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カテゴリー「夢」の106件の記事

2018/06/23

今朝方見た奇妙な夢――

 

教え子の女性の葬儀が、ある教会で行われる、という通知を受けて私は出かけようとする。
母は何故か、「行かない方がよい」と制止するのだったが、振り切って、出かけた。

外人のシスターが待っていた。
参列者は、何故か、私一人らしい。
シスターは、彼女は自死であったことを私に告げ、遺品一式――

何かが書かれた手札大の薄い木片のようなもの・私へ宛てた煌びやかな便箋一枚・赤ワイン一本・卵三個

の入った段ボールを渡し、礼拝堂へ案内した。
何人もの葬儀が行われており、彼女のそれはずっと後だということであった。

私は私宛の便箋を読んだ。それは遺書ではなく、彼女が何処か外国から私へ宛てて書いたものであって、記されたそれは聞いたことのない国名なのであった。しかし、添えられた絵はインドか東南アジアの、ヒンズー教か仏教の寺院らしい建物が、極彩色の色鉛筆で美事に描かれているのであった。内容は、それらの美しさと神秘性を私に伝える敬体の文章であり、如何にも旅を楽しんでいる便りなのであって、自死の気配は微塵もないのであった。

ただ、末尾に、
「そんな旅先で不思議なものを見つけました。先生に読み解いて貰えたらと思いい、同封します。」
とあるのであった。どうも今一つの遺品の木片様のものがそれであるらしい。手に取ると、それは木をごく薄く削いで圧縮した、人工の木製紙で出来ていた。

しかも、そこには何故か、漢字仮名混じりの古文が三行(五十字程であった)に亙って書かれていた。

「其時■■須■威出で給ひ……」で始まっていた。

[やぶちゃん注:本夢は私の夢の特異点で、その文字列を、覚醒した時には全文はっきりと覚えていたのであった。しかし、急速に記憶から消えてしまった。直ぐに書き取ればよかった。非常に残念である。]

私は彼女の葬儀が始まるまで、熱心に、それを現代語訳した。

[やぶちゃん注:覚醒時はその訳も確かに覚えていたのだが、これも忘れた。ただ、その内容は、まさに彼女の自死を予言する内容であったことは確言出来る。しかも今、これを書きながら(遅まきながら)、私にはこの木片は、例のインドにあるとされる「アガスティアの葉」であることが明確に理解された。紀元前三千年の昔に実在したとされるインドの聖者アガスティアの残した全人類各個人の情報(自身の過去・現在・未来)について全てが記されているという「木の葉」である。ネットを調べれば判るが、事実、ある、のである。但し、すこぶる怪しいものではある。しかし、正に木簡のようなものなのである(私は実際の朴のような大きな葉っぱに書かれているのだと思っていたが、今、調べてみたところが、例えばここでは、まさに木簡状であった)。]

彼女の葬儀が始まる。
やはり私一人なのであった。彼女の親族はいない(来ない?)らしい。
式を行うのは先のシスター一人であった。
祈禱を終えると、シスターが、遺体はこちらの墓地に埋葬する旨を語った後、
「遺品はどうなさいます?」
と訊ねてきた。
私が躊躇して黙っていると、
「こちらで貴方が天へ送られるのが、よろしいでしょう。」
と言い、礼拝堂の裏手へと導くのであった。
そこには霊安室のような、殺風景な部屋があった。

私はそこで、小さな釜の中にワインを流し込み、便箋と木片をそれに浸した上、三つの卵を、割り入れた。

ところが、三つ目の卵を割ると、そこからは黄色い色をしたアーモンド形の種子のようなものが出てきた。

 
私はそれらが、ぐつぐつと釜の中で煮られるのを

――凝っと

見つめていた…………
 

2018/05/09

つげ義春風「人魚橋」伝説夢(少々長めの昨夜見た夢)

 
 

