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カテゴリー「貝原益軒「大和本草」より水族の部【完】」の224件の記事

2020/09/13

大和本草卷之十三 魚之下 ビリリ (神聖苦味薬) / 「大和本草」の水族の部~完遂

 

【蠻種】[やぶちゃん注:初めて目にする頭書である。]

ビリヽ 紅夷國ヨリ來魚ノ膽ナリ不詳其魚之形狀主

治赤白痢疾腹痛心痛又解諸獨毒魚菌毒水ニテ

送下ス瘧發日朝水ニテ用ユ虫クヒ齒ニハ其穴ヲ可塞○

諸虫獸傷水ニテ付○頭面瘡に付○諸腫痔瘡水ニ

和シ付ル○打撲杖瘡ニ貼ル○天虵毒ニ水ニテ付○鷹ノ

羽虫ニ水ニテ付ル驚風產後積塊氣付ニ用右症何レモ

一時二三分充水ニスリ立可用服後半日生菜ヲ

食ヘカラス右ノ功能未知可否姑記所聞見尓

○やぶちゃんの書き下し文

【蠻種】

ビリヽ 紅夷國〔(こういこく)〕より來〔(きた)る〕魚の膽〔(きも)〕なり。其の魚の形狀、詳らかならず。主治、赤白〔(せきびやく)の〕痢疾・腹痛・心痛。又、諸毒、毒魚と菌毒を解す。水にて送〔り〕下す。瘧〔(おこり)は〕、發〔(はつ)せる〕日の朝、水にて用ゆ。「虫くひ齒」には、其の穴を塞ぐべし。

○諸虫獸〔による〕傷、水にて付く。

○頭面瘡〔(とうめんさう)〕に付く。

○諸〔(もろもろの)〕腫〔(はれもの)〕・痔瘡〔(じさう)〕、水に和し、付くる。

○打撲・杖瘡〔(ぢやうさう)〕に貼る。

○天虵毒に水にて付く。

○鷹の羽虫に水にて付くる。驚風・產後・積塊〔(しやくくわい)〕・氣付に用ふ。右症、何れも、一時、二、三分〔(ぶ)〕充〔(あて)〕、水に、すり立〔て〕、用ふべし。服して後、半日、生菜〔(なまな)〕を食ふべからず。右の功能、未だ可否を知らず、姑〔(しばら)〕く聞見〔(ぶんけん)〕するの所を記すのみ。

[やぶちゃん注:最後「尓」の右下に「ニ」が奥ってあるが、衍字であろう。

 さても。最後の最後に困らされる。全く何だか分からない。一つだけ、赤松金芳氏の論文「中井厚沢とその著書「粥離力考」(『日本醫史學雜誌』第十巻第二・三号。昭和三九(一九六四)年発行。PDF)で、是非、読まれたいが、そこではその正式名をヘイラ・ピクラ(Hiera Picra)とし、所謂、万能薬「神聖苦味薬」の一種であるようだ(魚の肝(きも)由来というのはガセネタのようである)。而して、これは所謂、錬金術の中で創造された下らぬものであるような気がした。

「紅夷國」「紅い毛の夷人」で、江戸時代に欧米人を卑しんで言った語。

「赤白〔の〕痢疾」赤痢(下痢・発熱・血便・腹痛などを伴う大腸感染症)と、出血を伴わない下痢の内、特に小児に多いコレラに似た感染症を指す。

「瘧」マラリア。

「虫くひ齒」虫歯。

「頭面瘡」広く頭部から顔面に発症する蕁麻疹様の皮膚疾患を指す。

「杖瘡」杖を必要とする打撲或いは関節炎やリュウマチを指すか。

「天虵毒」全身性に多発増殖する悪性の腫瘍疾患を指すようである。

「鷹の羽虫」鳥に有意に寄生するダニ類を指すのであろう。

「驚風」漢方で、小児のひきつけを起こす病気の旧称。癲癇の一型や髄膜炎の類いとされる。

「積塊」現代仮名遣「しゃくかい」。昔、体内の毒素が長い間に積もって出来ると考えられていた硬質の腫瘍。癌以外の良性のシコリも含まれる。

「二、三分」一分は三十七・五ミリグラム。

 

 これを以って二〇一四年一月二日に始めた「大和本草」の水族の部の電子化注を終わる。永い間、お附き合い戴き、本当に――「ありがたう」――を申し上げる。]

大和本草卷之十三 魚之下 䱒(しほうを) (塩漬け)

 

䱒 塩漬魚ナリ鯛鱖鱒大口魚鰷鯔等皆佳ナリ久ニ

堪フ塩引ニ乄乾シ薄聶テ乾堅魚ノ小片ト同シク酒

ニ浸シ食フ酒ビテト云鱖最ヨシ油多キハ病人ニイム痰ヲ

聚ム大口魚性尤カロシ

○やぶちゃんの書き下し文

䱒(しほうを) 塩に漬〔(ひた)〕す魚なり。鯛・鱖〔(さけ)〕・鱒・大口魚・(たら)・鰷〔(はや)〕・鯔〔(ぼら)〕等、皆、佳なり。久〔(ひさしき)〕に堪ふ。塩引〔(しほびき)〕にして乾し、薄く聶(へ)ぎて乾す。堅魚(かつを)の小片と同じく、酒に浸し、食ふ。「酒びて」と云ふ。鱖、最もよし。油多きは、病人に、いむ。痰を聚〔(あつ)〕む。大口魚、性、尤も、かろし。

[やぶちゃん注:広義のガッツり仕込んだ塩漬けである。

『「酒びて」と云ふ。鱖、最もよし』「鮭の酒びたし」として良く知られ、私も大好物である。]

大和本草卷之十三 魚之下 糟魚麹魚 (粕漬け・麹漬け)

 

糟魚麹魚 鰷鱖蚫鱸鰡皆佳シ糟魚ハ早ク熟乄不

堪久麯魚ハヲソク熟乄久ニ堪フ一年ヲ歷テモ不敗又

アフリテモ煮テモヨシ糟魚ハ酒ト同時不可食滯塞

○やぶちゃんの書き下し文

糟魚麹魚〔(かすうを かうぢうを)〕 鰷〔(はや)〕・鱖〔(さけ)〕・蚫〔(あはび)〕・鱸・鰡〔(ぼら)〕、皆、佳し。糟魚は早く熟して、久〔しき〕に堪へず。麯魚は、をそく[やぶちゃん注:ママ。]、熟して久〔しき〕に堪ふ。一年を歷〔(へ)〕ても、敗〔(くさ)〕れず。又、あぶりても、煮ても、よし。糟魚は酒と同時に食ふべからず。滯塞〔(たいさい)〕す。

[やぶちゃん注:現行も行われている粕漬けや麹漬け。ここを見ると、案に相違して、益軒先生、鮒鮓はOKらしい。でもどうかな? 発酵系は九州の人はダメな人が多いからなぁ。]

大和本草卷之十三 魚之下 肉糕(かまぼこ)

 

