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カテゴリー「尾形亀之助」の205件の記事

2009/12/02

尾形亀之助忌 又は カメリアエレジー

Iro尾形亀之助忌である

 

 

 

 

切り画師の友がこれをプレゼントしてくれた

そのメールに

「連れ合いの尾形優は尾形亀之助の棺に山茶花を納めたとあったから私は尾形の命日は山茶花忌=カメリアエレジーと決めたの」

とあった

尾形亀之助はきっと喜んでいる

時空を超えて 今日は

尾形亀之助と君と僕と 一緒に色ガラスの街を闊歩しているのだ

気をつけないといけない

尾形亀之助は きっと君を僕から奪う――

だから先手を打って 僕は僕の「色ガラスの街」

君を封じ込めた

これでもう 君は 僕だけのものなのです――

2009/09/24

猫の眼月

僕が最近とっても気に入った一枚の知人の絵なんだ!――

僕はこの鼠なんだ!――

窮鼠猫を愛すって知らないか? 知らなきゃ、見れ!

Kc3h00391

ちょっと色編集してころんnote

Nekoto

 

 

 

 

  

 猫の眼月   尾形亀之助

嵐がやんで
大きくくぼんだ空に
低く 猫の眼のような月が出てゐる

私の靜物をぬすんでいつたのはお前にちがひない ――
嵐のあとを
お前がいくら猫の眼に化けても

お前に眼鏡をとられるようなことのないやうにさつきから用心してゐる

2009/09/17

尾形亀之助 詩集 「色ガラスの街」 〈初版本バーチャル復刻版〉

尾形亀之助 詩集 「色ガラスの街」 〈初版本バーチャル復刻版〉を「心朽窩 新館」に公開した。これを以って僕の尾形亀之助についての憂鬱はほぼ完成したと言ってよい。『雨になる朝』と『障子のある家』の2詩集が残るが、これらは『色ガラスの街』の比ではない程レアレアな稀覯本であるから、初出を確認しながらテクストを起こすことは不可能に近い。尾形を愛する僕としては甚だ残念ではあるが――。

一言、この『尾形亀之助 詩集 「色ガラスの街」 〈初版本バーチャル復刻版〉』は、現在唯今望み得る、最良の尾形亀之助『色ガラスの街』のテクストであるということだけは、ここに闡明しておきたい。

2009/09/12

最も正確な尾形亀之助『色ガラスの街』の掉尾の詩「毎夜月が出た」

    毎夜月が出た

           1-

 月が出て 夜が青く光つてゐる
 はつきり生きてゐるとは云へないが 肉色のものが 數へきれないほど
奇妙な形をして動いてゐる
何か惱やんででもゐるやうに そしてどこかしらに性のちがひを示して 
極く接してゐるものもある
 しかし このときも天性は愉快な夢を見てゐた そして何かわからぬが
苦が笑ひをしてゐた

 寢不足をしてゐるのかもしれない
 夢の中に おかしいことがあつてこらへきれずに 笑ひを口もとに浮べ
てしまつたのかも知れない
 でも 胸は靜かに息をしてゐた
 廣廣した中に胸だけが大きく息をしてゐるのが見えた
           2-A
 月の匂ひの寂びしげな中に しつとりと春がとけこんで 淋びしい者は
自分の名を呼ぶ笛のやうな響をかすかに心に聞いた ――

 淋みしい 淋みしい ――
 春
 何處かに一人ぐらゐは自分を愛してゐる者があるだらう ――  青年は
山に登つて遠くを見つめてゐる
 空と 地べたに埋もれてゐるのは
 と 青年は自分の大きな手をひろげてつくづくと見入る
 そして青年の言葉は彼の指さきから離れて 遠く高い煙突などにまぎれ
て極まりなく飛んで行つてしまふ

 まもなく青年は彼の部屋に 寢台の上に弱々しく埋づまつてゐる
 青年の夢は昨日からつづいてゐる
 とぎれた心と心がむすびつかふとする まつ白な夢だ

 夜半 青年は夢に疲れて寢言を云つた
 彼のさし伸べた手の近くにすすけたランプと 山で別れた言葉が幽靈の
やうに立つてゐた
 すすけたランプの古臭い微笑が さし伸べた彼の指さきに吸ひ込まれた
やうに消えると部屋は再びうす暗くなつて
 いま 彼はひとり部屋の中に眠つてゐる
           2-B
 或る所に
 月が出るやうになると 女が男のもとへ通つた
 そして 夜の青じろい月を女は指した
 黑い男と女の影のやうなものが 男と女の足もとのところから出て地べ
たを這つてゐた
 紙のやうに薄い 白い女の顏が男の顏へ擁ひかぶさると ――
 月はそれを青く染め變へた
           3-A
 ゆらゆらと月が出た

