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2019/05/07

なれをこひずと 伊良子清白 (ハイネ訳詩/附・生田春月訳)

 

なれをこひずと

 

なれをこひずときみはいふ

その言の葉の何あらん

面ばかりをながむれば

よろこばしさぞきはみなき

 

なれを憎むと紅(くれなゐ)の

その唇は語るなり

接吻せよわれを物言はで

さらば心のなぐさまん

 

[やぶちゃん注:明治三六(一九〇三)年五月発行の『文庫』初出(署名「清白」)であるが、総標題「夕づゝ(Heine より)」の下に、「さうび百合ばな」「きみとわが頰の」「頰は靑ざめて」「使」「老いたる王の」「墓場の君の」「うきをこめたる」「戀はれつこひつ」「夕となりぬ」・本「なれをこひずと」の十篇からなる、ハイネ(Christian Johann Heinrich Heine 一七九七年~一八五六年)の翻訳詩群である。本篇は恐らく、一八二三年刊の詩集“Tragödien, nebst einem lyrischen Intermezzo”(「抒情的間奏曲附きの、悲劇」)の“Lyrisches Intermezzo”(「抒情的間奏曲」)の第XI歌である。原詩はこちら(リンク先はドイツ語の「ウィキソース」)。初出は終わりから二行目の「接吻」に「キス」とルビする以外は異同はない。

 前に倣って、生田春月(明治二五(一八九二)年~昭和五(一九三〇)年)の訳を国立国会図書館デジタルコレクションの大正一四(一二五)年春秋社刊生田春月訳「ハイネ全集 第一巻」(「詩の本」)の「抒情插曲」パートから示す。春月のそれは第「十二」歌とする。

   *

 

  十二

 

おまへはわたしを愛しない、わたしを愛しない、

愛しなくともかまはない、

おまへの顏さへ見てをれば

わたしはうれしい、王樣のやうに。

 

おまへはわたしを憎んでゐる、憎んでゐる、

それをおまへのあかい小さな口は言ふ!

でもその口がキスにと差出されさへすれば

それでわたしは滿足する。

 

   *]

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