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2019/03/29

和漢三才圖會卷第三十八 獸類 羆(しくま)・魋(しやぐま) (ヒグマ・ウスリーツキノワグマ?)

 

Sikuma

  

 

 

しくま   人熊 馬熊

【音碑】

      【和名之

       久萬】

ピイ   【蓋白熊畧稱也】

 

本綱羆似熊而大色黃白其頭長脚高猛憨多力能拔樹

木虎亦畏之遇人則人立而攫之故俗呼爲人熊蓋熊羆

壯毅之物屬陽故書以不二心之忠臣譬之

――――――――――――――――――――――

【音頽】

[やぶちゃん注:原典では上記標題下に二行で以下の本文が記されてある。]

本綱魋似熊而小色黃赤或赤或呼爲赤熊蓋熊羆

魋三種一類也【如豕色黒者熊也大而色黃白者羆也小而色黃赤者魋也】

 

 

しくま   人熊〔(じんゆう)〕 馬熊

【音、「碑〔(ヒ)〕」。】

      【和名、「之久萬」。】

ピイ   【蓋し、「白熊」の畧稱なり。】

 

「本綱」、羆は熊に似て、大。色、黃白。其の頭、長く、脚、高し。猛憨〔(まうかん)〕[やぶちゃん注:暗愚(憨)乍らも猛々しいこと。]・多力、能く樹を拔く。虎も亦、之れを畏る。蓋し、熊・羆、壯毅〔(さうき)〕[やぶちゃん注:意気盛んで勇ましいく、強いこと。]の物〔にして〕陽に屬す。故に、書に、二心(〔ふ〕た〔ごころ〕)あらざるの忠臣を以つて之れに譬ふ。

――――――――――――――――――――――

(しやぐま)【音、「頽〔(タイ)〕」。】

「本綱」、魋は熊に似て、小さく、色、黃赤、或いは、赤。或いは、呼びて、「赤熊」と〔も〕爲す。蓋し、熊・羆・魋、三種一類なり【豕〔(ぶた)〕のごとく、色、黒き者は「熊」なり。大にして色〔の〕黃白なる者は羆なり、小にして色〔の〕黃赤なる者は魋なり。】。

[やぶちゃん注:本記載は「本草綱目」の前後孰れも抜書きで、「熊」の「附錄」部の以下の分割である寺島良安が参考にした可能性が高い寛文九(一六六九)年風月莊左衞門(京都)刊の「本草綱目」ここ(国立国会図書館デジタルコレクション)を視認して訓読し、電子化した)

   *

附錄 羆・魋 【音は頽。時珍曰、熊・羆・魋、三種一類なり。豕のごとく、色、黑き者、熊なり。大にして、色、黃白なる者は羆なり。小にして、色、黃赤なる者は魋なり。建平[やぶちゃん注:現在の遼寧省朝陽市建平県(グーグル・マップ・データ)。ここだと、ウスリーヒグマの分布限界の西外となる。]の人、魋を呼びて「赤熊」と爲す。陸機、羆を謂ひて、「黃熊」と爲〔すは〕、是れ〔なり〕。羆、頭、長く、脚、髙し。猛憨多力〔にして〕、能く樹木を拔く。虎も亦た、之れを畏る。人に遇ふときは、則ち、人のごとくに立ち、之れを攫ふ。故に、俗、呼びて「人熊」と爲す。闗西に〔ては〕「猳熊〔(かゆう)〕」と呼ぶ。羅願が「爾雅翼」に云はく、『熊、豬熊〔(ちよゆう)〕有り、形ち、豕のごとし。「馬熊」有り、形ち、馬のごとし。卽ち羆なり』〔と〕。或いは云はく、『羆は、卽ち、熊の雄なる者なり。其の白きこと、熊の白きがごとくして、理〔(きめ)〕粗に〔にして〕、味、減ず。功用、亦た同じ。】

   *

中国産のヒグマ(食肉目クマ科クマ亜科クマ属ヒグマ Ursus arctos)は、

ウマグマ(チベットヒグマ)Ursus arctos pruinosus(中国西部)

ウスリーヒグマ Ursus arctos lasiotus(エゾヒグマと同亜種ともする)

の二種が代表種となろうか。ヒグマについては、前項の「熊」の「松前に出づる者、最〔も〕多し」に既注なので、そちらを見られたい。「黃白」という標準体色はやや不審ではあるが、焼けた茶褐色を言っているととれば、ヒグマのそれと一致するから、腑に落ちる。

 

「白熊」これは単に黒い熊類の中でやや白っぽい体毛をしているという程度の意味であろう。本邦のエゾヒグマでもアルビノと推定される白色個体が目撃されているので、アルビノと断じてもよかろう。所謂、狭義の現在の「白熊」、クマ属ホッキョクグマ Ursus maritimus は、ユーラシア大陸では北極圏直近のロシア北部沿岸にしか棲息せず、言わずもがな、中国には分布しないので、論外である。

「書に、二心(〔ふ〕た〔ごころ〕)あらざるの忠臣を以つて之れに譬ふ」出典未詳。

「魋(しやぐま)」「赤熊」既に述べた通り、払子や舞台用の鬘(かつら)及び兜の飾りなどに用いた赤く染めた「赤熊(しゃぐま)」それは、ヤク(ウシ目ウシ亜目ウシ科ウシ亜科ウシ属ヤク(野生種の学名は Bos mutus。家畜化された種としての学名はBos grunniens)。「犛牛(らいぎう)(ヤク)」を参照)の尾の毛を赤色顔料で染めたもので、「赭熊」とも書くが、良安がここで「しやぐま」とルビしたのはそれに引かれた当て訓に過ぎず、それはこの「魋」の毛とは無縁である(なお、東洋文庫訳では『ししぐま』とルビする。別版本のそれか。不審)。「魋」が如何なる種を指すかは不詳だが、「本草綱目」の叙述を見るに、可能性としては、性的二型のウスリーヒグマの♀、或いは、チベットツキノワグマ Ursus thibetanus thibetanus(雲南省南西部・四川省北西部・青海省南部・チベット自治区南東部)・タイワンツキノワグマ Ursus thibetanus formosanus(台湾)・シセンツキノワグマ Ursus thibetanus mupinensis(青海省・甘粛省・陝西省・チベット自治区・広西チワン族自治区・広東省・浙江省)・ウスリーツキノワグマ Ursus thibetanus ussuricus(中国北東部及び朝鮮半島。先の「本草綱目」の建平がこの地域に該当するのでこれが有力か)の♀或いは赤色個体(実際にいる)か若年個体で、体毛が有意に赤茶けたそれを指すのではないかと私は思う。

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