晩春であった。
その橋は山間(やまあい)の深い溪谷に架かっていた。
見下ろすと、碧色の溪水の両岸に新緑の木々が茂っていた。

僕はこの四月から、この近くにある高校に赴任しているのだった。
[やぶちゃん注:これは夢を見ている僕の認識であって、学校自体は夢に出てこない。]
この学校には生徒の「遅刻カード」の提出が定められていた。
手札大の紙に遅刻理由を書いて、教員の捺印を受け、授業をしている教師に出すというものであった。
[やぶちゃん注:これに酷似したシステムは、僕が曾て七年間務めた高校で実際に行われていた。裏表で四十回分ほどの枠が発注されたピンク色の用紙に印刷されてあり、捺印は職員室にいる一時間目の授業のない教員が捺印することになっていた。やや辺鄙な場所にある高校で、遅刻する生徒は非常に多く、僕は一時間目の空いている日が憂鬱で仕方なかった。理由も書かさねばならず、遅刻がさらに長引き、その在り方に、僕は大いに疑問もあった。因みに、その学校は僕の家から遠く、朝六時起きで、二時間近くかけて通勤しなくてはならぬのであった。]

ところが、この学校、こうした教師の捺印方式にとっくに音を挙げたものか、登校には誰もがそこを必ず渡らねばならない、その橋のたもとに小屋を設け、そこで遅刻常習者の最大回数の者に印鑑押しの仕事を強制させているのであった。

この橋は「人魚橋」という名であった。
そうして――ご多分に漏れず、その橋に纏わる、とある「学校の怪談」が囁かれていたのであった。

……それは……

『――人魚族の血を引く生徒がこの番人役に当たると、その生徒を愛する生徒が出て来て「好きだ」と告げた時、その者に呪いをかけて、自身の身代わりと成すことができ、自分はほんとうの人間になれる。……もし――誰もその人を愛さなければ――未来永劫――その人は「人魚橋」の番人をしなければならない。……それから、その人魚の呪いを少しでも邪魔した者があった時は、やはり、その邪魔した者を身代わりとして呪うことで、人間への転生が成就する……』

というものだった。
僕は、赴任早々、教え子の女子生徒から、その話を聴いて、覚えていたのであった……

ある早朝、通勤で、橋の手前まで通じているバスに乗っていると、番人の女子生徒が僕の横に座っていた。
すぐ後ろに、新入生の男子生徒がいた。
すると、その後ろの男子が番人の女子に、僕の右肩越しに話しかけ始めた。僕は寝ている振りをしながら、しかし、聴いていた。
そのうちに、どうもこの男の子は入学するや、この番人の彼女に一目惚れしたらしいことが話し振りから判ったのだった。

彼はそれからそれへと彼女の気を引こうとする話をしているのが、よく判った。
横に僕がいるのも気にせず、大きな声で彼女に話をし、今にも「好きなんです」と言いかけそうな雰囲気になってきた。
僕は余りの五月蠅さに、彼の方を徐ろに振り返ると、

「君ね、まだ、新入生だから知らないかも知れないがね、この橋にはね、とある伝説があるんだ……」

と言いかけた――言いかけた途端――僕の右に座っていた番人役の彼女が真っ青になって――いや――形容ではなく――その溪谷の深い碧玉色の谷水のようになって――怖ろしい顔で僕を睨んだのであった……

……翌日……僕はその「人魚橋」の番小屋にいた。
僕はもう、そこに住むことに決めていた。
何の悲壮感もなかった。
あの女の子は人魚族の末裔であったのだ。
「だから、僕が、これから遅刻カードに捺印する役を背負わねばならぬだけのことだ」と妙に達観しているのであった。

僕は何十個もの印鑑を用意していた。三文判数本に、実印に、「心朽窩主人」や似顔絵附きのもの、何故か「國立國会圖書館之印」という四角なドデカいものもあった。
[やぶちゃん注:これは僕が実際に『毛利梅園「梅園魚譜」人魚』で同図書館の人魚図の画像を使用させて貰っていたりするからであろう。]

遅刻した生徒がたくさんやってきた。
僕は黙って笑って挨拶すると、片っ端から紙に印鑑を捺して配ってやる。
彼らに人気なのは「國立國会圖書館之印」なのであった。
それを黒インクでズンと捺した遅刻カードを、髪を紫色に染めた女子生徒が喜んで受け取っては、「チョーカッコいい!」と頭の上で振りながら、楽しそうに橋を渡って行くのであった。

