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2019/04/16

函山雜興 伊良子清白

 

函山雜興

 

 

  塔 の 澤

 

   ○

七湯の秋は白萩の

咲くにまかせて闌(た)けぬれど

軒(のき)にともしのゆらぐ時

すだれにすずし山の風

   ○

木犀(もくせい)匀ふ欄干に

倚れるを友とよびとめて

おなじ浴衣のうしろ影

見知らぬ人のふりむきぬ

 

 

  阿育王山

 

驪山にまさる秋の色

古りにし寺をたづぬれば

杉の林のおくにして

蜩なくや岩だたみ

萩も芒(すすき)もみ佛の

小甁の花の手向草(たむけぐさ)

くちし扉の蜘蛛のいと

おちて聲ある秋の風

 

  湯本廓外

 

秋は灰なす雲下りて

落つる日うすき川上の

杉の林の杣(そま)が家(や)に

山栗燒くかたつ煙

 

  塔の澤途上

 

蘆の湖遠くして

水は寂しき早川の

流れのおくをたづぬれば

箱根八里の秋の風

 

  北條早雲墳

 

苔に蒸したるおくつきの

塵を拂ひてわが友が

捧げし花は萎(しぼ)むとも

深きおもひを饗(う)けよ君

 

  早 雲 寺

 

蕎麥の畠に日はさして

あきつ飛び交ふ早雲寺

鐘樓の軒(のき)を秋風の

すぐれば奇(く)しき響あり

 

  箱根舊道

 

葛の花さく谷沿ひを

夕暮急ぐ山駕よ

雲の紅(くれなゐ)ある程を

宿(しゆく)まで行くか潮(うみ)見にと

 

  玉 簾 瀧

 

岩ほをくだり岩におち

瀧の千條(ちすぢ)の白いとの

かかりて細き水すだれ

 

秋の羽振る山風は

木々のこずゑをそよがせて

聲も寂しき水すだれ

 

[やぶちゃん注:明治三三(一九〇〇)年十月発行の『文庫』初出。署名は「無名氏」。校異によれば、初出では冒頭の「塔の澤」の二連目が、『「塔の澤途上」の後に入る』とある。ということは、

   *

 

  塔の澤途上

 

蘆の湖遠くして

水は寂しき早川の

流れのおくをたづぬれば

箱根八里の秋の風

 

木犀(もくせい)匀ふ欄干に

倚れるを友とよびとめて

おなじ浴衣のうしろ影

見知らぬ人のふりむきぬ

 

   *

となっているということであろう。その他には有意な異同を認めないので、初出全体は示さない。]

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