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2019/04/02

和漢三才圖會卷第三十八 獸類 鹿(しか) (シカ・ニホンジカ他)

Sika

 

 

 

しか    斑龍   麀【牝】

      麚【牡】 䴥【牡】

      麛【子】 麑【子】

鹿【音禄】

★     密利迦羅【梵書】

      【和名加

ロツ     俗云之加】

[やぶちゃん注:★部分に上図の篆文が入る。]

 

本綱鹿山林中有之馬身羊尾頭側而長高脚而行速【鹿與

遊龍戲必生異角則鹿得稱龍也】牡者有角夏至則解大如子馬黃質白

班牝者無角小而無班毛雜黃白色孕六月而生子性淫

一牡常交數牝性喜食龜能別良草食則相呼行則同旅

居則環角外向以防害臥則口朝尾閭以通督脉鹿乃仙

獸自能樂性六十年必懷璚于角下班痕紫色行則有涎

不復急走故曰鹿載玉而角班魚懷珠而鱗紫鹿千歳爲

蒼又五百歳爲白又五百歳爲玄瑞應圖云鹿者純善之

獸王孝則白鹿見

 古今すかるなく龝の萩原朝立て旅行人をいつとかまたん

△按鹿多淫而牡夜鳴喚牝秋夜最頻又出田圃食穀菽

 獵人以鹿角根及胎鹿皮或蝦蟇皮作笛吹僞牡鹿之

 音牡匍匐來竟罹弶或入陷穽【但蝦蟇皮之笛則蛇多來集故今惟用胎鹿皮】

 又夏月腰鐵籠焚火狀似松明鹿見火太喜來竟爲人

 所殺謂之照射性怖人不囓不觝如被逐迫則以後足

 彈力甚强如捉兩角相推則人難勝捉片角捏則鹿直

 倒也鹿爲春日神使奈良人家多狎如雞犬【春日生土人勿食鹿】

鹿肉【甘溫】 補中益氣力強五臟【九月以後正月已前可食他月不可食】鹿常

 能別良草【止食葛花葛葉鹿葱鹿藥白蒿水芹甘草薺苨蒼耳】不食他草乃仙獸

 純陽多壽之物故其肉角有益於人無損【△按多食鹿肉損牙齒但

 食之次吃生米則不損屢試然】

鹿茸【甘溫】 壯筋骨生精補髓養血益陽治一切虛損蓋古

 角既解新角初生時如紫茄【月令云冬至麋角解夏至鹿角解陰陽相反如此】

 稍長四五寸形如分岐馬鞍茸端如瑪瑙紅玉破之肌

 如朽木者最善【鹿茸不可以鼻齅此中有小白蟲視之不見入人鼻必爲蟲顙藥不及也】

△按鹿茸【和名乃和加豆乃俗云袋角】茸字【草生貌】俗爲蕈菌之字鹿

 角初生相似未開蕈故然矣長二三寸不尖不堅者爲

 良【以猿尾鹿尾僞之而此等短而有毛】本草必讀云鹿角初生爲茸至堅

 老成角不過兩月久其發生之性雖草木易生者未

 有速於此者其補益於人又豈有過於此物乎

鹿角【鹹溫】 生用則散熱行血消腫辟邪熟用則益腎補虛

 強精活血

鹿角霜【同膠】 補中益氣治腰痛吐血下血婦人血閉無子

 者懷妊安胎久服輕身延年

 煑作法【百代醫宗云】新鹿角三對毎對各長二寸截之取長

 流水浸三日刷浄垢土毎角一斤用楮實子【一兩】桑白

 皮黃臘【各二兩】入鐵鍋水煮三晝夜慢火不可少停水少

 則添熱湯【不可添冷水】日足取出角以脆爲度削去黒皮薄

 切曬乾碾爲末名鹿霜也 其餘于鍋中水慢火再熬

 成膠名鹿膠也【本綱之說亦互交註】今自中華來鹿角膠形圓而

 押朱印云世醫製角膠

造玉法 以鹿骨角爲屑浸醋四五日用其醋煮熟之半

 日取出入朱和調作珠形以贋珊瑚又欲青色則用緑

 青染成【今人造贋玉多用鯨骨削成染色】

鹿皮 治一切漏瘡【燒灰和豬脂納之日五六易愈乃止】

△按鹿皮作革以作皷鞠韤裘等其用最多但倭鹿皮薄

 小而肌不濃也凡暹羅柬埔寨咬※吧太泥太冤等

[やぶちゃん注:「※」=「口」+「留」。]

