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2019/06/08

大和本草卷之十三 魚之上 䱱魚/鯢魚 (オオサンショウウオを含む広範なサンショウウオ類)

 

䱱魚  名人魚此類二種アリ江湖ノ中ニ生シ形鮎

 ノ如ク腹下ニツハサノ如クニ乄足ニ似タルモノアリ是䱱魚

 ナリ人魚トモ云其聲如小兒又一種鯢魚アリ下ニ記

 ス右本草綱目ノ說ナリ又海中ニ人魚アリ海魚ノ類記ス

――――――――――――――――――――――

鯢魚 溪澗ノ中ニ生ス四足アリ水中ノミニアラス陸地ニ

 テヨク歩動ク形モ聲モ䱱魚ト同但能上樹山椒

 樹皮ヲ食フ国俗コレヲ山椒魚ト云四足アリ大サ二三

 尺アリ又小ナルハ五六寸アリ其色コチニ似タリ其性

 ヨク膈噎ヲ治スト云日本處〻山中ノ谷川ニアリ京

 都魚肆ノ小池ニモ時〻生魚アリ小ナルヲ生ニテ呑

 メハ膈噎ヲ治ス

○やぶちゃんの書き下し文

䱱魚(にんぎよ)  「人魚」〔と〕名〔づく〕。此の類、二種あり。江湖の中に生じ、形、鮎(なまづ)のごとく、腹下につばさのごとくにして、足に似たるもの、あり。是れ、「䱱魚」なり。「人魚」とも云ふ。其の聲、小兒のごとし。又、一種、「鯢魚」あり。下に記す。右、「本草綱目」の說なり。又、海中に人魚あり。海魚の類に記す。

――――――――――――――――――――――

鯢魚(さんせううを) 溪澗の中に生ず。四足あり。水中のみにあらず、陸地にて、よく歩〔き〕動く。形も聲も「䱱魚」と同じ。但し、能く樹に上〔ぼ〕る。山椒〔の〕樹皮を食ふ。国俗、これを「山椒魚」と云ふ。四足あり。大いさ、二、三尺あり。又、小なるは、五、六寸あり。其の色、「コチ」に似たり。其の性〔(しやう)〕、よく膈噎〔(かくいつ)〕を治すと云ふ。日本、處々〔の〕山中の谷川にあり。京都魚肆〔(うをみせ)〕の小池にも時々生魚〔(せいぎよ)〕あり。小なるを生〔(なま)〕にて呑めば、膈噎を治す。

[やぶちゃん注:分離すると、注が重なるだけなので、特異的に二項を連続して示した。そのため、原典にはない罫線を間に挟んである種々の問題点(「鳴く」とか「樹に上ぼる」とか)はあるが、所謂、両生綱有尾目サンショウウオ亜目サンショウウオ上科 Cryptobranchoidea に属するサンショウウオ科 Hynobiidae の多くのサンショウウオ類(本邦に棲息する種群はウィキの「サンショウウオ」の「おもな日本産種」を参照されたいが、そこだけでも十九種が挙げられており、しかも、この内で日本固有種でないのはサンショウウオ科キタサンショウウオ属キタサンショウウオ Salamandrella keyserlingii 一種のみとされている)、及び、オオサンショウウオ科 Cryptobranchidae のオオサンショウウオ属オオサンショウウオ Andrias japonicus(本種は日本固有種(但し、現在の分布は南西部(岐阜県以西の本州・四国・九州の一部)。なお、別に同属の中国固有種チュウゴクオオサンショウウオ Andrias davidianus がいるので「本草綱目」の内の一種は間違いなくそれを指す)孰れも、特に後者の「鯢魚(さんせううを)」はこれで完全にカバー出来る。

「䱱魚(にんぎよ)」和訓は単に四足を持つことから。実はこの小児のような声で鳴くという明の李時珍の「本草綱目」の記載は、実は先行する幻想地誌「山海経」に書かれた奇魚の属性をずらしてしまったものと思われる。同書の「北山経」に「又、東北二百里、曰龍侯之山、無草木、多金玉。決決之水出焉、而東流注于河。其中多人魚、其狀如䱱、四足、其音如嬰兒、食之無癡疾」とあるのだが、西晋から東晋の文学者で卜者であった郭璞(かくはく 二七六年~三二四年)が注して、「䱱魚。䱱、見中山經。或曰、人魚卽鯢也、似鮎而四足、聲如小兒嗁[やぶちゃん注:音「テイ」。]。今亦呼鮎䱱爲。音蹏[やぶちゃん注:音「テイ」。]」とあるのを無批判にずらしてしまったものなのである。

「鮎(なまづ)」御存じのことと思うが、この漢字をアユ(キュウリウオ目キュウリウオ亜目キュウリウオ上科キュウリウオ科アユ亜科アユ属アユ Plecoglossus altivelis)に当てるのは日本だけ。禅宗の公案的図画「瓢鮎図(ひょうねんず)」で知られる通り、中国ではナマズ(ナマズ目ナマズ科ナマズ属ナマズ Silurus asotus)を指す(中国ではアユは「香魚」)。