 月が空に鏡をはりつめた
 高いのと遠いので虫のやうに小いさく人が寫つてゐた
 家家では窓をしめて燈をともした
 娘は 安樂椅子に腰かけて歌をうたつた

 この わるい幻想の季節の娘について 親達は心を痛めてゐたが
 娘はその手招きを見てゐた
 そして 少しづつかたむいてゆく心に何かしら望みをかけてゐた

 娘は白粉をつけていたが青く見えた
 娘はうつむいて 死んだ目白のことを思つてゐた
 あわれでならなかつた
 月にてらされて地べたに淺く埋づまつてゐることを思つた
 娘は庭へ出た
 そして 娘は月に照らされた
 娘は 月夜のかなしい思慕に美しい顏を月にむけて
 そこには梅の木や松の木の不思議にのびた平らな黑い影があつた
 そして その上に月が出てゐた

 娘はかなしい歌をうたつた
 そして瞳はぬれて 靜かに歩るいてゐた

 娘は欝蒼と茂つた森林に這入つた
 そして そこで娘は彼女のやさしい心にささやいた
 「美しい月夜」
 立木は眠つてゐた 彼女は失なつたものをやさしい彼女の心にたづねた
 娘は 蒼白な月につつまれてにつこりともしない
 そして娘はそつと部屋に這入つた
 月の光りは部屋の中に明るい海のやうに漂つてゐた
 窓近く娘は椅子をひき寄せた
 十八になつた 娘はかなしい
 月が遠い
 娘は顏を掩つた
 と ――  祭りのやうなうたごゑが次第にたかまつてきて 娘の耳にも
聞きとれさうであるが それは靜かな雨の夜にポツンと雨の一しづくがと
よをうつやうな わけもなく淋みしい音色を引いてゐた
 娘の心の底から湧いてくるやうに でもあつた
 娘は眠つてゐるやうに動かない
 娘の影が少しづつずれて そして彼女から離れてしまつた
 そして 月の光りの中に娘の影は笛のやうに細く浮んでゐた
           3-B
 娘が窓から月を見てゐた
 はなやかな月夜の夕暮れである
 「ああ 消えてゆきさうな ―― 」と娘は身をかばうやうに窓を閉めた

 明るく照らされた窓を 月が見てゐた
 そして 娘の見た幻想の中に 自分を見つけた
 針金のやうに細く 青く 水のやうに孤獨な人格をもつた自分を ――
 月が娘の窓近く降りて來ると 部屋の中に力なくすすり泣く娘のなげき
を聞いた
 「戀人よ ――
 戀人よ ――
 今宵は月までが泣いてゐる」
 娘は泣きぬれて顏をあげた
 月は窓を離れた そしてさりげなく月は笛のやうにせまく細く青い 娘
の幻想をよこぎつて通つた
 月は天に歸るまで娘の鳴咽を聞いた
 月の忍びの足音は消された
 あたりはしんとした
 空に青い月が出てゐた
           4-
 青い月夜の夕暮がつゞいてゐた
 人人は 娘の泣く不思議な感情になやまされた

 老人の一人娘も その隣りの娘も
 美しいばかりに 冷めたい顏をして泣きくれてゐた
 娘はみな泣いてゐた
 泣きごゑがふるへて風に吹かれた

 そして空の方へ消えていつた

 人人は空を見あげた
 娘らの泣くこゑの消える はるか空のかなたを見た
 猫がゐる ―― 人人は空のひととこを指さした
 黑い猫がゐる ―― 人人が集まつた そして月を指さした

 娘らの泣くこゑはさびしく響いた
 やさしい娘らの泣くこゑがなまめかしい衣裳につつまれて 夜鳥のやう
に吹かれて消えていつた

「最も正確な」ものにするためには、初版本の一行字数に合わせてブラウザの文字サイズを最小に設定する必要がある。

さて、全集を含めた従来知られているものとはまたしても異なるのである。各自でお比べ戴きたいが、容易に気づくのは漢字や一字空けが違う(一つだけ挙げるなら、2-B の後ろから二行目「白い女の顏が男の顏へ擁ひかぶさると ――」の「擁ひかぶさる」である。ここは1999年思潮社版全集でも「掩」であるが、『色ガラスの街』初版本では、「擁」である。そうして断っておくが、「擁」には「おおう」の意味がちゃんとあり、誤字では決してない、のである)また、見開き頁での改ページについては、私が初版本で読んで、その意味内容や1ページ推定行数・印刷位置等を総合的に勘案して行空けとすべきところを判断したものであり、そこでも従来の全集の『色ガラスの街』所収のものとは異なる

