漁村 森川義信
漁村 森川義信
波がものを言ふやうになつてから
誰も姿を見せない砂浜に
抵抗する事を知らない貝殻のやうな女が
私生児(ないしよご)を抱いて立つてゐた
それは――生きる為には、生きる為には
泥蟹をまで食べなければならぬ
悲しい漁村の一つの姿である
夢を見ることのゆるされない漁村の娘は
今日の泥蟹の殻ばかりを捨てに行くのだつた
*
次なる自己拘束……鮎川信夫の「死んだ男」=森川義信の詩を、纏めよう……
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漁村 森川義信
波がものを言ふやうになつてから
誰も姿を見せない砂浜に
抵抗する事を知らない貝殻のやうな女が
私生児(ないしよご)を抱いて立つてゐた
それは――生きる為には、生きる為には
泥蟹をまで食べなければならぬ
悲しい漁村の一つの姿である
夢を見ることのゆるされない漁村の娘は
今日の泥蟹の殻ばかりを捨てに行くのだつた
*
次なる自己拘束……鮎川信夫の「死んだ男」=森川義信の詩を、纏めよう……