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2019/04/25

和漢三才圖會卷第三十八 獸類 膃肭臍(をつとせい) (キタオットセイ)

Otutosei

 

 

 

をつとせい 骨豽 海狗

      【肭豽貀

        三字同】

膃肭臍

      【胡人呼之曰

       阿慈勃他伱】

 

本綱膃肭臍諸説區多女直國撒馬兒罕朝鮮突厥國等

北海有之又如三佛齋國南海亦有之毛色似狐尾形似

魚足形似狗而無前兩足呼其外腎曰臍者連臍取之也

膃肭臍【甘大溫】 補中益腎氣暖腰膝又治驚狂癇疾

△按膃肭奧州松前海中有之大者二三尺全體魚類而

 有毛乃此魚與獸半者矣頭似猫而口尖有眼鼻而無

 耳埀止有小孔其齒上一行下二行相双長短齟齬其

 尾有岐如金魚尾而黒色耑各有五岐其表中間有三

 針而堅似爪其毛色似鼬毛而根稍黒無手足而近尾

 兩脇有鰭蹼而黒色宛如足然此鰭而非足本草諸註

 爲有足而無前足者未見生者憶見之誤也有牡牝難

 辨以外腎有無別之其外腎長四五寸太如小指陰乾

 黒色性好睡眠土人以小者最賞美之五六月生子此

 時泛海上食小鰯蓋外腎連臍取之說亦不然矣凡狗

 食之則毛脫皮爛至死以可知性大温也其小者名阿

 毛悉乎虛寒人食其肉暖腰足松前人以爲美饌猶是

 肥前人嗜鼈也

 

 

をつとせい 骨豽〔(こつどつ)〕

      海狗〔(かいく)〕

      【「肭」「豽」「貀〔(どつ)〕」

       の三字、同じ。】

膃肭臍

      【胡人、之れを呼びて曰ふ、

       「阿慈勃他伱〔(あじぼたに)〕」。】

 

「本綱」、膃肭臍、諸説、區〔區(まちまち)にして、又、〕多し。女直國〔(ぢよちよくこく)〕[やぶちゃん注:「女直」は「女眞」(ジュルチン)に同じ。中国東北部、満洲の松花江一帯から外興安嶺(スタノヴォイ山脈)以南の外満州にかけて居住していたツングース系民族の当時の現有支配地域。]・撒馬兒罕〔(サマルカンド)〕[やぶちゃん注:ウズベキスタンの古都。但し、内陸(ここ。グーグル・マップ・データ)でおかしい。]・朝鮮・突厥〔(とつけつ)〕國[やぶちゃん注:六世紀に中央ユーラシアにあったテュルク系遊牧国家。但し、当が国家の占有域は海洋に面していないので前ろ同じく、おかしい。前と合わせて、交易品の集合地・経由地として挙げたものであろう。]等、北海に之れ有り。又、三佛齋(サフサイ)國[やぶちゃん注:七世紀にマラッカ海峡を支配して東西貿易で重要な位置を占めるようになったスマトラ島のマレー系海上交易国家であったシュリーヴィジャヤ王国。]のごとき南海にも亦、之れ有り。毛の色、狐に似て、尾の形(なり)魚に似る。足の形、狗〔(いぬ)〕に似て、前の兩足、無し。其の外腎(へのこ)[やぶちゃん注:陰茎。]を呼んで「臍〔(せい)〕」と曰ふは、臍〔(へそ)〕を連〔(つら)ね〕て、之れを取ればなり。

膃肭臍【甘、大温。】 中[やぶちゃん注:中胃。消化器系。]を補し、腎氣を益し、腰・膝を暖かにし、又、驚狂[やぶちゃん注:痙攣などを伴う心身性の劇症型発作のようである。]・癇疾[やぶちゃん注:神経過敏による痙攣など、特に小児に多い「癇の虫」等の精神疾患を指す。]を治す。

△按ずるに、膃肭、奧州松前の海中に之れ有り。大なる者、二、三尺。全體、魚類にして、而〔れども〕、毛、有り。乃〔(すなは)ち〕、此れ、魚と獸と〔の〕半ばなる者なり。頭、猫に似て、口、尖り、眼・鼻有りて、耳埀(みゝたぶ)、無く、止(たゞ)、小孔有るのみ。其の齒、上(〔う〕へ)に一〔(ひと)〕行(くだ)り、下に二行〔(ふたくだり)〕、相ひ双〔(なら)び〕て、長短、齟-齬(くいちが[やぶちゃん注:ママ。])ふ。其の尾に岐〔(また)〕有り、金魚の尾のごとくして、黒色、耑〔(はし)〕[やぶちゃん注:「端」に同じ。]〔に〕各々、五〔つの〕岐(また)有り。其の表の中間に三〔つの〕針有りて、堅くして、爪に似たり。其の毛色、鼬(いたち)の毛に似て、根、稍〔(やや)〕黒し。手足無くして、尾に近き兩脇に、鰭(ひれ)・蹼(みづかき)有りて、黒色、宛(さなが)ら、足のごとく然り。此れ、鰭にして、足に非らず。「本草」の諸註、『足、有りて、前足、無し』と爲るは、未だ生きたる者を見ざる、憶見の誤りなり。牡牝、有る〔も〕、辨じ難く、外腎の有無を以つて、之れを別〔(わか)〕つ。其の外腎、長さ四、五寸。太(ふと)さ、小指のごとく。陰乾にして黒色〔たり〕。性、好みて睡眠す[やぶちゃん注:彼らは実際、海中でも眠ることが出来る。後注の引用部の最初の太字部を参照。]。土人、小さき者を以つて、最も之れを賞美す。五、六月、子を生む。此の時、海の上に泛〔(うか)〕んで[やぶちゃん注:ママ。]、小鰯〔(こいわし)〕を食ふ。蓋し、外腎、臍を連ねて之れを取るの說、亦、然からず。凡そ、狗〔(いぬ)〕、之れを食へば、則ち、毛、脫(ぬ)け、皮、爛(たゞ)れて、死に至る。以つて、性〔(しやう)〕、大温なることを知るべし。其の小さき者を「阿毛悉乎(あもしつぺい)」と名づく。虛寒の人、其の肉を食ひて、腰・足を暖む。松前の人、以つて、美饌〔(びせん)〕[やぶちゃん注:御馳走。]と爲す。猶ほ、是れ、肥前[やぶちゃん注:現在の佐賀県。]の人、鼈〔(すつぽん)〕を嗜〔(たしな)む〕がごときなり[やぶちゃん注:現行も佐賀はスッポンの名産地で料理も有名。]。