気がつくと、橋のたもとの少し離れたところには、一軒の古い駄菓子屋があった。
そこでは、若い一人の美しい少女が店番をしているのであった。
彼女は、僕に向かって、「ご飯はこれから私が届けるのであります」と、はにかんで笑みを浮かべながら、声をかけてきた。
何か、嬉しくなった。
[やぶちゃん注:これはもう、つげの「紅い花」のキクチサヨコか、「もっきり屋の少女 」のコバヤシチヨジである。但し、ワンピースであって、浴衣ではなかった。]

ところが――
その瞬間――
番小屋の中の僕の右肩を、誰かの手が「グイ」と摑んだ――

……それは……あの、昨日までこの役を務めていた女子生徒であった。
黙ったまま、一寸咎めるような顔つきをしたが、すぐに僕の横に座ると、次から次へと入ってくる遅刻生徒のカードに、色々な印を楽しそうに捺しては、「はいはい! 遅刻してはいけません!」と言いつつ、笑っているのであった……

僕は悟った――
『彼女は人間にならずに――なれたのに――ここへ戻ってきたのだ……』……

え? 僕は今、どうしてるかって?

「今も――二人で仲良く――人魚橋の番小屋で――遅刻カードに印を捺しているのです――」

[やぶちゃん注:エンディグは、つげの「李さん一家」のそれの台詞のインスパイアに違いないのだが、寧ろ、僕には「やなぎ屋主人」で主人公が幻のように見る、仮想された、「やなぎ屋」の娘と夫婦になって年老いた二人の映像に近いものであった。並んで印を捺している二人のセピア色になった静止画像で終わっていたからである。
 ここからは蛇足で、覚醒後の感想なのだが、この夢の中の僕は、人魚族の末裔の彼女の体の一部を食べたのに違いないと思うのである。でなくては、番人として未来永劫、その仕事を全うすることは出来ないからである。

 言っておくが、以上は僕が昨夜見た夢を可能な限り、忠実に再現したものである。作り物? 創作する能力など、今の僕には殆んど枯渇しているのである。]

2018/05/03

写真画像夢

 

ブラック・バックの画面――モノクロームの写真である――

奥の祭壇に肩を出した真っ白なウェデイング・ドレスを着た若い女性が笑顔で立っている――彼女は今しも祭壇から降りようとしている――その彼女の右手を初老の燕尾服を着た彼女の父らしき人物が左手で支えている――

その写真を――私は実に――就寝してから今朝未明に目覚めるまで――ただ八時間余り――凝視し続けていた……

こんな静止画像の夢は初めてだった。
その女性には、どこか見覚えがあるのだが、どうして思い出せないでいる。
ただ、私はその画像を夢見ながら、
『その女性は今は離婚している』
と感じていたのであった。

そうして目醒めた時――ひどく哀しい気持ちになったのを確かに覚えている。……

2018/03/14

変生女子(へんじょうじょし)夢

昨夜見た、不思議な二つの夢――自分が女性で――しかも別々な二話でそうなのだ――。

   *

第一話――唐代伝奇風

 

 時は唐代。私は十代か二十代の女である。

 邸宅の奥まった部屋で、若い夫と、ある遊びをしている。

 大きな唐三彩の盆皿に、私が小さな革製の入れ物で白砂を一杯入れる。

 夫は同じような入れ物から黒い粘性のある土の塊を入れる。

 それを交互に繰り返す。

 夫の入れたその塊りは、自然に龍の形象へと変容する。

 龍は昇天しようと蠢くが、私の入れる白砂に邪魔されている。

 龍が昇天すれば、夫の勝ち。

 龍が白砂に阻まれて、最早、動けなくなれば、妻である私の勝ち、である。

 遂に、龍は白砂に半ば埋もれて、首と胴の一部を白砂からちょっと覗かせた状態で、固まって動かなくなってしまう。

 「私の勝ち!」――と笑って夫を見上げる。

 夫も微笑している。

 ところが――目を戻すと――龍は白砂を崩すことなく――そのまま穴の開いたままに――昇天して消えている。

 吃驚して夫の方を見ると――夫の姿は消えている…………

 

   *

 

第二話――B級SF映画風

 

