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2019/05/28

和漢三才図会巻第四十(末) 獸之用 牝牡(めを)

[やぶちゃん注:ここから以下は、本カテゴリの冒頭で述べた通り、「卷第四十 寓類 恠類」の後にある、短い「獸の用」のみを、便宜的にここで電子化注することとする。なお、この「獣之用」を以って「和漢三才圖會」の動物に関わる記載の私のオリジナル電子化注は、遂に、総てを終了することとなる。]

 

 

   獸之用

牝牡【臏母】

說文云畜母曰牝【和名米計毛乃】畜父曰牡【和名乎介毛乃】凡飛者曰雌

雄走者曰牝牡然亦通用雄狐綏綏則是走獸也雉鳴求

牝則是飛禽也凡鳥交接曰交尾獸交接曰遊牝【二共和名豆流

比】 淮南子云犬三月而生豕四月而生猨五月而生鹿

六月而生虎七月而生 春秋說題辭馬十二月而生

凡熊虎狐狸之聲曰嘷【音豪】牛鳴曰吼【吽同】犬鳴曰吠【音廢三字訓皆保由】

凡獸食蒭已久復出嚼之牛羊麋鹿皆然但其名異耳牛

曰※【齝同音鴟】羊曰齥【音泄】麋鹿曰齸【音益皆訓迩介加無】禽獸所食餘曰

[やぶちゃん注:「※」=「齒」+「同」。]

㱚【音殘】字从肉

以鼻動物曰鼿【音兀訓宇世流】

獸直前足坐曰蹲踞【俗云豆久波不】

尙書云中冬鳥獸氄毛【和名不由介】注云鳥獸皆生細毛自温

也毛落更生整理曰毨【音先】毛羽美悅之狀

 

 

   〔(けもの)〕の用

牝牡(めを)【〔音〕「臏母」。】

「說文」云はく、『畜〔(ちく)〕の母を「牝(め)」【和名「米計毛乃〔(めけもの)〕」。】と曰ひ、畜の父を「牡(を)」【和名「乎介毛乃〔(をけもの)〕」。】と曰ふ』〔と〕。凡そ、飛ぶ者を、「雌雄(しゆう)」と曰ひ、走る者を「牝牡(ひんぼ)」と曰ふ。然れども、亦、通用す。〔例へば、「詩經」に〕『雄狐〔(ゆうこ)〕綏綏〔(すいすい)〕』といふときは、則ち、是れ、走〔る〕獸なり。『雉(きじ)、鳴きて牝を求む』といふときは、則ち、是れ、飛〔ぶ〕禽〔(とり)〕なり。凡そ、鳥、交-接(まじは)るを、「交-尾(つる)む」と曰ひ、獸の交-接〔(まじは)〕るを「遊牝〔(つる)む〕」と曰ふ【二つ共に和名「豆流比〔(つるび)〕」。】。「淮南子〔(えなんじ)〕」に云はく、『犬は三月〔(みつき)〕[やぶちゃん注:以下、妊娠期間の月数。]にして生(こ〔を〕う)み、豕〔(ぶた)〕は四月にして生み、猨〔(さる)〕五月にして生み、鹿は六月にして生み、虎は七月にして生む』〔と〕。「春秋說題辭」に、『馬は十二月にして生む』〔と〕。凡そ、熊・虎・狐・狸の聲を「嘷(ほ)ゆる」【音「豪〔(コウ)〕」。】と曰ひ、牛の鳴くを「吼(ほ)ゆ」【「吽〔コウ/ク/イン/オン〕」も同じ。】と曰ふ。犬の鳴くを「吠(ほ)ゆる」【音「廢〔(ハイ)〕」。三字、訓、皆、「保由」。】と曰ふ。

