空の水槽 伊東靜雄
空(から)の水槽 伊東靜雄
午後一時の深海のとりとめない水底に坐つて、私は、後頭部に酷薄の白鹽の溶けゆくを感じてゐる。けれど私はあの東洋の祕呪を唱する行者ではない。胸奧に例へば驚叫する食肉禽が喉を破りつゞけてゐる。然し深海に坐する悲劇はそこにあるのではない。あゝ彼が、私の内の食肉禽が、彼の前生の人間であつたことを知り拔いてさへゐなかつたなら。
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昨日、先週やった宿題テスト二クラスの採点を終えて、これから再来週以降に向けて、左手だけでの定期テスト作成、採点、成績評価は気が遠くなる難行と心得た。しかし、本日より、伊東靜雄の拾遺詩篇を昭和46(1971)年人文書院刊「定本 伊東靜雄全集」を用いて、少しずつ打ち込んでゆくことにする。ささやかにして幽かな、自身への慰藉として。本日、右腕、抜糸予定。(9月22日追記:以下に「伊東靜雄拾遺詩篇」纏めて公開し、ブログより削除)
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