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2005/07/17

追悼式の後に

只今、午前2時。追悼式の後、横浜で友と二人で飲み、気がつけば小田原、気がつけば品川、奄美大島をニグザイルした運転手のタクシーでたどり着くも、家の鍵もなく、塀をよじ登って、泥棒の如、家に入る。しかし、書かずにはいられぬ。曰く、

必竟、生者は死者に敗北する。

永野広務。僕と同年。神奈川県公立高等学校社会科教諭。特定非営利活動法人草の根援助運動事務局長。マラリアによる多臓器不全。妻と娘。沢山の生徒達と友。

***

(通夜に僕が読んだ弔辞を転載する。僕の後悔を永遠に刻印するために)

弔辞

永野さん。
今日の涙雨が、枝に残った桜の花を散らしたように、あっという間に、僕たちの前から去っていってしまったね。
先日送った二人の思い出の泡盛、「心して飲ませてもらいます」と君は言っていたが、飲んでもらえたのかな。せめて、一杯、あの酒を二人で酌み交わしたかったよ。

短い付き合いの中で、君は僕の手の届かない手本だった。教師になるために生まれてきたような君に嫉妬さえ感じた。

生徒や同僚の悩みに、親身になって相談に乗る君、職員会議で管理職を鋭い論理で追い詰めてゆく君、しなやかなフットワークでバスケットボールを操る君。紛争と貧困に見舞われた国々への援助活動に一身を削る君……。

「自分の信条で日の丸のある卒業式には出ない」という君を、僕たちは言いくるめて無理に出した。君が代の始まると同時に、一緒に勢いよく座ったのは痛快だったね。

「己がポリシーに従って生きる」という君の信念の種は、教え子達の中で、しっかりと育まれ、それぞれ立派な若木となって、ほら、この式場にも沢山、やってきている。

忘れられない写真が一枚ある。
学年の卒業旅行の下田の海岸で撮った一枚だ。
君の少年のような笑顔が、他の先生たちに魔法をかけた。みんな少年少女のように微笑んでいるではないか。
あの世ではきっと三十年四十年はあっという間だろう。僕たちみんながあの世へ行ったら、学年旅行のやり直しをしようよ。おいさらばえた僕たちに対して、君だけが若いままなのはちょっと癪だが。それまで、待っていておくれよ。

永野さん。
僕たちが意に反したことをしてしまった時、どうか、あの少年の笑顔で僕らの心に戻ってきてくれたまえ。そうしてあのさわやかできっぱりとした「なんてことするんだよ!」と言う決り文句で叱ってくれたまえ。
君が安心して眠りにつくほど僕らは、この世界は、出来上がってはいないのだ。まだまだ、君の仕事はあるということだ。

だから、永野さん、僕は君に「さよなら」は言わない。
大切な、忘れ得ぬ沢山の思い出を、永野さん、ありがとう!

二〇〇五年四月二〇日通夜にて

 

***

一つの序詩    会田綱雄

雪ふり

雪つもり

わたくしはわたくしの

あなたはあなたの

火を掻き立て

わたくしはわたくしの

そして

あなたはあなたの

無を見すえる

       うずくものは

       わたくしたちがそれを生きてきた

                夢であり

       わたくしたちをささえるものは

       生傷である

 

雪降り

雪つもり

足跡はきえない

(現代詩文庫「会田綱雄詩集」思潮社刊より引用)

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