【和品】

肉糕 鯛鱸ハモキスコイカナマヅエソカマス皆カマホ

コトスヘシ或二三種マシユルモヨシスリタタキテ蒸炙ユヘニ

性和ナリ病人食フヘシ最益人補虚新鮮ナル魚肉ヲコソ

ケ取テ筋骨ヲ去石臼ニテ初ヨリ塩ヲ加ヘ能スリタタキ

テ後米泔ト酒トヲ加フ鹽ヲ早ク加レハスリカタケレ𪜈早ク加

ヘテヨクスルヘシ泔と酒トニ和スレハ柔ナリ板ニツケテウ

ラヨリヤクヲモテヨリ直ニヤケハ皮コハシ不燒シテセイロウ

ニテムシテ後少ヤク尤好ヤハラカナリ夏ハ塩少過セハ堪

久又スリタル肉ヲ短板ニツケ鍋ニ熱湯ヲ沸シテ入ヨク

煮テ取アケ炭火ニテ少しコケ色ニナルホト炙ル炙タルヨリ

蒸タルモ煮タルモヤハラカニテ老人虚人ニ益アリ肉糕ハ中

華ノ書ニ不見本邦ニモ古ハ無之近世始製ス又ウケ

ト云ハ肉糕ヲヤカスシテ團ニ乄羹ニ入レテ煮食スルヲ云魚

肉ヲスリタタキ酒ト塩泔ヲ加フ油多キ魚ハ水ニテ煮テ

取アケ羹ニ加フヘシ

○やぶちゃんの書き下し文

【和品】

肉糕(かまぼこ) 鯛・鱸・はも・きすご・蚫〔(あはび)〕・いか・なまづ・えそ・かます、皆、「かまぼこ」とすべし。或いは、二、三種、まじゆるも、よし。すりたたきて、蒸〔し〕炙〔る〕ゆへ[やぶちゃん注:ママ。]に、性〔(しやう)〕、和なり。病人、食ふべし。最、も人を益し、虚を補す。新鮮なる魚肉をこそげ取りて、筋骨を去り、石臼にて、初めより塩を加へ、能く、すりたたきて後、米泔〔(ゆする)〕と酒とを加ふ。鹽を早く加へれば、するがたけれども、早く加へて、よくするべし。泔〔(ゆする)〕と酒とに和ずれば、柔〔か〕なり。板につけて、うらより、やく。をもてより直〔(じき)〕にやけば、皮、こはし。燒かずして、「せいろう」にて、むして、後、少し、やく〔は〕尤も好し。やはらかなり。夏は、塩、少し過ぐせば、久しく堪〔(た)〕ふ。又、すりたる肉を短〔き〕板につけ、鍋に熱湯を沸〔(わか)〕して入〔れ〕、よく煮て取あげ、炭火にて、少し、こげ色になるほど、炙〔(あぶ)〕る。炙りたるより、蒸したるも、煮たるも、やはらかにて、老人・虚人に益あり。肉糕〔(かまぼこ)〕は中華の書に見えず。本邦にも古くは、之れ、無く、近世、始めて製す。又、「うけ」と云ふは、肉糕をやかずして、團〔子(だんご)〕にして羹〔(あつもの)〕に入れて、煮〔て〕食するを云ふ。魚肉を、すりたたき、酒と塩・泔〔(ゆする)〕を加ふ。油多き魚は水にて煮て、取りあげ、羹〔(あつもの)〕に加ふべし。

[やぶちゃん注:「肉糕」は「肉餻」とも書くが、今は「蒲鉾」が一般的である。これも古い歴史のある加工食材で、岡田稔氏の論文「かまぼこのピンからキリまで」(『調理科学』第十六巻第三号一九八三年発行・ここからPDFでダウン出来る)によれば、平安時代の「類聚雑要抄」(るいじゅうぞうようしょう:寝殿造の室礼と調度を記した古文献。摂関家家司であった藤原親隆が久安二(一一四六)年頃に作成したと推定されている)には、関白藤原忠実が永久三(一一一五)年に転居祝いに宴会を開いた際に、串を刺した蒲鉾の図が載っているとある。現在のような板に載った形になるのは室町中期(一五〇〇年頃)であるらしい。なお、歴史については、恐らく「手づくり アイスの店 マルコポーロ 料理の歴史雑学 かまぼこ・天ぷら歴史」のページが異様に詳しい。忠実の宴会に出た竹輪型の蒲鉾の再現画像も見られる。

「なまづ」新鰭亜綱骨鰾上目ナマズ目ナマズ科ナマズ属ナマズ Silurus asotus である。以外かも知れぬが、所持する小学館「食材図典Ⅱ 加工食材編」の「練り物①」によれば、室町後期の享禄元(一五二八)年に伊勢宗五(吾)なる武士が記した武家故実書「宗五大双紙」に『「かもぼこはなまづ本也」として、本来のかまぼこ原料はナマズであったと記し、続いてハモ、イカ、タイ、スズキ、キス、アワビ、カマスなどを載せている』とし、元禄六(一六九三)年に書かれた人見必大の「本朝食鑑」には『アマダイ、ヒラメ、ハゼ、ボラ、サケ、エビ、フカなどが載る。いずれも地元沿岸の鮮魚が原料であった』とあることから(同書は本書刊行(宝永七(一七〇九)年)に先立つこと十二年前で、しかも蒲鉾が市井にある程度の販路が拡大されない限りは、こうした記載をしなかったであろうと私は思う)、江戸中期には蒲鉾は広く販売されていたものと考えてよいであろう。

「米泔〔(ゆする)〕」二字でかく読んでおいた。米の研ぎ汁のこと。かつては洗髪に用いられ、この語も元は専ら「頭髪を洗い、梳(くしけず)ること」或いは「それに用いる暖めた米の研ぎ汁」などを指した。

「せいろう」「蒸籠」。せいろ。

「少し、やく」「少し、燒く」。

「少し過ぐせば」少しばかり大目に入れれば。

「久しく堪〔(た)〕ふ」長く保存に耐える。

「虚人」漢方で明白に「虚証」を示している人或いは病人。慢性的に虚弱で体力がない体質の人や、疾患によって機能が低下したり、生理的物質が有意に不足した、ある種、病的状態にある人を指す。

「肉糕〔(かまぼこ)〕は中華の書に見えず」似たような加工食材を知らない。恐らくは本邦でオリジナルに発展してきた加工食品である。ウィキの「蒲鉾」にも中文のそれはない。

「うけ」小学館「日本国語大辞典」にも載らないが、漁師の網につける丸い木製の「うき」を意味する「浮子(うけ)」、或いは河川底に定置して魚を漁る筒状の仕掛けである「筌(うけ)」(但し、この語自体が「うき」由来の可能性もある)か。前者か。

「羹〔(あつもの)〕」「熱物(あつもの)」で、魚鳥の肉や野菜を入れた熱い吸い物。本来のこの漢字は「丸煮にした子羊」と「美味い」の意である。]

大和本草卷之十三 魚之下 鮑魚(ほしうを) (魚の干物) 

 

鮑魚 時珍云乾魚也又乾鮝ト云淡鮝ハ塩ニ漬サズ

シテ乾スヲ云漢書師古注鯫【質渉切シラホシ】不

[やぶちゃん注:【 】は枠入。所謂「反切」の割注で、「鯫」をそれで示して、以下に和訓を附したもの。ブログでは再現出来ないので、かくした。]