 西南夷毎年所來鹿皮野馬皮麂皮等大約二十余万枚

 以暹羅麂麞之皮爲最上其野馬皮肌厚麤而爲最下

 

 

しか    斑龍   麀〔(ゆう)〕【牝。】

      麚〔(か)〕【牡。】 䴥〔(か)〕【牡。】

      麛〔(べい)〕【子。】

      麑〔(げい/べい)〕【子。】

鹿【音、「禄」。】

★     密利迦羅〔(みつりから)〕【梵書。】

ロツ    【和名、「加」。俗に云ふ、「之加」。】

[やぶちゃん注:★部分に上図の篆文が入る。]

 

「本綱」、鹿、山林の中に之れ有り。馬の身、羊の尾。頭、側〔(そばだ)ち〕て長し。高き脚にして行〔くこと〕速し【鹿、遊龍と戲〔れば〕必ず異角を生ず。則ち、〔かく成れる〕鹿を龍と稱することを得るなり。】牡には角有り、夏至には、則ち、解(をと)す[やぶちゃん注:ママ。以下同じ。「落とす」。脱け落ちる。事実、ニホンジカの角は毎年抜け替わる。]。大いさ、子馬のごとし。黃〔の〕質〔(ぢ)〕に白班なり。牝は角無し。小にして班無し。毛、雜黃白色。孕むこと、六月にして子を生む。性、淫にして、一牡、常に數牝〔(すひん)〕に交はり、性、喜びて龜を食ふ。能く良草を別〔(わか)〕つ。食ふときは、則ち、相ひ呼び、行くときは、則ち、同じ旅を〔し〕、居るときは、則ち、角を環〔(まは)すに〕外に向けて、以つて害を防ぎ、臥すときは、則ち、口〔を〕尾閭〔(びりよ)〕[やぶちゃん注:肛門。]に朝〔(む)けて〕[やぶちゃん注:向けて。]以つて督脉〔(とくみやく)〕に通〔(つう)〕す。鹿、乃〔(すなは)ち〕仙獸〔にして〕自ら能く樂しむ。性、六十年にして、必ず、璚(たま)を角の下に懷(いだ)く。班痕、紫色。行くときは、則ち、涎〔(よだれ)〕有り。復た急に〔は〕走らず。故に曰ふ、「鹿は玉を載せて、角、班〔(まだら)〕なり。魚は珠を懷きて、鱗、紫なり」〔と〕。鹿、千歳にして蒼と爲り、又、五百歳にして白と爲る。又、五百歳にして玄〔(くろ)〕と爲る。「瑞應圖」に云はく、『鹿は純善の獸なり。王、孝たれば、則ち、白鹿を見る』と。