 時は遙か未来。

 場所は太陽系外の惑星。

 空気はないから、宇宙服に身を包んでいる。

 私は二十代の白人の女性である。

 小型の宇宙艇の操縦室に夫がいる。

 私は昇降機で惑星の地表に降りる。

 五十メートルほど先に無人の宇宙コンビニエンス・ストアが見える[やぶちゃん注:シチュエーション、ショボ過ぎ。]。

 そこに人間の姿に化けたエイリアンが来るという情報を受けて、夫とともにそこに来たのである。

 私は女狙撃兵である。

 岩蔭から銃を指し出し、スコープを覗くと、ストアから不法に物品を略奪した、よれよれの茶のコート姿の中年男が出てくる[やぶちゃん注:宇宙服を着ていないから、間抜けなエイリアンである。]。

 通常弾で、二度、撃つ。

 二発とも命中するが、男はあろうことか、そのまま平然と歩いている。

 そこで大きさが倍はある徹甲弾を銃に装塡し、撃つ。

 コートがスローモーションで翻って、男は仆れる。

 「任務完了。」

 と夫に連絡し、宇宙艇の真下の昇降機に入る。

 しかし、磨りガラスの外にモンスターの影が近づくのが見えた![やぶちゃん注:ここは二重太陽のある星系であった。ここではエイリアンは本来の姿に戻っているのだが、磨りガラスであるためにはっきりした様態は見えない。]

 「あいつ! 死んでなかったんだわ!」

 と叫ぶ。

 夫が

 「エレベーターが故障してる!」

 と叫んでいる。

 ドアの向うから影が近づいてくる…………

   *
 
女性になる夢は恐らく生まれてから一度も見たことがない上に、時制の恐ろしく隔たったアンソロジー形式の二話連続というのも異様だ。

2018/01/28

続きが見たい夢

本未明、二時前に久々に続きが見たい夢を見た……

私は18で、教え子のO君と一緒に京都の大学に合格している。二人で学生相手の私設の木賃宿舎に入る。私は芥川龍之介全集を始めとして本を山のように持って来ていたが、置き場がないので、部屋の中の壁際にドミノのピースのように並べ、O君は「サンダーバード2号」の見たこともないプレミアム・ポッドの中に彼の好きなエヴァンゲリオンのフィギアが満載しているという奇体なもの広げては「どうだ!」という風に微笑んだ。

六畳一間に二人でなかなかに狭い。
最初の一夜、私は廊下に近いところに雑魚寝をしている。
何か夢を見ているような気になって、ふと目が覚めると(夢の中の私が、である)、廊下と隔てる襖が少し開いていて、そこから若い女の生白い腕がさし入っており、私の蒲団からはみ出た右手の人差し指に、その女の人差し指が載っている。と見たら、ゆっくりとその女の腕は廊下の方へと引っ込んでゆく。

襖の隙間からそっと覗いてみると、そこには16、7の若い女たちが、煎餅布団を強いて、廊下に川の字になって寝ているのであった。彼らは皆、貧しい家庭から、この宿屋に女中奉公をしに来ている少女らで、それは昼のうちに見かけて知っていた。一番近い、則ち、私と指と指を重ねていたのは香代という娘であった。目を閉じてはいるものの、起きているように思えたが、私はそっと襖を閉じた。

数日経って、宿舎の中で出しているという、手書きの回覧雑誌が回って来た。
開いて見ると、中に「K女」と署名のある小説があった。
それは、一人の宿屋の奉公人の少女が、そこに泊まっている青年と恋仲になり、夕餉の買い物に出かける時、青年と踏切のところで落ち逢って宿へ戻るまで一緒に歩くという、束の間の逢引きを描いた掌品であったが、そこで最後に踏切の所で別れる際、彼女が右手の人差し指を青年に指し出し、青年がやはり自分の人差し指をそれに接するというシーンで終わっているのであった。

その途端、私は何か非常な切なさを感じ、部屋の壁と言わず、宿中の壁という壁に筆で訳のわからぬ言葉を書きまくり始め、O君を始めとする下宿学生たちがそれを必死で押し留めようとする……