著塩而乾者

○やぶちゃんの書き下し文

鮑魚(ほしうを) 時珍云はく、『乾魚〔(ほしうを)〕なり』〔と〕。又、『乾鮝〔(けんしやう)〕」と云ふ』〔と〕。淡鮝(しらほし)は塩に漬(ひた)さずして乾すを云ふ。「漢書」師古注〔に〕『鯫【「質」「渉」〔の〕切。「しらほし」。】、塩に著〔(つ)〕けずして乾す者』〔と〕。

[やぶちゃん注:「鮑魚」は一度塩漬けにしたものを乾したものを指す。「鮑」は現行では「あわび」を専ら指すが、それ以外に「塩漬けにした魚」の意がある。

「乾鮝」(現代仮名遣「けんしょう」)の「鮝」は「鯗」=「鱶」の異体字で、この字には鮫の「ふか」の意以外に「干物」の意がある。「本草綱目」の「鮑魚」の「集解」の中に『鮝、亦、乾魚之總稱也』と記されてある。

『「漢書」師古注』初唐の学者顔 師古(がん しこ 五八一年~六四五年)が皇太子承乾の命により、「漢書」(後漢の章帝の時、班固・班昭らによって編纂された前漢のことを記した歴史書)全百巻の注釈を作成したもの。六四一年完成。

「鯫」この字には現在は一つに「雑魚」の意がある。この記事は、早稲田大学図書館の「古典総合データベース」の「漢書」師古注の清の一六五六年刊の版本で発見した。ここの左頁の主行三行目の「鮿鮑千鈞」の割注の冒頭の部分である。「鮿」(音「チョウ」(現代仮名遣))の字も「ひもの」を指す。

 

 なお、国立国会図書館デジタルコレクションの底本と同じ版本のこちらには、後人(恐らくは幕末か明治以降)によるものと思われる補注的な貴重な書き込みがあるので、それを電子化しておく。まず、

・冒頭の「鮑魚」の左にルビで『クサヤノヒモノ』

とある。私は「クサヤ」の名を本草書で見ることは、そうそうなかった。

・「鮑魚」の右下に『師古曰今之䱒魚也』

とある。先に示した師古注に続いて出ているので、今一度、見られたい。なお、「䱒」は「𩸆」と同字で、音は「ヨウ」、やはり塩漬けの魚を示す漢語である。

・「漢書」の左下に『貨殖傳』

と記す。私が膨大な「漢書」から容易に探し得たのは、この記載のお蔭である。

・「鯫」の反切の頭の左上に『今漢書作音輙』

とある。先の「漢書」を見ると、「輒」であるが、この字は「輙」(音「テフ(チョウ)」)の異体字であるから問題ない。

・本文の最後に『張良傳鯫音才垢反索隱曰―小魚也因按今ノゴマメノ類カ又云煏室乾之者鯫据之乃鳥ノ下ヱニスルヤキバヤノ類』

とある。流石に読みにくいので、試みに無理矢理、訓読してみる。

 「張良傳」に『鯫、音「才」・「垢」の反』〔と〕。「索隱」に曰はく、『小魚なり』と。因りて按ずるに、今の「ごまめ」の類〔(たぐひ)〕か。又、云はく、『室に煏(ふく(?))して之れを乾かす者は、鯫、之れに据〔(す)〕ふ』〔と〕。乃〔(すなは)ち〕、鳥の「下〔した〕ゑ」にする「やきばや」の類〔(たぐひ)〕〔か〕。

そうして、もしや、と思って、先に「漢書」の「張良傳」を調べたところ、頭の反切は、ここにあった(右頁九行目にある二行割注)。『服虔曰鯫音七垢反鯫小人也臣瓚口楚漢春秋鯫姓師古曰服說是也音才垢反』の最後の部分を引いたものであることが判る。次の「索隱」とは「史記索隱(しきさくいん)」で、唐の司馬貞による「史記」の注釈書である。その「劉侯世家」の注の中に『鯫生【吕静云鯫魚也謂小魚也音比垢反臣瓚按楚漢春秋鯫生姓解】』とあるのを中文サイトで発見した。「煏」は音が判らぬが、現代中国語では「火で乾かす」の意である。「ごまめ」は「田作り」のことで、あの原材料はニシン目ニシン亜目カタクチイワシ科カタクチイワシ亜科カタクチイワシ属カタクチイワシ Engraulis japonicus の幼魚の乾燥品である。「下餌」は鳥の餌の中で昆虫類や魚を粉末にしたものを指す(「上餌」は穀類(大豆や小麦など)の粉末を混ぜたものを指す)。但し、後の「ヤキバヤ」という呼称は不詳。ネット検索でも掛かってこない。]

2020/09/12

大和本草卷之十三 魚之下 鱁鮧(ちくい なしもの しほから) (塩辛)

 

鱁鮧【ナシモノ シホカラ】孫愐唐韻曰鹽藏魚腸也○諸魚介ノ中

[やぶちゃん注:【 】は二行割注部。前が右に、後が左に記されてある。]

海膽海參腸ヲ上品トス鰷腸肉ト子ヲ加ルモ亦

好鯛腸及子鯖肉及背腸蚫肉メハルノ子鱖ノ子鰹

魚肉海鰮寄居蟲皆可作鱁鮧味好然トモ皆腥

穢ノ物能聚痰病人勿食服藥人最不可食損藥

力○鰾亦鱁鮧ト云同名異物也○魚鳥ノ醢性味

共ニ鱁鮧ニマサレリ魚鳥ノ生肉ニ鹽麯ト醇酒ヲ加

ヘテ作之四時共ニ時時可作之老人虛人朝夕食

之而可也製法ハ獸類兔ノ下ニ詳之可考鳥ハ雁鳬

小鳬鳩ケリツグミ雀シトヽヒバリウツラ等魚ハ鰷鱖

鯛鱸鯔鯖キスゴ肥テ味ヨキ時可用皆皮ト筋ヲ

ヨク去ヘシ小鳥ハ皮トモニクダク右ノ肉醢の法中夏

ノ書ニ出タリ

○やぶちゃんの書き下し文

鱁鮧(ちくい)【なしもの しほから】孫愐〔(そんめん)〕が「唐韻」に曰はく、『鹽藏の魚腸なり』〔と〕。

○諸魚介の中、海膽(うに)・海參腸(このわた)を上品とす。鰷腸(うるか)に肉と子を加ふるも亦、好し。鯛の腸及び子、鯖の肉及び背腸(せわた)、蚫〔(あはび)〕の肉、「めばる」の子、鱖(さけ)の子、鰹魚(かつを)の肉、海鰮(いはし)・寄居蟲(がうな)、皆、鱁鮧と作〔(な)〕すべし。味、好し。然〔(しか)れ〕ども、皆、腥穢〔(せいゑ/せいわい)〕の物〔にして〕、能く痰を聚〔(あつ)〕む。病人、食ふ勿〔(なか)〕れ。藥を服〔する〕人、最も食ふべからず。藥〔の〕力を損ず。