 「古今」

   すがるなく龝〔(あき)〕の萩原〔(はぎはら)〕朝立ちて

      旅行く人をいつとかまたん

△按ずるに、鹿、多淫にして、牡、夜(〔よ〕る)鳴きて牝を喚(よ)ぶ。秋夜、最も頻りなり。又、田圃に出でて、穀・菽〔(まめ)〕を食ふ。獵人、鹿角の根及び胎〔(はらご)の〕鹿皮、或いは蝦蟇の皮を以つて笛を作りて、吹きて、牡鹿の音〔(ね)〕に僞る。牡、匍匐して來りて、竟〔(つひ)〕に弶(わな)[やぶちゃん注:罠。]に罹(かゝ)り、或いは陷穽(をとしあな[やぶちゃん注:ママ。])入る【但し、蝦蟇の皮の笛は、則ち、蛇、多く來たり集まる故、今、惟だ胎の鹿皮を用ふ。】又、夏月、鐵の籠を腰にし、火を焚き、狀〔(かたち)を〕松明(たいまつ)に似す。鹿、火を見て太〔(はなは)〕だ喜び來りて、竟に人の爲に殺さる。之れを「照射(ともし)」と謂ふ。性、人を怖れて、囓まず、觝(〔つの〕つ)かず。如〔(も)〕し逐はれて迫(せま)れば、則ち、後足を以つて彈(はじ)く。力、甚だ强し。如〔(も)〕し兩の角を捉(とら)へて、相ひ推すときは、則ち、人、勝ち難し。片角を捉へて捏(ねじ)れば、則ち、鹿、直(そのまゝ)倒(たを[やぶちゃん注:ママ。])なり。鹿は春日の神の使ひと爲して、奈良、人家には多く、狎れて、雞・犬のごとし【春日の生土(うぶすな)の人、鹿を食ふ勿〔(な)〕し。】。

鹿肉【甘、溫。】 中[やぶちゃん注:脾胃。漢方で消化器系を指す。]を補し、氣力を益し、五臟を強くす【九月以後、正月已前、食ふべし。他月は食ふべからず。】。鹿、常に能く良草を別つ【止(たゞ)、葛の花・葛の葉・鹿葱・鹿藥・白蒿〔(びやくかう)〕・水芹〔(みづぜり)〕・甘草・薺-苨〔(そばな)〕・蒼耳〔(をなもみ)〕を食ふ〔のみ〕。】他草を食はず。乃ち、仙獸〔にして〕純陽、多壽の物〔なり〕。故に其の肉の〔→と〕角、人に益有り。損〔(そこな)ふこと〕無し【△按ずるに、多く鹿肉を食へば牙齒を損ず。但し、之れを食ひ、次に生米を吃〔(く)〕へば、則ち、損ぜず。屢〔(しばしば)〕試みて、然り。】。

鹿茸(ふくろづの)【甘、溫。】 筋骨を壯にして、精を生ず。髓を補し、血を養ひ、陽を益す。一切の虛損を治す。蓋し、古〔き〕角、既に解(を)ち、新〔しき〕角、初めて生ずる時、紫〔の〕茄(なすび)のごとし【「月令〔(がつりやう)〕」に云はく、『冬至に麋〔(おほじか)〕の角、解〔(お)〕ち、夏至に鹿の角、解〔(お)〕つ』〔と〕。陰陽、相ひ反すること此くのごとし。】。

 稍〔(やや)〕長くして、四、五寸。形、分岐〔して〕馬の鞍のごとし。茸〔(つの)〕の端、瑪瑙〔(めのう)〕・紅玉のごとし。之れを破れば、肌、朽木のごとくなる者、最も善し【鹿茸〔は〕鼻を以つて齅〔(か)〕ぐべからず。此の中に、小さき白き蟲、有り。之れ、視れども見えず、人の鼻に入〔れば〕、必ず、蟲顙〔(ちゆうさう)〕[やぶちゃん注:病名。後注する。]と爲り、藥も及ばざるなり。】。

△按ずるに、鹿茸〔(ふくろづの)〕【和名、乃ち、「和加豆乃(わかづの)」[やぶちゃん注:「若角」・]。俗に云ふ、「袋角」。】は「茸」の字【草の生ずる貌〔(かたち)〕。】、俗に蕈菌(くさびら)[やぶちゃん注:キノコ。]の字と爲す。鹿角、初生〔は〕、未だ開かざる蕈(たけ)[やぶちゃん注:キノコ。]に相ひ似たり。故に然り。長さ、二、三寸。尖らず、堅からざる者、良と爲す【猿の尾、鹿の尾を以つて、之に僞る[やぶちゃん注:「猿の尻尾」を「鹿の角」と称して贋造する。]。而れども、此等は短くして、毛、有り。】。「本草必讀」に云はく、『鹿角〔の〕初生、茸〔(きのこ)〕と爲り、堅く老(ひね)て、角と成るに至りて〔→るまでは〕、兩月〔(ふたつき)〕の久〔しき〕に過ぎず[やぶちゃん注:たった二ヶ月しかかからない。]。又、其の發生の性[やぶちゃん注:ここは「機序」の意。]、草木の生へ[やぶちゃん注:ママ。]易き者と雖も、未だ此れより速やかなる者、有らず。其れ、人に補益あるも又、豈に此の物に過ぐること有らんや』〔と〕。

