夜の花をもつ少女と私 尾形龜之助
夜の花をもつ少女と私
眠い――
夜の花の香りに私はすつかり疲れてしまつた
××
これから夢です
もうとうに舞台も出來てゐる
役者もそろつてゐる
あとはベルさえなれば直ぐにも初まるのです
ベルをならすのは誰れです
××
夜の花をもつ少女の登場で
私は山高をかるくかぶつて相手役です
少女は静かに私に步み寄ります
そして
そつと私の肩に手をかける少女と共に
私は眠り ―― かけるのです
そして次第に夜の花の数がましてくる
(「色ガラスの街」)
[やぶちゃん注:「さえ」はママ。]
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