國木田獨歩「忘れえぬ人々」読み排除版
「やぶちゃんの電子テクスト:小説・随筆篇」の國木田獨歩「忘れえぬ人々」の初めに、読み排除版を追加したのを言い忘れていた。底本通りでは、実は大変読みがうるさい(実際に電子テクストでの括弧書きの読みはたまらなくうるさいと感じる人は多いと思う)。では、ルビを打てばいいのだが、タグの煩瑣もさることながら、僕にはルビ行の挿入によって、多くの電子テクストを見た時、ルビのある行とない行の行間の不一致が不快さを催すのである(行間補正をすればよいのだろうがそこまで労力を費やしてルビを振ることの価値を認めないのである)。ルビはないに越したことはないというのが僕の考えである(鏡花のようにルビが一つの個性として発揮されている場合は別である。彼の原稿を御覧になれば、ルビが一体のものであることがお分かり頂けるものと思う。だから、好きな作家でありながら、鏡花のテクストアップには躊躇する。俳句は例外中の例外)。芥川龍之介の公開作品でも、読みが振れるものや独特の読みをしているもの以外は省略したものがある(そうしたものは最初の注記で断ってある)。まあ、ルビをつけることの諸々の面倒が厭だというのが本音で、教師が良くやる手で、読めない字は自分で調べましょうと逃げを打つているのに大差はないとも言える。しかし、読みの有無の取捨選択に際しては、一度、声を出して朗読し、付けるべき読みは付けている。これは、不精な僕が、不精なりに己れに課している節ではあるのである。いや、この朗読という奴も、実を言えば己が楽しみなのではある。
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「己れに課す」と言えば、今日、遂に自己拘束が起動した。これも、自身で覚悟したことではある。