凡そ、獸、蒭(くさ)[やぶちゃん注:草。馬や牛の飼料とする草であるが、その内、本来は乾燥させた干し草を指し、生のそれは「秣(まぐさ)」として区別していたらしい。]を食ひて、已に久しくして、復た出だして、之れを嚼〔(は)〕むを、牛・羊・麋〔(おほじか)〕・鹿、皆、然り。但し、其の名の異なるのみ。牛のを「※(にげか)む」[やぶちゃん注:「※」=「齒」+「同」。原典は『ニケカム』とルビする。反芻動物のそれは一般には「にれかむ」の読みが知られるが、「にげかむ」「にげがむ」の訓もちゃんとある。]【「齝」も同じ、音「鴟〔(シ)〕」。】と曰ひ、羊のを「齥(にげか)む」【音「泄〔(セツ)〕」。】と曰ひ、麋・鹿のを「齸(にげか)む」【音「益」。皆、訓「迩介加無〔(にげかむ)〕」。】と曰ふ。禽獸の食ふ所の餘(わけ)を「㱚〔(ざん)〕」【音「殘」。】と曰ふ。字は「肉」に从〔(したが)〕ふ[やぶちゃん注:「㱚」の旁(つくり)が「月」(にくづき)であることを指す。]。

鼻を以つて、物を動かすを、「鼿〔(こつ)〕」【音「兀〔コツ)〕」。訓「宇世流〔(うせる)〕」。】

獸、前の足を直〔(すぐにし)〕て坐〔(すわ)〕るを「蹲踞(つくぼ)う[やぶちゃん注:ママ。]」【俗に云ふ、「豆久波不〔(つくばふ)〕」。】と曰ふ。

「尙書」に云はく、『中冬、鳥獸、氄毛(ふゆげ)【和名「不由介」。】』〔と〕。〔その〕注に云はく、『鳥獸、皆、細毛を生じて自ら温〔むる〕なり。〔この〕毛、落ちて、更に生じて整理〔せる毛〕を「毨〔(せん)〕」【音「先」。】と曰ひ、毛羽〔の〕美悅の狀なり』〔と〕。

[やぶちゃん注:「說文」「説文解字(せつもんかいじ)」。後漢の許慎の著になる西暦一〇〇年頃に成立した現存する中国最古の字書。全十五巻。漢字を「扁 (へん)」と「旁 (つくり)」 によって分類し、その成立と字義を解説したもの。書名は「文字」を「説解」したという意で、略して「説文」と呼ばれる。部首は「一」に始り、「亥」に終る五百四十部に亙り、各部に属する文字は類義字の系列順で配列されてある。各字は、まず、秦代の小篆を掲げ、その古字がある場合は下に付記して(「重文」と称する)字体の変遷を示す。則ち、見出し字である小篆九千三百五十三字と、その重文千百五十三字が収められてある。漢字の造字法を「象形」・「指事」・「会意」・「形声」・「転注」・「仮借」の現在も分類として現役の「六書 (りくしょ)」 に分類し、各字について、その造字法と字義とを解説している。漢字の本質を説明した最古にして最も権威ある書で、甲骨文字が発見され、音韻論・語源研究の発達した今日にあっても、その解説は概ね正しいとされ、逆に本書があって初めてこれらの研究が進んだ。漢字の配列・分析に使われる「部首」や、以上の「六書」の発明と相俟って、中国の実証的学問研究の端緒を成すものとされる。テキストは宋初の校訂本が規準とされ、清代にはそれを校合した「説文」研究が盛んとなり、多くの注釈が生れた。中でも清代の考証学者段玉裁の「段注説文解字」(全三十巻・一八〇七年成立) が、強引な論証をも含むものの、最も精密なものとされている(以上は「ブリタニカ国際大百科事典」に拠った)。]

「畜〔(ちく)〕」人が何らかの目的を以って飼育する動物のみを指すが、それだと、そうでない動物の♀♂を「牝牡」と呼んではならないことになるので、これが厳密な意味での本来の原義という謂いであると言う意味で示してあるのである。

