沙羅の花(相聞) 芥川龍之介
芥川龍之介の「沙羅の花」を「やぶちゃんの電子テクスト集:小説篇」にアップ。
旧版岩波全集によると「澄江堂雑詠」の「六 沙羅の花」として大正14(1925)年6月1日発行の雑誌「新潮」掲載とあるが、これは単行本「梅・馬・鶯」に他の一項「蝋梅」と共に所収されており、自立性のある単品と解釈してよい。
この歌、例の唯一、彼が対等に勝負できる女と言い切った、松村みね子との訣別の、いわくつきの歌、「相聞」だ。マチネ・ポエテイックの連中が、現代定型詩で唯一の名作と持ち上げたのは過褒とは思うが、確かに一読、忘れられない名吟。
歌としては有名で、テクスト化されているが、前書き風の文を持つこの小品はまだのようだ(内心、好きなこの歌を正式テクストに加えられて嬉しくてしようがないのです)。
ちなみに初出と思われる室生犀星宛書簡では二行目の句点がない。また、旧版全集の生前未発表詩歌に所収するものは、二行目の「たれ」が「誰」と漢字になっている。
ちなみに、「かなしき」は「愛しき」ですぞ、お誤りなきように。
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