草に寝て…… 立原道造
僕の「アンソロジーの誘惑」より。
《立原道造「萱草に寄す」[昭和一二(一九三七)年刊]より》
草に寝て……
六月の或る日曜日に
それは 花にへりどられた 高原の
林のなかの草地であつた 小鳥らの
たのしい唄をくりかへす 美しい声が
まどろんだ耳のそばに きこえてゐた
私たちは 山のあちらに
青く 光つてゐる空を
淡く ながれてゆく雲を
ながめてゐた 言葉すくなく
――しはわせは どこにある?
山のあちらの あの青い空に そして
その下の ちひさな 見知らない村に
私たちの 心は あたたかだつた
山は 優しく 陽にてらされてゐた
希望と夢と 小鳥と花と 私たちの友だちだつた
これも一度、教え子の結婚式で詠んで、結構私の時にもお願いします等と言われて、ずるずる4人ぐらいの式で朗読し続けてしまったけど……ごめんなさい、皆さん気づかなかったね、この一、三連は過去形。途中は当時の回想シーンだ。これは失恋の詩なのでした。しかし、とりあえず君等が離婚したとは聞いていないから、まずは幸せだ。
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