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カテゴリー「肉体と心そして死」の1176件の記事

2017/04/26

今度は

ついさっき、今度は三光鳥が鳴き出した。早なぁ、お前は、もう来たのかい……と思ったら、ふっと鳴きやんでしまった――後は若い鶯が、しきりに練習を始めている……

裏山の声――

裏山のコノハズクの声に目が覚めた――午前二時――あれは「仏法僧」とも「仏飯」とも聴こえない――あれは孤独者の見知らぬ友を呼ばう声だ……

2017/04/15

コートにスミレを 平和に花を

 
私は昔から写真でピース・サイン(V)をする輩を見ると嘔吐を催すことを常としている。
 
そんなわけのわからぬことをするのだったら好きな花の一輪でも持ち給え――


 John Coltrane - Violets for yours furs

そうして……

合歓…………

Flowersplantalbizziajulibrissin7919

次は

コスモス…………

Inautumn2088792_1920

 

げんげばたけ

 
 

ああ……げんげ畑が見たいなぁ…………何年も見てなぃわぁ…………

Astragalus115038


 

2017/04/13

絶対の孤独

真に「絶対の孤独」と言い得るものは、私は中島敦の「山月記」の虎に変じてしまった李徴が漸近線的に人間の心を失ってゆく過程以外には当て嵌まるものはないと考えている(事実、私は三十三年間の国語教師時代、黒板に「絶対の孤独」と自信を持って板書したのは「山月記」の授業中だけであった)。李徴が言うように、虎に成り切ってしまえば、そこに「絶対の孤独」は無くなる。閉じられた単独の「系」の中では「孤独」は存在し得ない。その無効化を齎してくれるのは実は我々の「死」でもある。有象無象の詩人よろしく「絶対の孤独」《感》を殊更に表明する輩は、その実、誰かに救いを求めている惨めな似非孤独者に過ぎない。

2017/04/08

林檎の木

ずっと僕の中にある。
 

――“Wenn morgen die Welt unterginge, würde ich heute ein Apfelbäumchen pflanzen.”――Martin Luther

 
――仮に明日この世の最後が来るとしても、私は今日、ここにリンゴの木を植える。――マルティン・ルター
 
この言葉が僕の中に今、しっくりくる気がしている。
何故、ルターが「林檎」を選んだのか――それは無論、「創世記」のそれに擬せられる「智慧の木」だからだ――
 
僕は僕の「林檎」の木を毎日植える――
 
それが僕の孤独な――しかし確かな意味であろう…………

2017/04/04

では

之を以つて私は「鬼」を辭めて孤庵の日常へと歸らんとぞ思ふ――諸君の飴のやうに延びた蒼褪めた時間に――乾杯!…………

2017/03/30

「植物図鑑の思い出」或いは「哀しき鉄腕アトム」

 

小学生の頃、植物図鑑の序で、監修した植物学博士が

――よく、文学で「野の名もない草花」などと言いますが、あれは大変な誤りで、名もない草花などというものはありません。一つ一つちゃんと名があります――

と書いていたのを思い出す。

僕はそれに豁然、世界が開けた衝撃を覚えたと感じたからであった。

「そうだ! この世には名もない存在などというものはないのだ! それぞれがちゃんとした名前を持った独立自立した存在なのだ!」

と思うたからであった。

……あの頃、私は浅ましくも「鉄腕アトム」を薔薇色未来論的視野でしか見ていなかったことも思い出される……その後、青年になってより、すっかり真逆に読むようになったのだが……

【ここで脱線しておくと、僕は高校教師時代、芥川龍之介の「奉教人の死」や浦沢直樹の「プルートゥ」の朗読劇など、やりたかったことは概ねやり尽くしたのであるが、一つだけ、生徒たちに望みとして言いながら、遂に実現し得なかったことがある。それは手塚治虫の「鉄腕アトム」の全話の最終コマを総て並べて生徒たちにそれぞれのコマだけを見て、哀しいと感ずるか、明るいと感ずるか、それをアンケートする、という試みであった。僕はそこにあるペーソス(哀感)を感ずるものが実は有意に多いのではないか、という予測を立てていたのであるが。……そうそう、もう一つ、サミュエル・ベケットの独劇「クラップ最後のテープ」の朗読劇も出来なかったな。あれはちょっとヤバい部分があったから仕方ないか……】

閑話休題。

昨夜、いつもの心悸亢進による不眠に悩まされる床の中で、その植物図鑑の序のことを考えていた……

「……いや! 違う!! 名もない存在は歴史上、無数にあったのだ。生物学が分類と学名を作り出し、過去に遡及して化石種まで総て命名し、それで生物種を征服し得たと思ったのは、とんでもない誤謬じゃあないか! そもそもが分子生物学の発展によって旧来の分類学は根本的に破綻し、同一種と思われていた多くの種が新種として命名し直されているではないか。実は見かけ上、全くの相同種とされていたものが、平行進化による遠い全くの別種として新種とされることさえ近年はある。とすれば、僕が見渡した野や山や海辺、その僕の網膜に物理的に映っている種の中には、狭義の生物学に於いても「名もない草花」「名もない菌類」「名もない生物」は「実は沢山ある」と言えるではないか!……

「……さらにこうも言えるぞ! ウィトゲンシュタイン風に――「名指す」ことと「示す」ことは違う――のだ! 生物に学名をつけても、それは――ホモ・サピエンス――動物界脊索動物門脊椎動物亜門哺乳綱サル亜綱正獣下綱霊長(サル)目真猿(サル)亜目狭鼻(サル)下目ヒト上科ヒト科ヒト属ヒト Homo sapiens ――という近代の、この地球上に七十億(過去の死者を含めるなら約千七十六億人だそうだ)いる有象無象の総体の如何にもな所番地レベルでしかないじゃないか! 「ヒト」と「藪野直史」が違うことは明白だ。僕「藪野直史」を生物学上の名である「ヒト」と名指して、僕自身を示し得たと思うことは完全な誤謬であることは言うまでもない。されば、野にある合歓の一本の合歓の花を指して、「双子葉植物綱(この綱名も今じゃ最新の生物学では使わなくなったとは全く以って僕は浦島太郎だった)マメ目マメ科ネムノキ亜科ネムノキ属ネムノキ Albizia julibrissin の生殖器官だ」と「名指す」ことぐらい――非人間的で馬鹿げたことはない――ではないか! というより、「一本の合歓」、「一人の人」を具体的に「示す」ことなしに、この世の総てを「示し得た」と思い違いすることが、人間の大いなる不遜であり、滅亡すべき種であることの証しではないか!!!……人跡未踏の山中に「一本の合歓」が屹立し、そこにあの美しい花を咲かせていた……しかし遂に誰からも「あっ! 合歓の花だ!」と名指し、指で指され、示されることなく、散って枯死し、人の目に映ずることがなかった――しかしそれを――「観察者がいないのだから合歓の木は存在しなかったのである」など奇体な量子力学的したり顔で糞解説する輩とは僕は同じ天を戴けない………… 

……かく蒲団の中で義憤するうちに……夜はしらじらと明けていたのであった……

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