亡き友へ
木蔭で
――永野広務に
草の根の運動の途次マラリアに倒れし友、
彼の名を冠したる木のインドに植ゑられ
しを聞きて
木もれ日や見上ぐる子らの齒全き白
一本の苗木は
あまたの人々の思いとはぐくみによって
太い幹をつくり
鳥の羽のように木蔭を広げ
つがいの小鳥が巣を作る
その木蔭で――
未来の仏陀のような哲人が 悟りを開くかもしれない
熱に苦しむ旅人が ひとときの涼を得るかもしれない
子どもたちが 初めて文字を読み上げるかもしれない
恋人たちが 胸ふるわせる囁きをかわすかもしれない
宇宙の孤独に悩む者が 首括ろうとするかもしれない
しかし そのとき 木は
優しく彼らを包む
ただ 包む
羊水のごとく 包まれて 僕らは木とともにある……
……彼と僕ら
一本の
ユグ・ドラシル!