鹿角【鹹、溫。】 生〔(なま)〕にて用ふれば、則ち、熱を散じ、血を行〔(めぐ)ら〕し、腫〔(はれもの)〕を消し、邪を辟〔(さ)〕く。熟して用ふるときは、則ち。腎を益し、虛を補し、精を強くし、血を活〔(いか)〕す。

鹿角霜〔(ろくかくさう)〕【同じく「膠〔(にかは)〕」。】 中を補し、氣を益し、腰痛・吐血・下血、婦人の血閉〔して〕子〔の〕無き者を治す。懷妊〔せし婦人〕は胎を安んじ、久しく服すれば、身を輕くし、年を延ぶ。

煑作〔(にづく)〕る法【「百代醫宗」に云ふ。】。新しき鹿角三對、毎對、各〔(おのおの)〕長さ二寸に之れを截(き)り、長流水[やぶちゃん注:「本草綱目」の通りであるが「長」の意は不詳。]を取りて、浸すこと三日、垢・土を刷〔(す)りて〕浄くし[やぶちゃん注:「本草綱目」では「刮浄」でこれだと「刮(こす)りて」となる。]、角一斤毎〔(ごと)〕に楮--子(かうぞのみ)【一兩。[やぶちゃん注:明代のそれは三十七・三グラム。]】・桑白皮〔(さうはくひ)〕[やぶちゃん注:桑の根皮。消炎・利尿・鎮咳効果を持つ。]・黃臘〔(わうらふ/くわうらう)〕[やぶちゃん注:蜜蝋のこと。]【各二兩。】を用ひて、鐵鍋に入れて水〔にて〕煮ること三晝夜、慢火〔(とろび)〕にて少(しばら)くも停(とゞ)むべからず。水、少きときは、則ち、熱湯を添ふ【冷水を添ふべからず。】。日、足りて、角を取り出だし、脆(もろ)きを以つて、度と爲し[やぶちゃん注:それで煮込みは充分として。]、黒皮を削り去りて、薄く切り、曬〔(さら)し〕乾し、碾(をろ)して[やぶちゃん注:ママ。]、末と爲し、「鹿霜」と名づくなり。其の鍋の中に餘(のこ)りたる水を、慢火〔(とろび)〕にて再び熬り、膠〔(にかは)〕と成る。名づけて「鹿膠〔(しかにかは)〕」なり【「本綱」の說も亦、互ひに交へ註〔せり〕。】。今、中華より來たる鹿角〔の〕膠は、形、圓くして、朱印を押して云はく、「世醫角膠製」[やぶちゃん注:「世醫(せいい)某(なにがし)、角膠(つのにかは)を製す」。]〔と〕。

玉〔(ぎよく)〕を造る法 鹿の骨・角を以つて屑(すりくづ)と爲し、醋〔(す)〕に浸すこと四、五日、其の醋を用ひて、之れを煮熟すること半日、取り出だし、朱を入れ、和〔(あ)へ〕調へ、珠の形に作り、以つて珊瑚に贋(にせ)る。又、青色ならんと欲せば、則ち、緑青〔(ろくしやう)〕を用ひて染め成す【今の人、贋(にせ)玉を造るに、多く、鯨の骨を用ひ、削り成して色を染む。】。

鹿皮 一切の漏瘡を治す【燒〔きて〕灰〔と成して〕豬(ぶた)の脂(あぶら)に和〔(あ)へ〕、之れを〔患部に〕納(いる)ゝ。日々に五、六たび、易〔(か)〕ゆ[やぶちゃん注:ママ。]。愈〔(い)えば〕乃ち止む。】。