更に――「最も正確な」と名打ったのには取り分けて訳がある、のである。これから公開する予定の『色ガラスの街』初版本バーチャル復刻版の「毎夜月が出た」は、これとは異なる、からである。そしてそれは初版本の版組の誤りであり、それを補正したものが上記の詩だから、である

従って、如何にも偉そうに見えるけれど、本日、唯今、このブログに載る尾形亀之助の「毎夜月が出た」こそが、本当に――本来の『色ガラスの街』に載るはずであった、最も正しい形での、「毎夜月が出た」――今現在、世界で唯一つの――正しい尾形亀之助の「毎夜月が出た」――である、と言えるのである。

そうして――この詩――最後にやっぱり――黒猫が姿を現わす……色ガラスの街には黒猫が……よく似合う……

2009/09/10

情慾 尾形亀之助

何んでも 私がすばらしく大きい立派な橋を渡りかけてゐました ら ――

向ふ側から猫が渡つて來ました

私は ここで猫に出逢つてはと思ふと

さう思つたことが橋のきげんをそこねて

するすると一本橋のやうに細くなつてしまひました

そして

氣がつくと私はその一本橋の上で

びつしよりぬれた猫に何か話しかけられてゐました

そして猫には

すきをみては私の足にまきつこうとするそぶりがあるのです

*  *  *

僕だけの『色ガラスの街』――

もう直きだ――

仔猫よ! 後生だから、しばらく踏み外さずに待つてゐろよ。お前は直ぐ爪を立てるのだから。――

色ガラスの街とは?――尾形亀之助『色ガラスの街』「序の二」をシナリオに再構成して見えてくる僕の色ガラスの街――

(画面オフで)

(モノローグ。尾形亀之助の肉声・「だ」体で)

「その街は人のゐない街だ」――

(間を置いて。今度は、あらたまった「です」体で)

その街は……「一人の人もゐない 犬も通らない丁度ま夜中の街をそのままもつて來たやうな氣味のわるい街です」――

(続けて)

その街は……「街路樹も緑色ではなく 敷石も古るぼけて霧のやうなものにさへぎられてゐ る どことなく顏のやうな街です」――
その街は「風も雨も陽も ひよつとすると空もない平らな腐れた花の匂ひのする街です」――
その街は「何時頃から人が居なくなつたのか 何故居なくなつたのか 少しもわからない 街です」――

(長い沈黙)

『それは    
「こんにちは」とも言はずに私の前を通つてゆく
私の旅びとである』街――

(暫く沈黙)

「そして
私の退屈を淋しがらせる」街な「のです」――

(画面オフのまま雨の音。F.I.)

(外。尾形亀之助の家の裏庭。ズーム・アウトして窓、亀之助の二階の書斎、和机に座る和服姿の尾形の後姿――)

(真っ白な原稿用紙。ペンを執った和服の手が右手から入ってブラック・インクで書き出す。最初、原稿用紙3行目5マス目から『序 の 二』と書き、ちょっと間を置いてから5行目3マス目から、『煙草は私の旅びとである』と書く。暫く間を置いてから7行目冒頭から一気に。一行おきに以下(「そして 暗い日暮れに風が吹いて流れ 雨にとけこむ日暮れを泥ぶかい沼の底の魚のやうに 私と私の妻が居る」は続いた一文で)。カメラは書かれてゆく一字一字のみを追う。その間、ただペン先の擦れる音と、オフで聞こえて来る雨音。)

「朝早くから雨が降つてゐた

そして 暗い日暮れに風が吹いて流れ 雨にとけこむ日暮れを泥ぶかい沼の底の魚のやうに 私と私の妻が居る

私は二階の書齋に 妻は臺所にゐる」

(「る」の字から、ゆっくりズームアウト。『序 の 二』から4行から成る詩『煙草は私の旅びとである』原稿用紙全体が映ったところで、静止。この間もオフで聞こえて来る雨音、そしてズームの途中から幽かに遠くから俎板に当たる包丁の音)――――――

(F.O.)