○鰾(にべ)も亦、「鱁鮧」と云ふ。同名異物なり。

○魚鳥の醢(しゝびしほ)、性〔しやう〕・味、共に鱁鮧にまされり。魚鳥の生肉に鹽麯〔(しほかうじ)〕と醇酒〔(じゆんしゆ)〕を加へて、之れを作る。四時共に、時時、之を作るべし。老人・虛人、朝夕、之れを食ひて可なり。製法は獸類「兔〔(うさぎ)〕」の下に之れを詳かにす〔れば〕、考ふべし。鳥は雁〔(かり)〕・鳬〔(かも)〕・小鳬・鳩・けり・つぐみ・雀・しとゝ・ひばり・うづら等、魚は鰷〔(はや)〕・鱖〔(さけ)〕・鯛・鱸〔(すずき)〕・鯔・鯖・きすご、肥えて味よき時、用ふるべし。皆、皮と筋〔(すぢ)〕を、よく去るべし。小鳥は、皮ともに、くだく。右の肉醢〔(ししびしほ)〕の法、中夏[やぶちゃん注:ママ。「中華」の誤記であろう。]の書に出でたり。

[やぶちゃん注:「鱁鮧(ちくい)【なしもの しほから】」塩辛或いは塩麴漬け。「なしもの」はこの漢字に当て訓される。「なしもの」は広く塩辛だけでなく魚醤 (うおひしお:ぎょしょう)にも用いられる。但し、現行では、後に出る、アユの塩辛である「うるか」にこの漢字を当てている。ウィキの「うるか」によれば、『鮎の内臓のみで作る苦うるか(渋うるか、土うるか)、内臓にほぐした身を混ぜる身うるか(親うるか)、内臓に細切りした身を混ぜる切りうるか、卵巣(卵)のみを用いる子うるか(真子うるか)、精巣(白子)のみを用いる白うるか(白子うるか)等がある』。『また、現在では保護野鳥として捕獲が禁止されているが、かつては岐阜県中津川市などの山岳地帯では、鳥の鶫』(スズメ目ヒタキ科ツグミ属ツグミ Turdus eunomus)『の心臓や腸を細かく切って塩蔵して発酵させた「つぐみうるか」という塩辛もあった』とある。実はこれは私の特異点で、苦手である。

『孫愐が「唐韻」』唐代の孫愐(生没年未詳)編した七五一年に成立した韻書。中国語を韻によって配列し、反切 (はんせつ) によってその発音を示したもので、隋の陸法言の「切韻」を増訂した書の一つ。後に北宋の徐鉉(じょかい)によって「説文解字」大徐本の反切に用いられたが、現在では完本は残っていない。

「海膽(うに)」卵の塩辛であるから、「雲丹」が正しい。

「海參腸(このわた)」ナマコの腸の塩辛。「海鼠腸」とも書く。塩辛としては珍しくビタミンAが豊富である。私がクチコ(口子:ナマコの生殖巣のみを抽出して軽く塩をし、塩辛にしたものが「生クチコ」、干して乾物にした「干しクチコ」は形から「バチコ」(撥子)とも呼ぶ。他に「コノコ」(海鼠子)とも呼ばれる)に次いで好物とするものである。

「鯛の腸及び子」「子」は卵巣のこと(以下同じ)。伊豆の温泉宿で食したことがある。美味い。歴史が古く、室町初期の京都山科に住んでいた公家の日記にこの塩辛の記載が出る。

「鯖の肉及び背腸(せわた)」食べたことがない。ここに島根県美保関の「松田十郎商店」の広告がある。これはもう、小泉八雲所縁の地なれば! 行って食べたい!!! この製法では『骨と内臓を除去し』とあるものの、漬け込む秘伝の長年継ぎ足されたタレが『鯖の身や皮、わたから出る旨みがたっぷり染み込んだ』とある。

「蚫〔(あはび)〕の肉」現在も三陸に於いて「としろ」「うろ漬け」「福多女(ふくため)」の名でアワビの内臓の塩辛として製造されている。かなり塩辛いが、酒肴の珍味で、私も大好物である。四十三年以上も前になるが、ある雑誌で、古くから東北地方において、猫にアワビの胆を食わせると耳が落ちる、と言う言い伝えがあったが、ある時、東北の某大学の生物教授が実際にアワビの胆をネコに与えて実験をしてみたところが、猫の耳が炎症を起し、ネコが激しく耳を掻くために、傷が化膿して耳が脱落するという結果を得た、という記事を読んだ。現在、これは、内臓に含まれているクロロフィルa(葉緑素)の部分分解物ピロフェオフォーバイドa (pyropheophorbide a)やフェオフォーバイドa(Pheophorbide a)が原因物質となって発症する光アレルギー(光過敏症)の結果であることが分かっている。サザエやアワビの摂餌した海藻類の葉緑素は分解され、これらの物質が特に中腸腺(軟体動物や節足動消化器の一部。脊椎動物の肝臓と膵臓の機能を統合したような消化酵素分泌器官)に蓄積する。特にその中腸線が黒みがかった濃緑色になる春先頃(二月から五月にかけて)、毒性が最も高まるとされる(ラットの場合、五ミリグラムの投与で、耳が炎症を越して腐り落ち、更に光を強くしたところ死亡したという)。なお、なぜ、耳なのかと言えば、毛が薄いために太陽光に皮膚が曝されやすく、その結果、当該物質が活性化し、強烈な炎症作用を引き起すからと考えられている。人間は? まあ、アワビの生の胆だけを丼一杯分ぐらい一気に食べて、灼熱の下で日光浴をすれば、炎症を起こすとは思われる。

『「めばる」の子』メバル(一種ではないので、「大和本草卷之十三 魚之下 目バル (メバル・シロメバル・クロメバル・ウスメバル)」を参照されたい」の卵巣の塩辛は食べたことがないが、多分、美味いだろう。

「鱖(さけ)の子」ご存知、「イクラ」(ロシア語:икра/ラテン文字転写:ikra/発音:イクラー)もそうだが、腎臓(「背わた」「血わた」と呼ぶ)を長期熟成(半年から一年)させた塩辛「めふん」がある。「鮎うるか」同様にかなり癖があるが、こちらは私は平気だ。

「鰹魚(かつを)の肉」「酒盗」で知られる。偶然だが、昨日、無性に食べたくなって、今、冷蔵庫鎮座している。

「海鰮(いはし)」塩辛いものが好きな私が、国外の食材で一つだけ、「どう考えても、しょっぱ過ぎる!」と唸ることが多いのはアンチョビ(anchovy::    条鰭綱ニシン目ニシン亜目カタクチイワシ科 Engraulidaeの小さい海水魚の複数種)を原材料とするあれだ。まあ、単独で食べるのではなく、調味具だと言われれば、それまでなんだけどね。

「寄居蟲(がうな)」ああ! 多分、美味いだろうなぁ! 私の好物の一つに、佐賀の郷土料理の一つである「がんづけ」(「蟹漬け」の音変化)があった。本来は、真軟甲亜綱ホンエビ上目十脚(エビ)目抱卵(エビ)亜目短尾(カニ)下目スナガニ上科スナガニ科スナガニ亜科シオマネキ属シオマネキUca arcuata の「ふんどし」部分を除去して殻のままに擂り潰し、塩と唐辛子を加えて三~四ヶ月発酵させたものだが、今や、絶滅危惧Ⅱ類(VU)となった以上、食べる訳にはゆかぬのであるが、関東で売られているものを見ると、蟹の原産地は中国になっているのに気づいた。それ以来、私は「がんずけ」は食わないことにした。もう、十年以上、食べてないな。

