Archie Shepp Trouble in Mind
MDは胡散臭い。しかし、手頃に聴くには、最早、これしかない。チンケなMDレコーダーと接続して、レコードを録音するために、超重量のオーディオ・システムをいじる。ハンドライトで照らす背面のジャックの表示が、老眼には見えにくい。こんなことやったの、何年ぶりだろう。不自由な右腕には、ちょいと重労働だが……
最近、レコードを聴かなくなった。そのうちに、黴、黴、黴が生え(竹竹竹ならぬ蟲蟲蟲ならぬ)、膨大なパウエルもドルフィーも捨てられる運命なのかも知れない、それも、また、僕の魂の副葬品だ……
ふと、シェップとホーレス・パーラン(p)のデュオが、無性に聴きたくなったのだ。思う存分。多分、こいつは国産CDはない。ドナウゲッチンゲンのシェップ好きには、見放されるアルバムか。あれも、随分、いい……しかし、ジャケットのどハデな衣装、プレイもプリプリの怪演だ……
今の僕には、こいつが、染み入る演奏だ。いぶしていぶしてギンギン銀色のパーランに、シェップ竹取爺の抑えに抑えた(でもやっぱブロウの果てはシェップなんだよね、これが)演奏、何ぞ人生なんてどうでもよくなった、酔いに酔った折には、きっと、これを聴きたくなるもんだ。君も、騙されたと思って、聴いてみると、いい……
みんな、いいが、やっぱり、次の二曲
Nobody Knows You When You're Down and Out……
St. James Infirmary……
書斎で手軽にMDで聴くが、これはやっぱりイージーだ。でも、居間のカウチでぐっすりの妻の横で聴くジャズっていうとは、ムードブチ壊れだし……
じゃあな、また一杯(いや、もう書き加えているうちに五杯目だ)、いただくよ……拘縮してカチカチの右手には、沁みるぜ……
Archie Shepp ……Trouble in Mind……