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2019/05/08

小蝶 伊良子暉造(伊良子清白の本名)

 

小 蝶

 

有明月の影きえて、

ほぼのあくる園のうち、

いづこにかげを休らへん、

董のとこも散りうせぬ。

垣根をつたふ小流の、

音も細りてたえだえに、

なり行くさまのさびしさよ。

 

おもへばかなし過ぎし夢、

花にうかれし其頃は、

溢るゝこびをうつたふる、

乙女のゑみもみしものを。

日影てりそふ前の園、

かすまぬ歌もきゝつるに、

今はそれさへよそにして。

 

友とむつみし唐猫も、

見すてゝ今はよりもこず。

やどゝ定めし野べの花、

散りてむかしのあともなし。

ときどきすぐるうなゐ子が、

蝶こよこよと招くのみ。

かなしきものぞおのがみは。

 

見渡すかぎりわかみどり、

おふるばかりに成にけり。

あれあれ見ゆるあの梢、

むかしとまりしあとなるを、

今はあだなる鳥のこゑ、

友よびかはしうたふなり。

うらやましきはよその空。

 

されどうらまじうらむとも、

かへらぬものをいかにせん、

榮花のゆめはいつしかに、

すぎゆくものといにしへの、

かしこき人ものたまひき。

めぐるははやし風ぐるま、

風にまかせてわれいなん。

 

朝日はいでぬいざいなん、

ふりにしあとはしたはじよ。

野べはにほひぬいざゆかん、

いかで榮華をうらむべき。

われをむかふる久方の、

天津御空の神にます、

ものあるべきやいざや人。

 

[やぶちゃん注:明治二七(一八九四)年三月『少年園』(日本最初の本格児童雑誌とされる雑誌。創刊は明治二一(一八八八)年)掲載。署名は本名の伊良子暉造。伊良子清白十七歳。年譜によれば、この発表の三月に京都の清浄華院(しょうじょうけいん:現在の京都市上京区にある浄土宗の寺。ここ(グーグル・マップ・データ))に独りで下宿を始め、翌月四月に私立医学予備校に入学している。]

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