「腥穢〔(せいゑ/せいわい)〕」(「ヱ」なら呉音、「ワイ」なら漢音) 生臭くて、汚(けが)れていること。

「能く痰を聚〔(あつ)〕む」痰を盛んに発生させるの意。

『鰾(にべ)も亦、「鱁鮧」と云ふ』ニベ科ニベ属ニベ Nibea mitsukurii。但し、「大和本草卷之十三 魚之下 石首魚(ぐち) (シログチ・ニベ)」を参照されたい。これは「本草綱目」に拠ったもの。今時、こんな画数の多い漢字では書くことはない。ニベは専ら「鮸」である。

「魚鳥の醢(しゝびしほ)」思うに、以下で「性・味、共に鱁鮧にまされり」と言っているところ、「兔」を例として出しているところから(兎の数助詞は「羽」だけれども、である)、「魚鳥」は「獸鳥」の誤りではあるまいか? なお、「鳥醢」(とりびしほ(とりびしお))という語が存在し、塩漬けにした鳥肉を、さらに麹(こうじ)・味醂(みりん)・醤油などに漬けた鳥肉の塩辛のことを指す。残念ながら、私はたたきはいくらも食べたことがあるが、完全に塩辛にしたものは食べたことがない。

「鹽麯〔(しほかうじ)〕」「塩麴」に同じい。

「醇酒〔(じゆんしゆ)〕」香りの高く、コクのある日本酒。

「四時」四季。一年中。

「虛人」漢方で言う「虛証」。体力が低下して全身的に生理的機能が衰えた状態を指す。

『獸類「兔〔(うさぎ)〕」の下に之れを詳かにす』無論、哺乳綱ウサギ目ウサギ科ウサギ亜科 Leporinae の「兎」のことである。残酷だなどと思わないで下さい。ならば、貴方はハム・ソーセージ・生ハム・燻製肉を食わぬか? 「大和本草卷之十六」の「獸類」の「兎」の項。部分だけというのも厭なので、全部を電子化する。底本と同じところのもの(八コマ目)を用い、初めから書き下しのみで示す。

   *

兎(うさぎ) 尾、短く、耳、大に、上唇、缺〔(か)〕け、目、瞬〔(まじ)〕ろかず。前足は、短く、後ろ足は長大、尻に小さき孔(あな)多し。子を生〔む〕に、口より吐く。妊婦、食ふべからず。八月以後、冬月、味、美〔(うま)〕し。春〔の〕後、草を食へば、味、美からず。小兒の疱瘡と消渴〔(せうかち)〕に用〔ひ〕て、古書に『尻に九孔あり』と、いへり。『老兎は尻の孔、多し』と云ふ。『他獸に異〔な〕り、臘月、醤〔(ししびしほ)〕と作〔(な)〕し、食ふ』と「本艸」に見ゑ[やぶちゃん注:ママ。]たり。又、曰はく、『死して、目、合はざる者は、人を殺す』〔と〕。

○兎醬〔(としやう/うさぎのししびしほ)〕を作る法、臘月、新しき兎の皮を、はぎ、筋〔(すぢ)〕と骨とを𠫥〔(さ)〕り、肉を細〔か〕に、たゝきくだき、生肉百匁〔(もんめ)〕に炒鹽〔(いりじほ)〕十五匁、かうじ[やぶちゃん注:ママ。「麹」で「かうぢ」が正しい。]末〔(まぶ)〕して、三十匁、加ふ。又、茴香〔(ういきやう)〕・陳皮・丁香〔(ちやうじ)〕・乾薑〔(ほししやうが)〕・肉桂・山椒・胡椒等、好みに、隨ひて、三、四種、各二、三匁加ふ。又、生葱白〔(なまのしろねぎ)〕を、二、三日、鹽につけ、針のごとく切りて、四匁許り、加ふるも、よし。醇酒を加へ、まぜ合はせ、十日過ぎて、鹽の濃淡と、肉の燥濕〔(さうしつ)〕の宜〔(よろし)く〕を試み、鹽、淡(うす)くば、加へ、肉、燥(かは)かば、醇酒を加へ、重〔ね〕て、すりまぜ、相〔(あひ)〕和し、瓶に納め、口を、紙にて、はり、或いは、泥土にて、ぬり、六、七、十日を過ぎて、食す。久しく熟して、彌〔(いよいよ)〕よし。一切、鳥獸の醢(ひしほ)を製する法、皆、同じ。諸肉の皮・筋〔(すぢ)を〕して、厺〔(さ)る〕べし。小鳥は皮を厺らず、雁・鳬〔(かも)〕・雉・鳩・小鳥、味、佳〔よ〕き物、皆、醢とすべし。又、鰷〔(はや)〕・鱒・鯛・鱸・鯔等、魚〔の〕醢、亦、良し。寒月は鹽を減じ、暑月には鹽を加ふ。老人・脾虛〔の〕人、食ふべし。鱁鮧〔(ちくい)〕に、まされり。此法、中華の書「居家必用〔(きよかひつよう)〕」等に出〔で〕たり。

   *

いちいち細かな注は附さないが、必要と思われる部分を指摘しておくと、

・「尻に小さき孔(あな)多し」「尻に九孔あり」「老兎は尻の孔、多し」「子を生〔む〕に、口より吐く。妊婦、食ふべからず」実際に、中国には「ウサギの尻には九つの孔があり、そこから子を産む」という俗信があった。この発生原はよく判らないが、まず、「九」という数値で、これはウサギが一回に出産する最大個体数であることと関連しそうである。さらに画像を見ると、の場合、生殖器と肛門の間に左右に鼠径腺一対があり、これだけで四つの孔を現認できること、肛門部粘膜に乳頭腫と呼ばれる腫瘍が生ずることがあること等と関係するのかも知れないと想像した。また、ウサギには特有の食糞行動(夜間に肛門から直接に食べる)があることから、「口」「排泄」「出産」の連関性が強くあると言え、荒俣宏氏の「世界大博物図鑑5 哺乳類」(平凡社一九八九年刊)の「ウサギ」の記載には、ここにある通り、中国では嘗て「雌兎は雄兎の毛を嘗めるだけで孕み、五ヶ月で子を口から吐き出す」という俗信があったとあり、さらに「妊婦、食ふべからず」について荒俣氏は『妊婦がウサギを食べたり見たりすると』、奇形の口蓋裂=『兎唇の子が生まれるとしてこれを忌みきらった』とあり、加えて、この禁忌は『子が』ウサギのように『肛門から』(ウサギの肛門と♀の生殖器は極めて近くに開口している)『生まれるようになるからともいう』とあった。

