に似たるは、狗の寳(たま)に非ざるか。此れ、皆、物に囿〔(こだは)り〕て[やぶちゃん注:拘泥して。]、化する能はざる者なり。故に禽-鳥〔(とり)〕の卵を生むに、石のごとくなる者、有る〔なり〕。

「程氏遺書」に載せて云はく、『波斯(ハルシヤ[やぶちゃん注:ママ。或いは「パルシヤ」のつもりかも知れない。])に、人、有り、古塚を發(ひら)く。棺〔の〕内、俱に盡きて、惟だ、心、堅くして石のごとし。鋸〔(のこぎり)〕をもつて開けて、之れを觀るに、山水、有り、青碧にして畫(ゑが)くがごとし。傍らに、一女、有り。靚粧〔(せいさう)〕[やぶちゃん注:現代仮名遣「せいそう」。「靚」は「飾りよそおう」の意で、美しく飾りよそおうこと。綺麗に化粧すること。めかしこむこと。]して、欄〔(おばしま)〕に凭(よりか)ゝる。葢〔(けだ)〕し、此の女、山を愛する癖、有りて、朝夕、意を注す。故に、融結して此くのごとし。又、浮屠〔(ふと)〕[やぶちゃん注:仏僧。]〔の〕法循は、「般舟三昧法〔(はんじゆざんまいはう)〕」を行ひしが、寂を示して後、火〔に〕焚〔くに〕、惟だ、心、化せず、五色の光を出だし、佛像、有り。高さ三寸。骨に非ず、石に非ず、百體具足す。此れ、皆、志、物に𡱈〔(きよく)〕して[やぶちゃん注:「局」の異体字。一つの対象に集まること。]、志しを用ふること、分かた〔ざるが故に〕精靈・氣液、感〔ずる〕に因つて、形を凝らす。正に孕(はらみ)女〔の〕異像に感じて鬼胎を成すの類ひのごとし。祥[やぶちゃん注:祥瑞。]に非ずして、病ひなり。有情〔(うじやう)〕の無情なり[やぶちゃん注:有情の存在が無情の物体に変化した異常な生成機序に過ぎない。]。

[やぶちゃん注:日中辞書によれば、イヌの胆嚢や腎臓・膀胱内に生ずる結石を言うとする。Q&Aサイトの回答では、犬の結石で青白い現在でも漢方で高級品として需要があるらしく、天然物で約百グラムくらいで十万元(今現在で百六十二万円相当)ほどとし、人工のものは天然物の十分の一の値段としつつ、天然と比べると薬効は低いとする。画像があるものでは、「中国の怪情報」というサイトのこちらで(サイトの名前の妖しさのわりには、記載はかなりしっかりしている)、そこには、『狗宝』(gǒu bǎo)『は犬の胃の中などで生成される石のような物体だ。通常は』一~五センチメートルほどの『オリーブ形をして』おり、『表面はなめらかで』、『爪で傷がつくほどの硬さである』とし、『価値があるのは中心のわずかな部分だけであり、その重量はせいぜい』二グラムから七グラム『程度しかないという。高齢の犬ほど大きな狗宝を持っている確率が高いそうだ』とし、『天然の狗宝のオークション落札価格を見ると、やはり日本円で数千万円の値段がついている』とある。

 

「石淋」腎臓(腎盂・腎杯)・尿管・尿道。膀胱に結石が生ずる疾患。結石の約八十%はシュウ酸(蓚酸)カルシウム CaC2O4 又は(COO)2Ca)・リン酸(燐酸)カルシウム(狭義にはリン酸三カルシウム:Ca3(PO4)2)などのカルシウム結石で、その他ではリン酸マグネシウムアンモニウム(MgNH4PO46H2O)や尿酸(C5H4N4O3)の結石などがある。

「龍〔の〕脛骨」思うに、脊索動物門脊椎動物亜門顎口上綱爬虫綱双弓亜綱主竜形下綱恐竜上目 Dinosauria に属する、所謂、恐竜、中生代三畳(現在から約二億五千百万年前から一億九千九百六十万年前)に現われ、約六千六百万年前の白亜紀と新生代との境に多くが絶滅したそれらの化石である可能性が極めて高い。古くから、それらの化石が龍の骨とされ、漢方で薬剤として用いられてきた歴史がある。但し、生物化石ではなく、全くの鉱物由来のものである可能性を除外は出来ない。

「蠶〔(かひこ)〕、」「能く石と成る」これについては「和漢三才圖會卷第五十二 蟲部 雪蠶」に「石蠶」と出るものを私が考証した注、及び、「大和本草卷之十四 水蟲 蟲之上 石蠶」等を参照されたい。何故、ここで簡単に語らないかというと、リンク先を見て戴ければ判る通り、カイコ(鱗翅(チョウ)目カイコガ科カイコガ亜科カイコガ属カイコガ Bombyx mori とは全く別の生物を想定している可能性が多分に含まれること(例えば、昆虫綱毛翅上目トビケラ目 Trichoptera に属する昆虫類の水棲幼虫)の他に、カイコの病気(特にカビに感染されることでカビに水分を奪われ、乾燥して硬いミイラ状態になるケース)等の複数の可能性を時珍が言っている可能性があるからであり、しかもそれをこの注で語ることは、かなりの脱線(私の注は常に脱線だらけだが)となるからである。