[やぶちゃん注:モノクロ。「敷石も古るぼけて霧のやうなものにさへぎられてゐ る どことなく顏のやうな街です」の「る」の前の一字空けは初版『色ガラスの街』のママである。これは誤植と思われるが、明らかに空いている。但し、行末であるため、殆んど誰にも気づかれることはない。]

これから 僕がお見せしようとする『色ガラスの街』は 僕の『色ガラスの街』で 他の誰の『色ガラスの街』でも ないのです――

2009/09/06

不幸な夢 尾形亀之助

    不幸な夢

「空が海になる
私達の上の方に空がそのまま海になる
日 ―― 」
そんな日が來たら

そんな日が來たら笹の舟を澤山つくつて
仰向けに寢ころんで流してみたい

『色ガラスの街』について、締めくくるのは――その白眉は、これ意外には、やっぱり、なかった。

思潮社増補改訂版「尾形亀之助全集」は再校訂が必要である

以下、凡そ18件の僕の記載によって(途中にただの引用もあるがそれを除いて)、残念ながら思潮社現代詩文庫は勿論、決定版定本とも言うべき1999年刊の思潮社増補改訂版尾形亀之助全集(秋元潔編)の『色ガラスの街』の部分については、その信憑性に重大な疑義がある、と言わざるを得ない。早急な再校訂が望まれる。

驚天動地阿鼻叫喚震撼信管芋羊羹! 新大発見! 尾形亀之助『色ガラスの街』の「雨 雨」の従来知られている詩には致命的な一行脱落他が有った!!!

    雨 雨

DORADORADO ______

TI ______ TATATA ___ TA

TI ______ TOTOTO ___ TO

DORADORADO

TI ______TATATA ___ TA

TI ______ TOTOTO ___TO

(改頁)

DORADORADO ______

雨は

ガラスの花

雨は

いちんち眼鏡をかけて

 

[やぶちゃん注:驚天動地阿鼻叫喚杜撰御下劣義歯擬態――大変なことを発見してしまった。尾形亀之助の詩の中でも比較的知られた、この音声詩とも言うべき詩。秋元潔編1999年思潮社増補改訂版全集でもどこでも、従来は以下の通り、紹介されてきたし、そのように『色ガラスの街』には所収するものと僕も信じてきた。

 

   雨 雨

DORADORADO――
TI-TATATA-TA
TI-TOTOTO-TO
DORADORADO

TI-TOTOTO-TO
DORADORADO――

雨は
ガラスの花

雨は
いちんち眼鏡をかけて

 

ところが! 比べて頂きたい! 音声部ローマ字のダッシュ部分が全く異なる(『色ガラスの街』に用いられているものは、このブログのブラウザでは表記出来ないのだが、下部に位置するダッシュ状のもので、中央に走るダッシュや短いハイフンとは全く違う記号なのである)。

そして! 何と! 第二連冒頭から「TI ――TATATA ― TA」の一行が脱落している! 考えられないことである!

――ショック、きつい、右腕、かたい――他にも、全集にもない一字空けや一行空けの脱落を発見したが、このひどい発見で霞んでしまった(最早指摘する気力も失せたという意味である)。そこはまた、バーチャル・ウエッブ版公開に譲る。但し、僕の目的は校閲にあるのではない。僕は今日、多量にアップしたこれらの注の内容を、バーチャル・ウエッブ版に組み込む等と言う、如何にもお洒落じゃないことをするつもりは、毛頭ない。僕が目指すのは、あくまでお洒落な詩集『色ガラスの街』の初版を読んだ気になってもらうためのページなのである――

尾形亀之助『色ガラスの街』の「ある晝の話」のネット上の電子テクストの誤りについて その他 空行の欠落について

    ある晝の話

疲れた心は何を聞くのもいやだ と云ふのです

勿論 どうすればよいのかもわからないのです

で兎に角 ――
私は三箱も煙草を吸ひました

(改頁)
かすかに水の流れる音のするあたりは
ライン河のほとりなのか――
    ×

どうしてこんなだらう と友人に手紙を書いて
私は外出した

[やぶちゃん注:ネット上では、本詩は、

    ある晝の話

疲れた心は何を聞くのもいやだ と云ふのです
勿論 どうすればよいのかもわからないのです
で兎に角 ――
私は三箱も煙草を吸ひました

かすかに水の流れる音のするあたりは
ライン河のほとりなのか――

    ×

どうしてこんなだらう と友人に手紙を書いて
私は外出した

といった感じになっている。第一連の二箇所の行空けが実行されていない。これも圧倒的なネット上テクストの底本であるところの思潮社現代詩文庫版「尾形亀之助詩集」が誤っているためである。また、全集では「×」の前後を等間隔にしているが、『色ガラスの街』では上記の通り、×の後に有意の一行空けが行われている。確かにこの行空けは不信だ。恐らく版組の誤りである。であるが、以前から申し上げている通り、不自然なままにして、注記するか、訂正して訂正済注記をするか、それが後世に残す全集の編集者の当然の義務であると僕は思う。]

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