・「疱瘡」天然痘。

・「消渴〔(せうかち)〕」咽喉が渇き、尿が出ない症状を指す。

・「臘月」旧暦十二月の異名。

・「『他獸に異〔な〕り、臘月、醤〔(ししびしほ)〕と作〔(な)〕し、食ふ』と「本艸」に見ゑたり」「本草綱目」巻五十一下の「獸之二」の「兎」の「主治」の中に『臘月作醬食去小兒豌豆瘡』と「藥性」という書からの引用として載る。

・『死して、目、合はざる者は、人を殺す』同前の、「集解」の一番最後に、恐らくは陳藏器の言として、『兎死而眼合者殺人』とある。

・「𠫥〔(さ)〕り」「𠫥」は「去」の異体字。

・「匁」一匁は三・七五ミリグラム。

・「居家必用」正しくは「居家必要事類全集」元代の日用類書。撰者不詳。全十集。なお、その内容は当たり前のことだが、モンゴル式である。遊牧民であるから、獣類の塩蔵品は普通であったわけである。

   *

 以下、本文注に戻す。

「雁〔(かり)〕」広義のガン或いはカリ(「雁」)は以下の広義のカモよりも大きく、ハクチョウ(カモ科Anserinae亜科Cygnus属の六種及びCoscoroba 属の一種の全七種。全長百四十~百六十五センチメートルで、翼開長は二百十八~二百四十三センチメートルあるだけでなく、飛翔する現生鳥類の中では最大級の重量を有する種群で、平均七・四~十四、最大で十五・五キログラムにも達する)より小さい種群の総称。私の和漢三才圖會第四十一 水禽類 鴈(かり・がん)〔ガン〕」を参照されたい。鳥の塩辛というのは、フランスの鳥レバー・ペーストぐらいしか食べたことはない。

「鳬〔(かも)〕」カモ目カモ亜目カモ科 Anatidae の仲間、或いはマガモ属 Anas を総称するもの。同じく和漢三才圖會第四十一 水禽類 鳧(かも)〔カモ類〕」をどうぞ。

「小鳬」前注の幼体か小型種というわけではない。狭義にこの名の別種がおり、カモ科カモ亜科マガモ属コガモ亜種コガモ(小鴨)Anas crecca crecca である。同じく「和漢三才圖會第四十一 水禽類 鸍(こがも/たかべ)〔コガモ〕」を見られたい。

「けり」チドリ目チドリ亜目チドリ科タゲリ属ケリ Vanellus cinereus。私の「和漢三才圖會第四十一 水禽類 計里 (ケリ)」を参照されたい。

「しとゝ」小学館「日本大百科全書」その他によれば、スズメ目ホオジロ科ホオジロ属 Emberiza のうちの幾種かに対して、古くから一般につけられた地方名であり、日本で普通にみられる種に限られる。「シトド」或いは「シトト」と称する鳥は、「日本鳥(ちょう)学会」が定めた和名に当て嵌めてみると、ホオジロ(ホオジロ属ホオジロ亜種ホオジロ Emberiza cioides ciopsis)・アオジ(Emberiza spodocephala)・クロジ(亜種クロジ Emberiza variabilis variabilis)・カシラダカ(カシラダカ Emberiza rustica)が該当する。「シトド」と発音するのは東北地方に多く、そのほかの地方では「シトト」が多い。ついで、アオジ・クロジ・ノジコ(Emberiza sulphurata)など、肉眼での野外識別が困難な個体を総称して「アオシトド」あるいは「アオシトト」とよぶ地方があり、ホオジロを「アカシトト」、クロジを「クロシトト」、ミヤマホオジロ(Emberiza elegans)を「ヤマシトト」とよぶ地方もある。

「鰷〔(はや)〕」ハヤという種はいない。複数種の総称。縁が近い訳でもない。「大和本草卷之十三 魚之上 ※(「※」=「魚」+「夏」)(ハエ) (ハヤ)」の私の注を参照されたい。

「きすご」鱚(きす)。スズキ目スズキ亜目キス科 Sillaginidae のキス(鱚)類、或いは同科キス属シロギス Sillago japonica の別名である。

「肉醢〔(ししびしほ)〕」二字の読みとして附した。]

大和本草卷之十三 魚之下 魚鮓

 

魚鮓 脾胃ニ益ナシ消化シカタシ病人不可食未熟

ト熟シ過テ肉モ飯モ餒タルハ不可食久ヲ歴タル不可

食皆害人早鮓ノ㳒制アリ常ノ鮓ヨリカロシ無病人

少食乄不損脾胃味亦佳シ久ヲ不歷シテ新鮮ナル

故ナリ鰻鱺鰕烏賊等鮓不可食陳藏噐曰鮓内有

髮害人時珍曰凡諸無鱗魚鮓食之尤不益人

○やぶちゃんの書き下し文

魚鮓〔(うをのすし)〕 脾胃に益なし。消化しがたし。病人、食ふべからず。未だ熟さざると、熟し過ぎて、肉も飯も餒(くさ)れたるは、食ふべからず。久〔(ひさしき)〕を歴〔(へ)〕たる〔は〕、食ふべからず。皆、人を害す。早鮓〔(はやずし)〕、㳒制〔(はふせい)〕あり。常の鮓より、かろし。無病の人、少〔し〕食〔(しよく)〕して、脾胃を損せず、味も亦、佳〔(よ)〕し。久〔(ひさしき)〕歷〔へ〕〕ずして、新鮮なる故なり。鰻鱺〔(うなぎ)〕・鰕・〔(えび)〕・烏賊〔(いか)〕等〔の〕鮓、食ふべからず。陳藏噐が曰はく、『鮓の内に髮有れば、人を害す』、時珍が曰はく、『凡そ諸〔(もろもろ)〕の無鱗魚の鮓、之れを食へば、尤も、人に益あらず』〔と〕。

[やぶちゃん注:ここでは所謂、「熟(な)れずし」及び「押し寿司」の二種が記載されている。現行一般の「握り鮨」(江戸時代はシャリが大きかった)は「未だ熟さざる」「は、食ふべからず」に相当するので、益軒は禁忌としていることが判る。但し、「熟し過ぎて肉も飯も餒(くさ)れたる」「は、食ふべからず。久を歴たる、食ふべからず」と言っているからには、益軒は所謂、鮒鮓(ふなずし)のような発酵を促進させた「熟(な)れ鮓」系統(こちらの歴史は遙かに古い。「今昔物語集」巻第三十一の「人見醉酒販婦所行語第三十二」(「人、酒に醉(ゑ)ひたる販婦(ひさぎめ)の所行(しよぎやう)を見たる語(こと)第三十二」)に既に「鮎の熟れ鮓」が出る。「やたがらすナビ」のこちらで原文が読めるが、かなり穢(きたな)い話なので自己責任で読まれたい)は、皆、腐ったものとして禁忌としているもののように読める。益軒のほどよい「熟」というのは、恐らくは、数時間から一夜ほどを醬油・醋・煎り酒(前項参照)などにヅケ(漬け)にしたものを指しているように読める。但し、書き振りから、「早鮓」が先生の大のお好みらしい。因みに、私は鮒鮓が大好物である。先日も七千円弱の二十センチメートル強の一匹を食したばかりだ。まっこと、美味い。私の秘訣を教えておくと、残った頭の部分は、周りの発酵した米飯と一緒に、形がなくなるぐらいまでテッテ的に叩き込むのである。普通の白いそれと、墨色のそれを盛って、鮓と一緒に供する。この発酵した米飯が、これまた、強力な酒のアテとなる絶品なのである。「鮒鮓」は文字通り、捨てるところがないのである。このやり方は、嘗て訪ねた京都の割烹「ゆ」の若い主人から教えて貰ったもので、奥さんは美しい元舞妓さんであった。懐かしい。