「牛の黃(たま)・狗の寶・馬の墨(たま)・鹿の玉・犀の通-天(たま)、獸の鮓-荅(たま)」総てそれぞれの、或いは、他の四足獣類の体内結石及び悪性・良性の結節性腫瘍等を指す。次に「鮓荅」(通常はこれで「さとう」と読む。牛・馬・豚・羊などの胆石や腸内の結石で、古来、諸毒の解毒剤とされたり、雨乞いの呪(まじな)いの呪具として用いられた。「石糞」「馬の玉」「ヘイサラバサラ」「ドウサラバサラ」等、異名が多い)の独立項があり、後には「鮓答」「牛黃」も独立項なのでここでは特に注しない。「犀」は無論、脊椎動物亜門哺乳綱奇蹄目有角亜目 Rhinocerotoidea上科サイ科 Rhinocerotidae のサイ類(現生種は五種で、アフリカ大陸の東部と南部(シロサイ・クロサイ)、インド北部からネパール南部(インドサイ)、マレーシアとインドネシアの限られた地域(ジャワサイ・スマトラサイ)に分布している)を指す。次巻の「獸類」に「犀」があるので待たれたい。

「人の癖〔(へき)〕を病み、心、有りて、金石に似たるは、狗の寳(たま)に非ざるか。此れ、皆、物に囿〔(こだは)り〕て、化する能はざる者なり」ここは時珍が精神医学的なかなり肯んずることの出来る、なかなか鋭いことを比喩で言っているようにも思われ、非常に興味深い。但し、最後の「化する能はざる者なり」は、私は「化する能はざる無き者なり」とあるべきではないか、と思う。東洋文庫訳はここを、『人が癖を病めば心が金石のようになるのも狗の宝と同じではないか。これはみな心が物に拘泥(こうでい)すると整理の循環が阻害され、身体の器官が円滑に機能しなくなるのである』と訳している。美事だと思うし、そういう意味で時珍は書いているのであろうと確かに思うけれども、私には、逆立ちしても、この原文をこのように訳すことは不可能である。「化」を正常な精神作用の意で採ることは、この文脈では無理であると考えるからである。なお、原文の文字列も「此皆囿於物而不能化者」でこのまんまではある。大方の御叱正を俟つものではある。

「程氏遺書」北宋の思想家で朱子学・陽明学のルーツとされる程顥(ていこう 一〇三二年~一〇八五年:号を「明道」と称した)と程頤(ていい 一〇三三年~一一〇七年:号を「伊川」と称した)兄弟(この二人をして「二程子」と称した)の語録集。南宋の朱熹(しゅき)が編纂したもの。二十五巻・附録一巻。以下の引用の原文を調べ得なかったが、これはどうなんだろう? これ、人工物じゃないんじゃないかなぁ? 堆積岩や火成岩玄武岩内部に形成された空洞である「晶洞」、ギリシア語で「大地に似た」の意の「ジオード」(英語:Geode)、内部に熱水や地下水のミネラル分によって美しい(「青碧」はまさにそれらしいのだ)自形結晶が形成されたそれを見て、シミュラクラ(Simulacra)を起こしたのではないか? 大方の御叱正を俟つ。

「波斯(ハルシヤ)」ペルシャ。現在のイランを表わす漢訳古名。

に、人、有り、古塚を發(ひら)く。棺〔の〕内、俱に盡きて、惟だ、心、堅くして石のごとし。鋸をもつて開けて、之れを觀るに、山水、有り、青碧にして畫(ゑが)くがごとし。傍らに、一女、有り。靚粧〔(せいさう)〕[やぶちゃん注:現代仮名遣「せいそう」。「靚」は「飾りよそおう」の意で、美しく飾りよそおうこと。綺麗に化粧すること。めかしこむこと。]して、欄〔(おばしま)〕に凭(よりか)ゝる。葢〔(けだ)〕し、此の女、山を愛する癖、有りて、朝夕、意を注す。故に、融結して此くのごとし。又、浮屠〔(ふと)〕[やぶちゃん注:仏僧。]〔の〕

「法循」不詳。

「般舟三昧法」小学館「日本国語大辞典」の「般舟三昧」によれば、サンスクリット語「pratyutpanna samādhi」の音訳で、「諸仏現前三昧」「仏立三昧」等と漢訳し、阿彌陀仏を念じて諸仏の現前を見る三昧法(修法)で、この三昧を修して成就した際には、一切の諸仏が悉く行者の眼前に立つというところからの命名とある。天台宗では「常行三昧」と称する、とある。

「百體具足す」「百體」は「総て」の意。仏の姿の特徴を数え上げた「三十二相八十種好」が総て備わっていたというのである。私は読みながら、直ちに想起したのは、「仏像真珠」である。中国の南部に於いては十三世紀には行われていた工芸で、貝殻の内壁に真珠層を持つ淡水産の斧足綱古異歯亜綱イシガイ目イシガイ超科イシガイ科イケチョウ亜科カラスガイ Cristaria plicata 等の貝殻と外套膜の間に、土や鉛で作った仏像の型を挿入し、真珠層で覆わせるものである。鴻阜山人氏のサイト『「購入者の側に立った」入門シリーズ』の真珠パートの真珠の養殖と加工に画像がある。]

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