blog-2008-7-23
碑銘
原 民喜
遠き日の石に刻み
砂に影おち
崩れ堕つ 天地のまなか
一輪の花の幻
海圖 生田春月
甲板にかゝつてゐる海圖――それはこの内海の海圖だ――ぢつとそれを見てゐると、一つの新しい未知の世界が見えてくる。 普通の地圖では、海は空白だが、これでは陸地の方が空白だ。たゞわづずかに高山の頂きが記されてゐる位なものであるが、これに反して、海の方は水深やその他の記号などで彩られてゐる。 これが今の自分の心持をそつくり現してゐるやうな氣がする。今迄の世界が空白となつて、自分の飛び込む未知の世界が、彩られるのだ。