「脾胃」前項参照

「餒」は音「ダイ」。魚肉が腐る、饐(す)えるの意。

「早鮓」は所謂、関西系の押し寿司であろう。塩或いは酢で締めた魚と、酢を加えて調味した飯とを重ねて、強く押しをして一夜又は数時間で味を熟(なら)して食べる鮨。「一夜鮨」とも言い、夏の季語である。

「㳒制〔(はふせい)〕」「㳒」は「法」の異体字。製法。

「鰻鱺〔(うなぎ)〕・鰕・〔(えび)〕・烏賊〔(いか)〕等〔の〕鮓、食ふべからず」益軒先生、けったいなこと言いはりますなぁ。江戸前では鰻を鮨にするところは殆んどないが、私は一九六九年、富山県高岡市伏木に転居したが、その夜、入った寿司屋で、初めて鰻(無論、蒲焼である)の鮨を食った。

「陳藏噐が曰はく、『鮓の内に髮有れば、人を害す』、時珍が曰はく、『凡そ諸〔(もろもろ)〕の無鱗魚の鮓、之れを食へば、尤も、人に益あらず』〔と〕」「本草綱目」「鱗之四」に「魚鮓」があり、その「氣味」に、

   *

甘、鹹、平。無毒。藏器曰、『凡鮓皆發瘡疥。鮓内有髮害人』。瑞曰、『鮓不熟者、損人脾胃反致疾也』。時珍曰、『諸鮓、皆、不可合生胡荽・葵菜・豆藿・麥醬・蜂蜜。食令人消渴及霍亂。凡諸無鱗魚、鮓食之尤不益人』。

   *

とある。時珍の謂いは、これまた、食い合わせの類いと思われるので、語注しない。]

大和本草卷之十三 魚之下 魚膾

 

魚膾 細者爲膾大者為軒本草綱目本草約言等

ニ治病之功多シト云壯盛ノ人ハ食之可無害虚冷病

人老衰之人所不宐也凡生肉ハ脾胃ノ發生ノ氣ヲ

ヤフル醋ハ脾虚ニ不宐生肉生菜ニ醋ヲ加ヘ和乄生ニ

テ食ス最害アリ魚肉ヲ細ニ切塩酒菜蔬ニ和乄後

少煑アタヽメ醋ヲ少加ヘ食ス不傷胃本草ニ魚膾ハ

𤓰ト同食スヘカラス然レハ魚ト菜𤓰トヲ和乄膾ニシテ

食フヘカラス又生肉ヲ大ニ聶テ醋或煎酒ニ浸シ食フヲ

指身ト云病人不可食肉ヲ切テ沸湯ニテ微煮テ

ワサヒ芥薑醋或煎酒ヲアタヽメ肉ヲ入テ食フ無害人

ヨリ生肉ハ不滯消化易シ煮乾塩藏シタル魚滯ヤスシ

ト云人ノ性ニヨルヘシ無病人ハ生肉早ク消乄不滞

○やぶちゃんの書き下し文

魚膾〔(うをなます)〕 細き者を膾と爲〔(な)〕し、大なる者を軒(さしみ)と為す。「本草綱目」・「本草約言」等に『治病の功、多し』ト云ふ。壯盛〔(さうせい)〕の人は之れを食ひて、害、無かるべし。虚冷の病人・老衰の人、宐〔(よろ)し〕からざる所なり。凡そ、生肉は脾胃の發生の氣を、やぶる。醋〔(す)〕は脾虚に宐〔し〕からず。生肉、生菜に醋を加へ、和して、生にて食す〔は〕最も害あり。魚肉を細〔(こまか)〕に切り、塩・酒・菜に和して後、少し煑〔に〕あたゝめ、醋を少し加へ、食す〔は〕胃を傷めず。「本草」に『魚膾は𤓰〔(うり)〕と同食すべからず』〔と〕。然〔(しか)〕れば、魚と菜・𤓰〔(うり)〕とを和して膾にして食ふべからず。又、生肉を大〔(だい)〕に聶(へ)ぎて、醋或いは煎酒〔(いりざけ)〕に浸し、食ふを、「指身〔(さしみ)〕」と云ふ。病人、食ふべからず。肉を切りて沸湯にて、微〔(わづか)に〕煮て、わさび・芥〔(からし)〕・薑〔(しやうが)〕醋、或いは煎酒をあたゝめ、肉を入れて食ふ〔は〕、害、無し。人により、生肉は滯〔(とどこほ)〕らず、消化し易し。煮(に)、乾(ほ)し、塩藏したる魚〔は〕、滯りやすし、と云ふ。人の性〔(しやう)〕によるべし。病ひ無き人は、生肉、早く消〔(せう)〕して滞らず。

[やぶちゃん注:「軒(さしみ)」刺身に同じい。小学館「日本国語大辞典」の語源説に「大言海」から、江戸時代、「切る」を忌詞(いみことば)としたためかとあって、「み」な肉の意とする。江戸末期から明治にかけて編纂された国語辞書「和訓栞」(わくんのしおり:谷川士清(ことすが 安永六(一七七七)年~明治二〇(一八八七)年) 編)に「魚軒(さしみ)」と出るが、幾ら調べてみても、「軒」の漢字がどうして「刺身」の意になるのかが腑に落ちる記載には巡り逢わなかった。識者の御教授を乞うものである。

「本草約言」「藥性本草約言」。明の薛己(せつき)編の本草書。和刻本は万治三(一六六〇)年刊。

「壯盛」若くて元気がよいさま。又は、若い盛り。

「虚冷」虚弱体質、或いは、体温が有意に低下するような疾患に罹っている人、或いは、消化器系疾患等によって衰弱している人を指す。

「宐」「宜」の異体字。

「脾胃」漢方では広く胃腸、消化器系を指す語である。

「發生の氣」正常な陽気の発生。

「脾虚」消化器系機能全体の低下。

「生肉、生菜に醋を加へ、和して、生にて食す」以下の叙述から、魚の生肉を大きな切り身の状態で、しかもそれに生の野菜を添えて和(あ)えて、そのまんま、食べることを禁忌としていることが判る。

『「本草」に『魚膾は𤓰〔(うり)〕と同食すべからず』〔と〕』「𤓰」は「瓜」の異体字。「本草綱目」「鱗之四」に「魚鱠」があり、その「氣味」の中に、陳蔵器の引用として、『不可同𤓰食』と出る。根拠は記されていない。食べ合わせの類いに過ぎない。

「聶(へ)ぎて」角川書店「新版 古語辞典」に「ひう」で、他動詞ワ行下二段とし、「肉などを薄く小さく切る。はぐ」とある。「剝ぐ」の古形か。「古事記」の歌謡に既に出る。

