芥川龍之介 鵠沼雜記
僕は全然人かげのない松の中の路を散歩してゐた。僕の前には白犬が一匹、尻を振り振り歩いて行つた。僕はその犬の睾丸を見、薄赤い色に冷たさを感じた。犬はその路の曲り角へ來ると、急に僕をふり返つた。それから確かににやりと笑つた。
*
「鬼気」とは斯くなるものを言う。
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僕は全然人かげのない松の中の路を散歩してゐた。僕の前には白犬が一匹、尻を振り振り歩いて行つた。僕はその犬の睾丸を見、薄赤い色に冷たさを感じた。犬はその路の曲り角へ來ると、急に僕をふり返つた。それから確かににやりと笑つた。
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「鬼気」とは斯くなるものを言う。