   *

というところで眼が覚めてしまった。小便をしに下に降りると、妻はカウチに寝っ転がってテニスを見ていた。
また、寝床に戻って思わず『続きが見たい!』と思った(これほど切にそう思った夢は今までの60年間の夢見の中でも数回しかない)が、この数年、一度目が醒めると、私は最早、二度寝出来ない体質になってしまっており、その「夢」は叶わなかったのであった――

2017/11/25

不思議に哀しい夢

昨日の深夜、こんな夢を見た…………

私はアイルランドのトリニティ・カレッジ(ダブリン大学)で幻想文学の講義をしている。日本語で喋っているので、多くの学生たちは飽きてしまい、出て行ってしまうが、私はそれに構わず続けるのであった――

その後、同大学の文学教授と哲学教授と話し合うのだが、そこで私は私がアラン島で体験した不思議な事実を語り出す――

それは一人の真っ裸の少年と少女が断崖から転げ落ちて、血だらけになっては這い上り、再び肉体が再生しては、また、断崖から転げ落ちることを繰り返すのであった(そこにその映像がフラッシュ・バックする)。
そうして私はそれを眺めながら、少年はギルガメッシュであり、少女はエンキドゥであるという確信を持つのであった…………

私はアイルランドに旅行した際、トリニティ・カレッジを散策し、アラン島にも行った。また「心朽窩新館」では私は、姉崎正見訳「アラン島」の電子化注も手掛けている。

この不思議な夢の意味は私にはよく判らないのだが、何か、ひどく哀しい気がして目が覚めた。午前一時半であった。

2017/11/11

「二人の山𤢖に捧げるレクイエム」作曲夢

「二人の山𤢖(やまわろ)に捧げるレクイエム」という曲を作曲している夢を見た――

   *

「山𤢖」は私の「想山著聞奇集 卷の貮 山𤢖(やまをとこ)が事」を参照されたい。一種の山怪としての獣人(山男)である。この夢の意味は判らない。因みに、昨日はアリスが蘇って帰って来る夢を見た――

   *

なお、今日は町内会業務(「玉縄まつり」出店)のため、夕刻まで更新なし――

2017/11/08

テルミン夢

テルミンで「古き年は過ぎ去りぬ」 BWV. 614を演奏する夢を見た――

2017/08/25

仙人芝居夢

僕は最初に勤めた柏陽高校の夜の校舎内で、懐かしい女生徒たちと演劇の稽古をしている。

[やぶちゃん注:僕は実際、二十九の頃、私が教えた同校の演劇部OBたちの作った「蒼鷗舎」に参加し、新宿で清水邦夫の妖しい芝居を演じたことがある。驚天動地、それは素人劇団の旗揚げ公演であったが、何と、黒字であった。]

それは妖しい仙人の芝居であった。

主人公は「呂洞賓(りょどうひん)」で、副主人公は「李鉄拐(りてっかい)」(二人とも男であるが、演じているのは女生徒である)私はそれに絡む三人目の「費長房(ひちょうぼう)」役である。

しかし、困ったのだ!
僕は、演技や台詞回しには絶大な自信があるのだが、台詞を覚えていないのである!
明日が公演初日だというのに!
呂洞賓と李鉄拐役の女生徒が呆れ顔で黙って僕を睨んでいる……