「煎酒〔(いりざけ)〕」二種あり、①酒を煮立ててアルコール分を飛ばしたもので調味用に用いるもの。②酒に醤油・鰹節・梅干しなどを入れて煮詰めたもので、刺身・酢の物などの調味料として用いる。ここは②の意であろう。

「指身〔(さしみ)〕」これ以外にも「差身」「差味」などとも漢字を当てた。]

大和本草卷之十三 魚之下 たがへ (タカベ)

 

【和品】[やぶちゃん注:底本は前に合わせて「同」。]

タガヘ 長五六寸許色靑黒色形アヂニ似又コノシロニ似

タリ關東ニアリ味淡シ

○やぶちゃんの書き下し文

【和品】

たがへ 長さ、五、六寸許り。色、靑黒色。形、「あぢ」に似、又、「このしろ」に似たり。關東にあり。味、淡し。

[やぶちゃん注:最後に困った。「タガヘ」「タガエ」何て名の魚は知らぬからだ(念のため、国立国会図書館デジタルコレクションの画像も確認したが、「タガヘ」である。しかし、だぞ? 鰺(条鰭綱新鰭亜綱スズキ目スズキ亜目アジ科アジ亜科マアジ属マアジ Trachurus japonicus)に似て、鰶(新鰭亜綱ニシン上目ニシン目ニシン亜目ニシン科ドロクイ亜科コノシロ属コノシロ Konosirus punctatus)にも似ているといういうと……ああっ! 判った!

スズキ目イスズミ科タカベ亜科タカベ属タカベ Labracoglossa argentiventris

だわ! 但し、益軒先生、関東にしかいないわけではありませんよ。ウィキの「タカベ」によれば、『本州から九州の太平洋沿岸に分布する海水魚で、日本固有種である。夏の季語』とありますから。以下、同所から引用する。『和名の由来は漁師用語で「岩礁」を意味する「たか」に「魚」を意味する接尾辞である「べ」を付けたものと考えられている。その名の通り、主に沿岸域の岩礁地帯に生息する。その他に伊豆半島で「しゃか」、高知県柏島で「べんと」、鹿児島県で「ほた」などの呼び名がある』。『成魚は全長20-30cmになる。体型は紡錘形で体色は背部が青色、腹部は銀色であり、背部の中心から尾鰭全体にかけて特徴的な黄色または黄金色を呈している。顎は小さく頭部は若干丸みを帯びている。岩礁近くに群棲し、動物性プランクトンなどを捕食する。マアジやマサバ等と比較すると顎が非常に小さいことから釣りにくく、タカベは「餌取り名人」といえる』。『外見が似ていることから』、『しばしばウメイロと混同されるが、ウメイロParacaesio xanthuraはスズキ目フエダイ科に属する別種の魚である。タカベにおいては後背部の黄色が背鰭や尻鰭にも見られるのに対し、ウメイロの背鰭・尻鰭は黄色くない。またウメイロは全長40cm程度とタカベに比較して倍近く大きい』。『主に定置網漁で漁獲されるほか、オキアミ類を餌として釣りの対象ともなる。産卵期にあたり』、『脂ののってくる夏が旬とされる。市場では高値で取引され、高級魚の扱いを受けている。関東圏で流通するタカベは伊豆諸島で漁獲されたものが多い』。『塩焼きが最上とされるが、刺身や煮付けにしてもよい。また一夜干しにしても格別である』とある。私は伊豆下田で食べた塩焼きの美味さを今も忘れない。あの時は、亡き知子ちゃんも一緒だったな……

 さても。以上を以って「大和本草卷之十三 魚之下」の魚類の立項は終わって、以下は、所謂、魚の食用処理法で、「魚鱠」・「魚鮓」・「鱁鮧(チクイ・ナシモノ・シホカラ)」・「鮑魚(ホシウヲ)」・「肉糕(カマホコ)」〔蒲鉾〕・「糟魚麹魚」〔粕漬け・麹漬け〕・「(シホウヲ)」・「ビリリ」〔南蛮渡来の魚の肝で製した薬物と記す〕の八項で「大和本草卷之十三 魚之下」は終わっている。而してそれを以って二〇一四年一月に開始した『「貝原益軒「大和本草」より水族の部」』の電子化注を終わることとなる。

2020/09/11

大和本草卷之十三 魚之下 きこり魚 (タカノハダイ)

 

【和品】[やぶちゃん注:底本は前に合わせて「同」。]

キコリ魚 長七八寸或一尺五六寸許淡黑色スコシ

赤色ヲ帶ブ橫スヂカヒニ筋三四或五六條アリ首ハ

ソゲルカ如シ其形狀鯛ニモ目張ニモ似タリ目ハ端ニヨレリ

目少赤シ味ハメハルニ似タリ脂ナク乄淡美ナリ無毒

○やぶちゃんの書き下し文

【和品】

きこり魚 長さ、七、八寸、或いは、一尺五、六寸許り。淡黑色、すこし、赤色を帶ぶ。橫、すぢかひに、筋、三、四、或いは、五、六條あり。首は、そげるが、ごとし。其の形狀、鯛にも目張〔(めばる)〕にも似たり。目は、端に、よれり。目、少し赤し。味は「めばる」に似たり。脂〔(あぶら)〕なくして、淡美なり。毒、無し。

[やぶちゃん注:これは、

スズキ目スズキ亜目タカノハダイ科タカノハダイ属タカノハダイ Goniistius zonatus

の異名。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のタカノハダイのページの「地方名・市場名」の項に、「キコイ」「キコウリ」「キッキリ」「キッコ」「キッコリ」と並び、特に「キコリ」を立項して、『これは背が張っていて、たくましい男性を感じされるためだと思われる』とされ、採取地を『山口県萩市、福岡県中央市場』と載せる。益軒は福岡である。なお、後の医師で本草学者であった栗本丹洲(江戸幕府奥医師四代目栗本瑞見)は多数の魚譜・魚図を残しているが、中でもタカノハダイの絵が有意に多い。例えば、『栗本丹洲自筆巻子本「魚譜」 タカノハ羽・タカノハタイ(二図)・カタバタイ (タカノハダイ)』『栗本丹洲自筆巻子本「魚譜」 嶋タカノハ魚 (タカノハダイ)』『栗本丹洲自筆巻子本「魚譜」 鷹ノ羽タイ (タカノハダイ)』で(総て私の電子化注。画像有り)、体長四十センチメートル前後と中型で、側扁し、他の魚類に比して、有意に頭部にかけて背が盛り上がる(益軒の「首」が「そげる」という表現は言い得て妙である)独特のラインを作ること、尾鰭には明瞭は白い斑文があること、体側に斜めに走るくっきりとした茶褐色の横縞が九本入り、鰭が黄褐色で、縞模様を有すること、全体の体色が結構、鮮やかに変異することなどから、無論、持ち込む業者が丹洲を喜ばせる風変わりな魚(磯臭さが強いため、現在でも市場には出回らないから、当時の魚問屋にとっても雑魚扱いであったと思われる)として持ち込むことが多かったのではあろうが、丹洲自身もこの魚体が好きだったのではないかと思わせる量なのである。]

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