路上 梶井基次郎
どうして引返さうとはしなかつたのか。魅せられたやうに滑つて來た自分が恐ろしかつた。――破滅といふものの一つの姿を見たやうな氣がした。なるほどこんなにして滑つて來るのだと思つた。
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歸つて鞄を開けて見たら、どこから入つたのか、入りさうにも思へない泥の固りが一つ入つてゐて、本を汚してゐた。
(梶井基次郎「路上」より 筑摩書房版全集による)
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女生徒に、ブログを見ましたと言はれて、「済みません、最近、暗くて」と答へて、笑はれてしまつた。少しは、明るくせねばならぬとは思ふのですが……。けふの引用も暗いですね。
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