△按ずるに、鹿の皮、革(なめしがは)と作〔(な)〕し、以つて皷〔(つづみ)〕・鞠・韤(たび)・裘(かはごろも)等に作る。其の用、最も多し。但し、倭〔(わ)〕の鹿の皮は薄く小さくして、肌、濃(こまや)かならざるなり。凡そ、暹羅(シヤム)[やぶちゃん注:現在のタイ王国の前身。]・柬埔寨(カボヂヤ)[やぶちゃん注:現在のカンボジア王国の前身。]・咬※吧(ヂヤカタラ)[やぶちゃん注:「※」=「口」+「留」。現在のインドネシアのジャカルタ。十六世紀から十九世紀にかけてジャワ島西部バンテン地方に栄えたイスラム国家バンテン王国の港町として栄えていた。]・太泥(パタニ)[やぶちゃん注:南インド。]。太冤(タイワン)[やぶちゃん注:台湾。]等、西南夷より毎年來たる所の鹿の皮・野馬(やまむま)の皮・麂(こびと)の皮等、大約[やぶちゃん注:凡そ。]、二十余万枚、暹羅〔の〕麂(こびと)・麞(なれあい)の皮を以つて最上と爲し、其の野馬の皮は、肌、厚く麤〔(あら)く〕して最下と爲す。

[やぶちゃん注:哺乳綱鯨偶蹄目反芻亜目シカ科 Cervidae のシカ類。中国には多種のシカがいるが、本邦ではシカ属ニホンジカ Cervus nippon(亜種分類ではホンシュウジカ Cervus nippon aplodontus・キュウシュウジカCervus nippon(四国・九州など)・ケラマジカCervus nippon keramae(慶良間列島。江戸時代に九州から移入されたもの)マゲシカCervus nippon mageshimae(馬毛島。二個体を基に記載されたものの、種子島の個体群を含んだり、分類上の位置は明確ではない)・ツシマジカCervus nippon pulchellus(対馬)・ヤクシカCervus nippon yakushimae(屋久島)・エゾシカCervus nippon yesoensis(北海道)の七亜種となる。但し、ニホンジカは日本固有種ではなく、中華人民共和国・ロシアにも棲息する。朝鮮民主主義人民共和国・ベトナムでは絶滅したと考えられており、大韓民国では絶滅した)。生態その他中国産種のシカ類は、ウィキの「シカ」及び「ニホンジカ」を参照されたい(後者にも中国産ニホンジカ亜種複数種を記載する)。以下の記載も多くを後者に拠った。野生のシカには何度か山行で出逢ったが、丹沢の蛭ヶ岳で昼飯を食っていたら、人慣れしてしてしまった♂の成年鹿がやってきて、私を凝っと見ていたが、私が何もやらないと、私の太腿を右前肢で突かれた。同僚が鹿を叱って(洒落ではない)追い払ったが、私は何か少し淋しい気がした。

「遊龍」不詳。単に蛟龍のように棲息域を水辺に縛られたりしない龍として昇天して自由行動をしている成龍のことを指しているか。

「異角を生ず。則ち、〔かく成れる〕鹿を龍と稱することを得るなり」しかし「龍馬」は「龍鹿」というのは、日本語ではまず聴かんね。

「白班」「班」は「斑」で「まだら」のこと。この誤字は良安の書き癖。

「孕むこと、六月にして子を生む」ニホンジカの場合、九月下旬から十一月に交尾を行い、妊娠期間は約二百三十日。出産は五月下旬から七月下旬で一頭のみ。

「同じ旅を〔し〕」移動する際には一緒に行動し。ニホンジカの場合は、森林から完全に離れる行動をとることは普通はない。また、実際には通常時は雌雄別々に群れを形成する。♀の群れは母系集団で、群れで産まれた♀とその母親で構成されている(♂は生後一~二年で産まれた群れから独立し、生後二年以上の♂は♂のみで群れを形成する)