[やぶちゃん注:「呂洞賓」は唐末宋初の道士。中国の著名な仙人の名数八仙の一人として知られる。「天遁(てんとん)剣法」と「金丹(きんたん)秘法」を駆使して、民衆の苦しみを救ったとされる人気の高い仙人である。因みに私は仙人フリークである。
「李鉄拐」も八仙の一人で私の好きな仙人。知られたエピソードとしては、『太上老君に崋山で逢うことになり、魂を遊離させ、逢いに行くことにした。そこで、彼が帰ってくるまでの七日間の間、魂の抜けた身体を見守るよう弟子に言いつけ、もし七日経っても帰ってこなければ身体を焼くように言った。しかし、六日目に弟子の母が危篤との知らせを受けて、弟子は鉄拐の身体を焼き、母の元に行ってしまった。鉄拐が戻ってきてみると、自分の身体は既に焼かれていた。彼は近くに足の不自由な物乞いの死体を見つけ、その身体を借りて蘇った』という「借屍還魂(しゃくしかんこん:屍を借りて魂を還す)」で知られる(引用はウィキの「李鉄拐」)。因みに、この「借屍還魂」は後に兵法三十六計の第十四計の戦術名となり、『亡国の復興などすでに「死んでいるもの」を持ち出して大義名分にする計略。または、他人の大義名分に便乗して自らの目的を達成する計略。さらに、敵を滅ぼして我が物としたものを大いに活用してゆく計略も指す』(引用はウィキの「借屍還魂」)。
「費長房」私の大好きな妖しい後漢の方士。ウィキの「費長房 (後漢)」より引く。『当初はとある市場の監視役人を務めていたが、市場の監視楼上から市中で売薬店を構える謫仙の壺公(ここう)』『が日没時に店先に吊した壺に跳び入る姿を目撃した事から壺公の許を訪れたところ、自分の秘密を目にし得た費に感心した壺公に連れられて壺中に入り、そこに建つ荘厳な御殿で美酒佳肴の饗応を受ける。その後、壺公から流謫も終わって人間界を去る事を聞かされると、自分も仙道を学びたいと思い、壺公の教唆に依って青竹を自身の身代わりに仕立て、縊死を装う事で家族の許を去り』、『壺公に就いて深山に入り修行する。修行は初め虎の群中に留め置かれ、次いで今にも千切れんとする縄に吊された大石の下に身を横たえるといった内容で、共に成果を修めるも最後に3匹の虫』『が蠢く臭穢な糞』『を食すよう求められて遂に上仙を断念し、壺公から地上の鬼神を支配出来る』一『巻の護符を授かって帰郷する』。『なお、山中での修行は僅か』に十日ほど『であったが、地上での実歳月は』十『年以上を経るものであった』とする。『帰郷後は治病に従事したり』、『壺公から授かった護符を使って東海地方(現山東省東南の海岸部)の水神である東海君や、人間に化けた鼈や狸を懲らしめる等、社公(地示)やあらゆる鬼神を使役懲罰し、また地脈の伸縮を自在に操る能力を有して』、『瞬時に宛(えん。現河南省南陽市)に赴いて鮓(さ。魚類の糟漬け)を買ったり』、一『日の中で数千里』(当時の中国の一里は約四百四十メートル。リンク先は五百五十メートルとするが、これは中国のいかなる時代の一里とも符合しないので採れない)を隔てた複数の場所を『往来したりしたが、後に護符を失った為に鬼神に殺された。晋代の葛洪は竹を自身の屍体に見せかけた費を尸解仙の例に挙げている』。この「尸解仙」とは、 一旦、死んだ後に生返って他の離れた地で仙人となることを指す。これはオーソドックスな羽化登仙する「天仙」や名山で霞を食して鶴に乗って行く「地仙」などの高級な仙人に対して、不死でなければならない仙人が仮にとは言え、死の形をとることから、最下級の仙化とされる。だからこそ僕は好き!

僕は実際、表現読みの朗読や台詞回しには誰にも負けないという自信がある(これは今もある)のだが、昔から(高校時代の僕は演劇部で将来は役者になろうかとも真面目に思っていた。諦めた最大理由は体力が続かないからであった)、長台詞は苦手だった。因みに、先の「蒼鷗舎」の公演の際には、僕は主演を頼まれた。しかし、まさに台詞を覚えられないという一点に於いて仕事の忙しさを言い訳として辞退し、台詞が三つぐらいしかない端役を演じたのであった。懐かしい思い出である。

僕はしばしば芝居を演じている夢を見る。しかも必ず、その夢の中の僕は肝心のその夢の中の役の台詞をまるっきし覚えておらず、いつも絶望的に絶体絶命なのである。]

2017/06/11

竹林白虎図屏風の人物となる夢

今日に日付けが変わった頃……
 
一幅の竹林図屏風が立ててある……
 
その屏風の中、向かって右手奥に、中国服を着た僕が隠者然として正面を向いて立っている……
 
すると、屏風左手から白虎がゆっくりと入ってくる……
 
それに気づいた絵の中の僕は「嗚呼!(ウーフー!)」と叫ぶ――
 
   *
 
実際に大きな声で自身、「うをぉおおおッツツ!」と叫んで目覚めた。妻はまだ階下のカウチで寝ていたのは幸いであった。
 

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