「米計毛乃〔(めけもの)〕」言わずもがなであるが、「牝獣(毛物)(めけもの)」の謂いであり、後の「乎介毛乃〔(をけもの)〕」も「牡獣」。

「〔例へば、「詩經」に〕『雄狐〔(ゆうこ)〕綏綏〔(すいすい)〕』といふ」「詩経」の「斉風」の「南山」に出る詩句(書誌情報は平凡社「東洋文庫」訳に拠った)。ここは、「♂のキツネが♀キツネを求めて、ゆるやかに身も軽く、水が流れるように野を走ってゆく」というさまを詠んでいる。詩全体は例えば、個人ブログ「raccoon21jpのブログ」のこちらの原文・訓読・現代語訳及び解説を見られたい。

「雉(きじ)、鳴きて牝を求む」これも実際には前の引用に合わせて「詩経」を念頭に置いていよう。同「邶風」の「匏有苦葉(ほうゆうくよう)」の詩句に「雉鳴求起牡」(雉は鳴き その牡(オス)を求め起(はじ)む)とあるからである。全篇は先の方のブログのこちらで読める。

『凡そ、鳥、交-接(まじは)るを、「交-尾(つる)む」と曰ひ、獸の交-接〔(まじは)〕るを「遊牝〔(つる)む〕」と曰ふ【二つ共に和名「豆流比〔(つるび)〕」。】』この部分、私は良安の割注が気に入らない。前の語はそれを動詞として訓じて訓読しているのであるから、割注の内の和名を名詞で示すというのは、そもそもおかしいからである。

「淮南子〔(えなんじ)〕」(「え」は呉音であるが、こう読まねばならない論理的理由は実は全くない)前漢の武帝の頃に淮南(わいなん)王劉安(紀元前一七九年~紀元前一二二年)が学者を集めて編纂させた思想書。

「春秋說題辭」「春秋」に付会された「緯書(いしょ)」(儒家の経書を神秘主義的に解釈した書物類の総称)の一つで、前漢末頃成立と推定されるもの。東洋文庫訳の書名注では、『一巻。無名氏撰』で、『経書をまねて、吉凶禍福や未来のことを予言した書物で』、「春秋」『に仮託した緯書の一つ』とするが、緯書の書名は三文字で附けられるのが一般的であると、個人サイト「学退筆談」の「『春秋説題辞』は「春秋説」の題辞にあらず」にあって、この書名は正しくない旨の批評が記されてある。

「吽」この字、「阿吽(あうん)」の「ウン」であるが、この「ウン」は仏教の呪言(じゅごん)での音であるので、採用しなかった。

も同じ。】と曰ふ。犬の鳴くを「吠(ほ)ゆる」【音「廢〔(ハイ)〕」。三字、訓、皆、「保由」。】と曰ふ。

「麋〔(おほじか)〕」これを「なれじか」と読み、トナカイ(馴鹿:鯨偶蹄目反芻亜目シカ科オジロジカ亜科トナカイ属トナカイ Rangifer tarandus)とする場合もあるが、トナカイは現行では中国に分布せず、文字列から見ても、ここは「大型の鹿」の意でとるべきである。「和漢三才圖會卷第三十八 獸類 麋(おほしか)附・雙頭鹿(大型のシカ或いはシフゾウ)」も参照されたい。

「字は「肉」に从〔(したが)〕ふ」「㱚」の旁(つくり)が「月」(にくづき)であることを指して謂っている。

「鼿〔(こつ)〕」『訓「宇世流〔(うせる)〕」』岩波書店「広辞苑」に「鼿(うせ)る」の見出しで載り、他動詞で活用未詳(四段・下一段活用の両説があるとする)で、『けものが鼻先でものをつき動かす』とあり、「和名類聚鈔」を出典例とする。調べてみると、「和名類聚鈔」の巻第十八の「毛群部第二十九 毛群體第二百三十五」に、

   *

鼿 「説文」云、『鼿【「五」「忽」反。宇世流。】以鼻動物也』。

   *

とある。

「尙書」「五経」の一つである「書経」の古名。「尚(とうと)ぶべき書」の意。夏・商(殷)・周の史官が当時記録したものを、周末に至って孔子が編纂したとされる君主や重臣の訓告を主とするものであるが、中には後世の偽作も含まれているとされる。

「整理〔せる毛〕」しっかりと、再度、生え揃った毛。]

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