「尾閭」(びりょ)は「荘子」の「秋水」にある「天下之水莫大於海。萬川歸之不知何時止、而不盈、尾閭泄之不知何時已、而不虛」(天下の水は海より大なるは莫し。萬川之れに歸し、何(いづ)れの時に止(とど)まるかを知らざる。而(しか)も盈みたず[やぶちゃん注:溢れない。]。尾閭(びりよ)は之れを泄(もら)し何れの時にか已(や)むを知らざるも、而も虛(むな)しからず)に拠る語で、「人が見ることは出来ない、海の底にあって絶えず水を排水していると考えられた穴。すべての川から海を経た水の出口に当たると信じられていた所。転じて、排泄することや排泄腔(肛門)の喩え。

「督脉〔(とくみやく)〕に通〔(つう)〕す」督脈は「会陰部から起こって脊柱に沿って上り、後頭部から脳に入いる。さらに頭部の正中を通って頭頂部(百会穴(ひゃくえけつ))に上り、額を循って鼻柱に至り、上歯齦で終わる経絡。鹿は、睡眠中、その体を貫通する気の流れが遅滞せずに効率的に循環するよう、この姿勢をとるのだと言いたいのであろう。これは確かに「仙獸」と言える。

「六十年にして、必ず、璚(たま)を角の下に懷(いだ)く」龍と相性がいいのだから、龍が持っている玉、如意宝珠みたようなものか。

「班痕、紫色。行くときは、則ち、涎〔(よだれ)〕有り。復た急に〔は〕走らず」主語は六十歳を経た珠を角の下に抱いた霊鹿であるので注意。しかし、普通に読むと「班痕、紫色」とは、白い斑(まだら)部分が紫色に変じていると読むのだが、直後に「鹿は玉を載せて、角、班〔(まだら)〕なり」と出るので、訳わからん。

「鹿は玉を載せて、角、班〔(まだら)〕なり。魚は珠を懷きて、鱗、紫なり」というのは宋の陸佃の「埤雅」にも載る。この魚、何歳で珠はどこにあるとですかねえ?

「瑞應圖」東洋文庫版の書名注に、『一巻。孫柔之の『瑞応図記』。清の馬国翰編輯の『玉函山房輯佚書』にある。天地の瑞応の諸物を分類し、図に説明を付けたもの』とある。

「古今」「すがるなく龝〔(あき)〕の萩原〔(はぎはら)〕朝立ちて旅行く人をいつとかまたん」「古今和歌集」の「巻第八 離別歌」の二首目の詠み人知らずの一首(三六六番)、

すがる鳴く秋のはぎはら朝たちて

   旅行く人をいつとか待たむ

である。「すがる」は東国では狩り蜂として知られる「ジガバチ」(昆虫綱 膜翅(ハチ)目細腰(ハチ)亜目アナバチ科ジガバチ亜科ジガバチ族 Ammophilini のジガバチ類を指すのだが、中世の注釈書では鹿のこととする。まあ、その方が意味は素直に落ちる。あの鹿の声は山でよく聴いたが、何かひどく淋しいものだった。

「菽〔(まめ)〕」(音は「シュク」)食用にする栽培種の大豆・小豆・隠元豆などを総称する語。

「胎〔(はらご)の〕鹿皮」鹿の胎児の皮。

「葛の花・葛の葉」マメ目マメ科マメ亜科インゲンマメ連ダイズ亜連クズ属クズ変種 Pueraria montana var. lobata

「鹿葱」単子葉植物綱キジカクシ目ヒガンバナ科ヒガンバナ亜科ヒガンバナ連ヒガンバナ属ナツズイセン Lycoris squamigera の漢名。同種の中文ウィキを見よ。

「鹿藥」単子葉植物綱ユリ亜綱ユリ目ユリ科マイヅルソウ属ユキザサ Maianthemum japonicum の漢名の一つ。同種の中文ウィキの「鹿药」を見よ。下方の「外部連結」に「鹿藥」とある。なお、そこでは学名を Smilacina japonica としているが、これは旧学名のシノニムで、最近、属替えがあったことによる。