[やぶちゃん注:食肉目イヌ亜目鰭脚下目アシカ科オットセイ亜科 Arctocephalinae のキタオットセイ属キタオットセイ Callorhinus ursinus、及びミナミオットセイ属 Arctocephalus(八種)を指すが、本邦には前者のみで、しかも日本はキタオットセイの南限とされる。但し、ミナミオットセイ属は調べる限りでは、生息域が限定されており、「本草綱目」の引用のそれも概ねキタオットセイ(或いはお得意の海棲哺乳類一緒くた)のように思われる。ウィキの「オットセイ」を引く。『一匹のオスが複数のメスを独占しハーレム』(トルコ語:harem:イスラム社会における女性の居室の意)『を形成する。ハーレムは一般に海岸に近い場所に形成される。メスをめぐる戦いに敗れたオスは、まとまって群れを作って生活する。その場合、居住地は内陸に入った不便な場所となる場合が多い。若いオスでは戦いに敗れても、戦いの訓練を積み体格が大きくなるまで待ち』、『改めて戦いに挑む場合もあるが、多くのオスは再挑戦をする気力を失い、メスとの交尾の機会を持てずに』、『同性の集団生活において生涯を終える』。『耳たぶがある、四脚で体を支えて陸上を移動できる、前脚を鳥の翼のように羽ばたくことによって遊泳するなど、アシカ科特有の特徴をもつ』。『アシカよりは若干小ぶりで、ビロード状の体毛が密生していることがオットセイの特徴である。オットセイの毛は、ごわごわとしたアザラシと異なり、つやつやとして柔らかく、暖かく、防寒性、装飾性に優れている』。『食性としては魚、タコ、エビを主食としているが、地域的にはペンギンを捕食する場合もあることが報告されている』。『陸上だけでなく、水中でも睡眠を行う。この時、右脳を覚醒させたまま、左脳を眠らせることができる。陸上で眠る時は、人間と同様の方法で眠る』(太字下線は私が附した。以下同じ)。『海の生き物だが、海水ではなく淡水でも生育可能である。いくつかの水族館では、オットセイを淡水で飼育している場合もある』。『高価な毛皮や、さらには陰茎や睾丸(生薬名:海狗腎)が精力剤などの漢方薬材料として珍重されたため、乱獲により生息数が激減した。江戸時代初期の慶長』一五(一六一〇)年と、二年後の慶長十七年、『蝦夷地の松前慶広が徳川家康に海狗腎を二回に』亙って『献上し、家康の薬の調合に使用されたという記録も残っている』(「当代記」)『オットセイはアイヌ語で「onnep」(オンネプ)とよばれていた。それが中国語で「膃肭」と音訳され、そのペニスは「膃肭臍」(おっとせい)と呼ばれ精力剤とされていた。現代の中国語ではオットセイは膃肭獣 wànàshòu ワナショウと呼ばれていて、アイヌ語onnepに由来する膃肭 wànà ワナの部分は』、『もっぱら「(身動きも不自由となるほどの)デブ」という意味で使われている。後に日本ではペニスの部位だけを指す「膃肭臍(おっとせい)」という生薬名が、この動物全体を指す言葉になった』らしい。『また、英語ではfur seal(毛皮アザラシ)と呼ばれ、アザラシよりも質の良い毛皮が取れるため、この名前がついたといわれている』。『日本海や銚子沖の太平洋が、キタオットセイ属の南限といわれる。たまに日本海側や北海道、東北地方の海岸に死体や、生きたまま漂着することがある』とある。

 なお、ヴィジュアルに識別法を覚えたい方のために、動物サイト「マランダー」の「これはちょっと難しい?アシカとオットセイの違いを比べてみよう」と、序でに、より基本の「似てると思ってたら意外と違う?アザラシとアシカの違いについて学んでみよう」をリンクさせておく。

「阿慈勃他伱〔(あじぼたに)〕」最後の「伱」は「儞」「爾」と同字だが、意味不明。ただ、調べているうちに、既知のサイト「山海経動物記」の「鯥(ロク)」に非常に興味深い記載を見出した。「鯥」は幻想地誌「山海経」の「南山経」に、

   *

東三百里祗山、多水、無草木。有魚焉、其狀如牛、陵居、蛇尾有翼、其羽在下、其音如留牛、其名曰鯥、冬死而夏生、食之無腫疾。

   *

という、トンデモ怪魚なのだが(訳はリンク先にある)、サイト主はこのモデル動物にオットセイを候補として挙げている。中国の古文献の膃肭臍の記載を調べた上での堅実な仮説で、非常に面白い。是非、お読みあれ!

「阿毛悉乎(あもしつぺい)」松江重頼編の俳論書「毛吹草」(正保二(一六四五)年刊)にも載るが、語源不詳。]

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