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2006/03/12

梶井基次郎 路上

梶井基次郎の「路上」を、正字正仮名で「やぶちゃんの電子テクスト:小説・随筆篇」に公開。
僕の記憶にある最初の本格的な純文学体験は、中学一年の夏の、トルストイの「復活」だった。国語の女教師は読書感想文全国コンクールに僕の感想文を出そうとして、何度も書き直させた。書き直す都度に娼婦カチューシャの叙述を増やしたら、女先生の表情は曇りがちになり、最後には「あなたにはこの小説はまだちょっと早かったわね」と言われて、コンクールの話はなかったことになった。だから良く覚えている。
そうして最初の本格的な日本純文学の記憶は、同じ頃に読んだ梶井の「路上」だった。
僕とって、崖とは永遠に忘れられぬ遺恨である。そのうちに書くこともあろうが、小学校1年の頃に日々いじめられた、その象徴が、崖である。
この小説の傾斜は、ある強力なその記憶のフラッシュバックを私に起こさせるからか、一読、忘れ難かった。
エンディングの

「歸つて鞄を開けて見たら、何處から入つたのか、入りそうにも思へない泥の固りが一つ入つてゐて、本を汚してゐた。」

僕はこの日の学校帰り、山伝いの道を歩きながら、梶井の小説集を入れた学生鞄の中に、赤土から掘り出した赤茶けた泥の塊を潜ませたのを覚えている……

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