「白蒿〔(びやくかう)〕」中文サイトのこちらを見る限りでは、恐らくキク亜綱キク目キク科ヨモギ属アルテミシア・ハーバ Artemisia herba なのであるが(中国北部・西南部及びチベット地区に植生するとする)、本当にこの学名が正しのかどうかは、やや疑問ではある(リンク先のラテン語学名表記からして何だかおかしいのだ)。なお、これは本邦のヨモギ属シロヨモギ Artemisia stelleriana とは別種なので注意されたい(シロヨモギは中国には植生しない)。それで当初、東洋文庫と同じく「しろよもぎ」と振っていたのを音読みにかえた。

「水芹〔(みづぜり)〕」セリ目セリ科セリ属セリ Oenanthe javanica

「甘草」マメ目マメ科マメ亜科カンゾウ属 Glycyrrhiza

「薺-苨〔(そばな)〕」キク亜綱キキョウ目キキョウ科ツリガネニンジン属 Adenophora の一種。或いは本邦では同属のソバナ(蕎麦菜)Adenophora remotiflora を指し、漢名は「薄叶荠苨」であり、中国にも分布し、本種は山菜として食用にもされるから、それに比定しても強ち誤りではあるまいとおも思う。

「蒼耳〔(をなもみ)〕」キク目キク科キク亜科オナモミ属オナモミ Xanthium strumarium。所謂、「ひっつき虫」の本体である。

「新〔しき〕角、初めて生ずる時、紫〔の〕茄(なすび)のごとし」言い得て妙。

「月令〔(がつりやう)〕」「礼記(らいき)」の「月令」篇。月毎の自然現象・古式行事・儀式及び種々の農事指針などを記したもの。

「麋〔(おほじか)〕」単に大きな鹿の意もあるが、ここでは「陰陽、相ひ反する」と言っている以上、特定の種を示さねばなるまい。幸いにして、シカ科シカ亜科シフゾウ属 Elaphurus davidianus を漢名で「麋鹿」(音なら「ビロク」)と呼ぶので、それに比定してよかろう。シフゾウは一属一種で、野生のそれは十九世紀末に絶滅してしまった。ウィキの「シフゾウ」によれば、この奇妙な名について、『シカのような角をもちながらシカでない。ウシのような蹄をもちながらウシでない。ウマのような顔をもちながらウマでない。ロバのような尾をもちながらロバでない。このように四つの動物に似た特徴をもちながら、そのいずれとも異なるために「四不像(中国音:スープシャン)」と呼ばれる』とある。体格もシカ類の中では大きい。

「蟲顙〔(ちゆうさう)〕」実はこれ「徒然草」の第百四十九段に出るのだ。

   *

 鹿の茸(つの)、鼻にあててかぐべからず。小さき蟲ありて、鼻より入りて、腦をはむと言へり。

   *

東洋文庫訳はこの病気を不詳とするが、気になるぞ! 脳を食うとな! 「顙」は「額」の意だ! 鹿の角は鹿の脳に近いぞ! 鹿……羊……牛……脳……おい! これって!?! 異常プリオン蛋白の増加による中枢神経の感染性疾患である伝達性海綿状脳症(Transmissible spongiform encephalopathyTSE:別名:伝播性海綿状脳症:プリオン(prion)病)じゃあねえか? 「虫」が食うように「脳」がスポンジ化するあれだよ! ヒトの「クロイツフェルト・ヤコブ病」、羊の「スクレイピー」、牛の「牛海綿状脳症」などがあるし、鹿にあってもおかしくない!!!

