病い 村上昭夫
病い 村上昭夫
病んで光よりも早いものを知った
病んで金剛石よりも固いものを知った
病んで
花よりも美しいものを知った
病んで
海よりも遠い過去を知った
病んでまた
その海よりも遠い未来を知った
病いは
金剛石よりも十倍も固い金剛石なのだ
病いは
花よりも百倍も華麗な花なのだ
病いは
光りよりも千倍も速い光なのだ
病いはおそらく
一千億光年以上の
ひとつの宇宙なのだ
(1999年思潮社刊「村上昭夫詩集」より)
*
高級車を何台も乗り潰し、たかだか二十億光年の詩人を気取っている男(僕は、かつて実際にその有名な「詩人」に逢ったことがある)に、この詩をそっと囁いてやりたい。