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2019/05/07

うきをこめたる 伊良子清白 (ハイネ訳詩/附・生田春月訳)

 

うきをこめたる

 

うきをこめたる物語

夏の夜更けて語らへば

艶(えん)にかなしく戀人は

悌(おもかげ)にして來りけり

 

「魔術の國を默(もだ)しつつ

たどるは二人妹と背よ

月の光はさやかにて

鶯の歌ひびくなり

 

をとめうごかずなりぬれば

ひざまづきたりもののふも

やがて巨人はあらはれぬ

をとめは怯(は)ぢてのがれけり

 

手負ひて騎士はたふれたり

巨人は蹌踉(よろほひ)かへり行く」

仇になききそ物がたり

根無草にはあらずかし

 

[やぶちゃん注:明治三六(一九〇三)年五月発行の『文庫』初出(署名「清白」)であるが、総標題「夕づゝ(Heine より)」の下に、「さうび百合ばな」「きみとわが頰の」「頰は靑ざめて」「使」「老いたる王の」「墓場の君の」・本「うきをこめたる」・「戀はれつこひつ」・「夕となりぬ」・「なれをこひずと」の十篇からなる、ハイネ(Christian Johann Heinrich Heine 一七九七年~一八五六年)の翻訳詩群である。本篇は一八二三年刊の詩集“Tragödien, nebst einem lyrischen Intermezzo”(「抒情的間奏曲附きの、悲劇」)の“Lyrisches Intermezzo”(「抒情的間奏曲」)の第XLVII歌(第四十七歌)である。原詩はこちら(リンク先はドイツ語の「ウィキソース」)。初出は第二連初行が、「魔術の國」が「魔術の園」となっていること、第三連初行が「をとめうごかずなりつれば」であること以外は有意な異同(掲げた後者は朗読上から)のを認めない。但し、前者は原文の単語が“Zaubergarten”(ツァウバーガルテン)であるから、「呪術の園(庭)」「魔術の庭(園)」が相応しく、以下に示すように生田春月もそう訳している。しかし「國」とスケールを大きくしたのは伊良子清白の確信犯であろう。後の巨人の出現は「庭」や「園」より「國」が相応しいから。

 前に倣って、生田春月(明治二五(一八九二)年~昭和五(一九三〇)年)の訳を国立国会図書館デジタルコレクションの大正一四(一二五)年春秋社刊生田春月訳「ハイネ全集 第一巻」(「詩の本」)の「抒情插曲」パートから示す。春月のそれは第「四十六」歌とする)。

   *

 

    四十六

 

わたしの戀はあはれつぽく

くらい光をはなつてゐる、

夏の夜かなしいしんみりした

昔話を聞くやうに。

 

『魔法の園にただふたり

戀人同士がさまようてゐる、

夜鶯(うぐひす)たちは歌うたひ

月の光りはかゞやいてゐる。

 

處女は石像のやうに靜かに立つてゐる

騎士はその前に跪いてゐる、

その時曠野の巨人がやつて來て

處女はおそれて逃げてしまふ。

 

騎士が血みどろになつて斃れた時に

巨人は家(うち)へよろよろ歸つて行く』――

わたしが葬られてしまふとき

この昔話は終るだらう。

 

   *]

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