「本草必讀」東洋文庫訳の書名注に『『本草綱目類纂必読』か。十二巻』とのみある。清の何鎮撰になる「本草綱目」の注釈書らしい。一六七六年序。

「其の發生の性、草木の生へ易き者と雖も、未だ此れより速やかなる者、有らず。其れ、人に補益あるも又、豈に此の物に過ぐること有らんや」その角が生える様子は、草木の生え生長しやすい種であっても、この鹿の角の成長のように速いものは、ない。だからこそ、鹿の角が薬として、人のあらゆる部分に補益するところのその即効力も、これ以上のものはないのである。

「鹿角霜」鹿の角を粉末状に砕いた薬剤。

「楮--子(かうぞのみ)」バラ目クワ科コウゾ属コウゾ Broussonetia kazinoki × Broussonetia papyrifera の集合果。

「世醫」官医ではない、世間一般の医師の意。

「漏瘡」化膿した腫れ物のことか。

「西南夷」中国古代に現在の四川省南部から雲南・貴州両省を中心に居住していた非漢民族の総称であり、彼らの居住していた広域地名でもある。チベット(蔵)・タイ(傣)・ミヤオ(苗)などの諸民族に属する。滇(てん)・雟(すい)・哀郎・冉駹(ぜんもう)・邛(きょう)・筰(さく)など、数多く、それぞれが幾つもの部族に分かれ、習俗・言語も異にした。四川省から西南夷を介してビルマからインドへ、また、南越の番禺(現在の広州市)へ交通路が通じており、文物の交流に重要な役割を果たした(以上は平凡社「世界大百科事典」に拠った)。

「野馬(やまむま)」既出項

「麂(こびと)」既注であるが、再掲しておくと、中形の鹿で、ヨーロッパ・中国・中近東と分布域が広い(本邦には棲息しない)、鯨偶蹄目反芻亜目シカ科オジロジカ亜科ノロジカ属ノロ Capreolus capreolus(「ノル」「ノロジカ」とも呼ぶ)であろう。地域によりいくつかの亜種があるが、大きく次の三亜種に分けられる。ヨーロッパノロ Capreolus capreolus capreolus は、ヨーロッパから中近東にかけて分布し、肩高六十~六十八センチメートル。マンシュウノロ Capreolus capreolus bedfordi は、肩高六十五~七十八センチメートル、夏毛と冬毛の色彩的差異があまりない。中国・朝鮮半島などに分布する。オオノロCapreolus capreolus pygargusは、三亜種中、最大で、肩高七十~九十センチメートルあり、アルタイ・アムール地方に産する。毛色は夏毛は赤黄色、冬毛は灰褐色。晩春から初夏にかけて。、成獣の♂はテリトリーを作り、七月下旬から八月上旬の発情期に入ると、♂は♀を追い、二頭は「ノロの輪」と呼ばれる円を描くように走る。妊娠期間は九ヶ月半にもなる場合があり、受精卵の着床遅延が認められている。出産期は五~六月、一産に通常は二子、時に三子、稀に四子を産む。寿命は十五年ほど。ここまでは小学館「日本大百科全書」によった。大修館書店「廣漢和辭典」では「オオノロ」とするのであるが、現行の分布域と、良安が「こびと」とルビするところからは、上記のマンシュウノロの方が相応しい。

「麞(なれあい)」恐らくは一属一種のシカ科オジロジカ亜科ノロジカ族キバノロ属キバノロ Hydropotes inermis と思われる。朝鮮半島及び中国の揚子江流域で、アシの茂みや低木地帯に棲息する小形のシカ。体高四十五~五十五センチメートル、体重九~十一キログラム。シカの仲間であるが、角はなく、上顎の犬歯が牙状になっており、特に♂では刀状に曲がった犬歯が口外に突き出ている。尾は短く、毛色は黄褐色。蹄の幅は比較的広い。単独又はつがいで生活することが多い。シカ類の中では多産で、五~六月に一産で一~三子を産み、時には七子を産むこともある。子の毛色は暗褐色で、背に小さな白斑がある。発情期は晩秋から初冬で、この時期の雄は牙を振るって闘争をする。アシやその他の植物を食べ、寿命は飼育下で約十年(以上は小学館「日本大百科全書」に拠った)。グーグル画像検索「Hydropotes inermisをリンクさせておく。]

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