「腹下につばさのごとくにして、足に似たるもの、あり」一見、ものものしい言い方なのは、スタートの基本を「魚」と措定してしまった結果、カエルなどと同様の生物としての括りが分類の中で不可能になってしまったからであろうと思われる。その証拠に、中国の本草書では同様の四足と蹼(みずかき)を有する大型のヒキガエル等を、わざわざこのような翼のような足に似たものなどとは言っていない(「本草綱目」ではカエルの類いは広義の「虫類」の「湿生類」に分類している)。

「其の聲、小兒のごとし」サンショウウオ類やオオサンショウウオは一般的に鳴かないと私は思う。「日本サンショウウオセンター」の記事を見ても「鳴かない」とあり(但し、ごく稀に一瞬、おし殺したような声(体内腔を用いた音か)を発することがあり、『ちょっとハスキーな声』と半分おふざけ気味で記してはある)、通常のサンショウウオ類が鳴いたとする記事はざっとみたところではない。ところが一件、サンショウウオ科サンショウウオ属ベッコウサンショウウオ Hynobius ikioi(阿蘇山系以南・霧島山系以北の鹿児島県北部・熊本県・宮崎県)が鳴くという記事を見つけたのだ。個人ブログ「古石交流館みどりの里」の「サンショウウオ(ベッコウ)が鳴く」である。記事の山名と方言と高度から見て、熊本県葦北郡芦北町古石の「大関山」(頂上で標高九百二メートル)と推定される。

   《引用開始》

『静かに』

勇治さんの制止に4人は耳を澄ました。

『ガー、ゲー、ゴー』

大関山の山頂近くの水源。標高約850m。

『これが、ベッコウサンショウウオの鳴き声です』

落ち葉が濡れてコケがはえてどこかでポタッ、、、ポタッと水滴の落ちる程度のかすかな水源となっている大きな岩の狭い隙間から鳴き声が聞こえる。

カエルでもない、カラスでもない、摩訶不思議な声である。

今回はベッコウサンショウウオの孵化を見にきた。

オタマジャクシが卵から孵化するのとほとんど同じように孵化し、すぐに岩の中に帰っていくらしく、ひょっとしたらその現場に行き会うかもしれなかった。

『どこにも無かバイ、オランバイ』

とあきらめてそろそろ帰ろうかと思い始めたときに勇治さんの制止が入った。

『デジカメのムービーモードで音をとることが出来たはずバイ』

慣れないムービーモードにしてスイッチを押し続けた。

写したつもりだがどうもおかしい。

再生してみるがやはりおかしい。

音の記憶として残すとするか。

あっちの岩とこっちの岩で鳴きあっている。

『ガー、ゲー、ゴー』

ひょっとすると恋の季節。今後産卵するのかも知れない。ラブコールしているのかもしれない。

『ゲー、ゴー、ゲー、ゲー、ゲー』

私も似てない鳴き声を出してみるとさらに応えてくる。

サンショウウオを見るよりもうんと珍しい鳴き声を聞くという体験をしたのかもしれない。

道無き林を抜けて山道を少し登ると大関山頂だ。[やぶちゃん注:以下略。]

   《引用終了》

……繁殖期に鳴くサンショウウオがいたとしても、これ、おかしくない気が、そこはかとなくしてきたのである。識者の御教授を乞うものであるが、ここに登場する方々は「確かに鳴く」と言っているのである。

「海魚の類」このずっと後に出る。

「鯢魚(さんせううを)」先に示した中国固有種のチュウゴクオオサンショウウオも現代中国語で「中國大鯢」、俗名で「中國娃娃魚」「娃娃魚」と呼ぶ。但し、ここで益軒は「大いさ、二、三尺あり。又、小なるは、五、六寸あり」と言っているようにオオサンショウウオを含む広義のサンショウウオ類を言っているのである。

「水中のみにあらず、陸地にて、よく歩〔き〕動く」ウィキの「サンショウウオ」によれば、『オオサンショウウオは繁殖期に川を遡上するとき以外はほとんど水中から出ることはないが、他の種類は陸上生活を送ることが多く、森林の落ち葉の下やモグラやネズミが掘った穴の中や、川近くの石の下などに生息する。繁殖期以外は』、『あまり人の目にはふれることはない』とある。

「能く樹に上〔ぼ〕る」これはあり得ないと思う。結局、体に山椒に似た香りがある種がいることから「山椒魚」と呼ばれることから、彼らが「山椒の樹皮を食ふ」と誤認されたに過ぎないと考える。

「コチ」「鯒」で、ここでは海産の条鰭綱新鰭亜綱棘鰭上目カサゴ目コチ亜目コチ科コチ属 Platycephalus の魚類、或いは、それと同じく体が著しく扁平で、頭が大きく、骨板に包まれ、多くの棘状突起や隆起線を持つ形態の似た魚類である。通常は、体を砂中に潜めて目だけを出し、周りの色彩に体色を似せるものであり、サンショウウオ類の形状と似てはいる。

「其の性〔(しやう)〕」ここでは、本邦に於ける漢方医学上の薬理効果を限定的に言っている。

「膈噎〔(かくいつ)〕」「噎」は食物がすぐ喉の附近でつかえて吐く病気を、「膈」は食物が少し下の胸の附近でつかえて吐く病気を指すが、現在では現行の胃癌又は食道癌の類を指していたとされる。しかし、ここは進行したそれではあり得ないから、広義の咽喉や気道附近での咽喉もとの「痞(つか)え」を広汎に指す謂いでよい。]

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