ユムシ
カテゴリー「海岸動物」を新設して、記事一つでは淋しかろう。私の好きな海洋生物、その一だ。
環形動物門 ユムシ Urechis unicinctus
典型的なデトリタス(プランクトン等の浮遊混濁物及沈殿堆積物を食う)食性のベントス(底棲生物)である。国産韓国産等を見ても、10センチ内外か(但し、一度20センチ近いものを金沢文庫の海岸で現認したことはある)。形状は、男性の性器にそっくりで、北海道辺りではそのものずばりの名称で呼ばれている。彼等は、その吻と肛門部の剛毛で砂泥地にU字型の巣穴を形成し、追い出されでもしない限り、そこから出ることはない。吻から粘膜の網を広げ、蠕動運動(呼吸運動も当然兼ねる)によって海水を吸い込むと、その粘膜に有機物質が付着するという寸法だ。するすると引き入れて、食べる(これは巻貝腹足綱のヘビガイの仲間も同じ手法をとる。ちなみにこのページは僕の縁がらみ)。
食べにくい大型粒子はちゃんと排除され、棲穴に共生するマメガニやユムシ本体に寄生するウロコムシ(環形動物多毛類)が食べて綺麗にしてくれる。美事なフィールターフィーダー(濾過摂食者)なのだ。
実は、このグロテスクな生物、朝鮮では一般的な食材。永く食べたくて仕方がなかったのだが、6月に、国内のある店で、やっと僕も食すことができた。くせも生臭ささもなく、上質新鮮な貝肉の味わいと歯ごたえ、誠に美味であった。韓国に行かれたら是非、騙されたと思って食べてみるとよい。ちなみに朝鮮語ではユムシは「ケーブル」(「ケーブイ」と表記されたものがあるが、知人に聞いたらケーブルの方が近いとのこと)と発音する。しかし、一応以下のページなど見、形状の覚悟はされたほうが良いだろう。