商に就いての答 尾形亀之助
商に就いての答 尾形亀之助
もしも私が商(あきなひ)をするとすれば
午前中は下駄屋をやります
そして
美しい娘に卵形の下駄に赤い緒をたててやります
午後の甘まつたるい退屈な時間を
夕方まで化粧店を開きます
そして
ねんいりに美しい顔に化粧をしてやります
うまいところにほくろを入れて 紅もさします
それでも夕方までにはしあげをして
あとは腕をくんで一時間か二時間を一緒に散歩に出かけます
夜は
花や星で飾つた恋文の夜店を出して
恋をする美しい女に高く売りつけます
(「色ガラスの街」)
青空文庫にマイナーな彼の詩集がいち早く載ったのは、僕のかつての高校時代の友が工作員だったからで、僕の耽溺する詩人を電子化してくれたその人に、僕は本当に感謝しなくてはならぬのだが、本当につまらないメール上の言い合いから、ふっと喧嘩別れしてしまった。このメールと言う奴、誠に荷厄介なものだと、つくづく思う。
尾形亀之助、画家にして詩人、長年の無頼な生活のために行路行き倒れを見出され、誰にも見取られず死んだ。
享年42歳。彼も時代に"non"と表明した男。
今日は、久し振りの教え子と逢える。
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